第1話
俺、
最初はみんなと仲良しだった。休み時間になるとみんなサッカーしたり、鬼ごっこしたり、廊下を走って一緒に怒られたり、と普通の小学生の楽しい毎日を送っていた。
しかし、父さん
「浅野くんのお父さん、ちがうお母さんと浮気したんでしょー」
この一言で小中学校生活が終わった。
悪気がなかったかは知らないがあの言葉がみんなに聞かれた。
最初はいじられる程度だった。しかし、いつしか影で悪口を言われ、ランドセルを持って帰らされ、机に落書きされ、上履きを隠され、俺だけハブられ、段々といじめへとエスカレートしていった。
でも、俺はこれを誰にも相談しなかった。なぜなら、母さん
俺は母さんが大好きだ。美人だし、いじめられて物をなくしても何も聞かずになくなった物を買って来てくれるし、いじめられて泣いていたらそっと抱きしめてくれる。母さんはいつも笑顔だった。
母さんは浮気されてもまだ父さんのことが好きだった。時に寂しそうな顔をするのが見てられなかった。
「お父さんはマジシャンでお客さんみんなを笑顔にしてたんだよ」
これが母さんの口癖だった。
母さんはいつもテレビで野球を観ていたので野球が好きなんだと思い、野球を始めた。
全然野球は好きじゃなかった。でも、母さんが野球を好きだからなんとなくやっていた。活躍すると褒められた。そっから野球を真剣に始めた。
中学校になるとリトルシニアに入り、ピッチャーで全国ベスト8に貢献した。母さんは喜んでいた。
いじめの方は中学校に入っても続いていた。小学校と内容は変わらない。毎日を耐え凌ぐ生活を送っていた。
ある日のこと、俺が制服を隠された。隠されたことがバレないようになくしたことにして、そのことを母さんに言うと、
「またなくしたの?」
「うん」
いつものの様に言った。でも、母さんはいつものの様ではなかった。
「もう何回なくすの、いい加減にしてよ、ただでさえお父さんがどっかいったのに、母さんはパートなのよ、もう無理よ。」
大きい声で怒鳴った、段々弱々しくなっていき、最後には顔を手で覆い、膝をついた。こんな母さん見たことがなかった。
「もう疲れた。アンタがいなくなれば楽になるのかな?」
そう言って俺に近づき、首の上に手を置き、段々と力を入れ始めた。
「やめで、ぐるじい」
俺は必死で手を振りほどいて、家を出た。
とりあえず必死に逃げた。泣きながら走った。大好きだった母さんに首を締められたことが俺の中で一番ショックだった。もうなにもかも憎かった。この世の中が憎い、いじめた奴が憎い、父さんが憎い、なにより何も出来なかった自分が憎かった。
その日は近くの河川敷の橋の下で一夜を過ごした。とりあえず家に帰ったら母さんに謝ろうと思い、家に着き、家のドアをそーっと開き、中の様子を見た。
そしたら昨日争ったところで母さんが首を吊っていた。
目の前で起きていることがなかなか理解できなかった。何度見ても母さんは首を吊っている。俺は気づきたくなかった、目の前で起きていることが嘘であってほしかった。
でも、今のこの状況は紛れもない真実だった。
俺は泣いた。一日中泣いた。大声で泣いた。近所のことなんて構わず。俺の大好きな母さんが首を吊って死んだ事実がなくなるわけでもないのに。
これが俺の小中学校だ。
で、転校生のあの女はその小学校の時に俺をいじめていた主犯の女だ。
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