第4話 僕達の望む道


耀てる.大学2年】



やっと尊の受験が終わって、

約束通り一緒に出かける事になった。


のに…僕は1人。

ぼんやり眺める人混みの中には

楽しそうにはしゃぐ可愛い子供の姿。



…楽しいよね。初めて来たの?僕も初めて。

観覧車乗った?僕、乗ったよ。好きな人と。


…好きな人……恋人と来たから。




その、恋人の姿を見失って

また観覧車に戻って来た。

心の中で子供に話しかけていたら

自分のポケットで電話が鳴っている事に気付いた。


『……あっ…出たっテテ?どこ?』


「…さっき乗った観覧車の前…」


そう告げたら電話は切られたけど、

すぐに遠くから走って来るみことが見えた。

真冬の寒さの中、コートを翻して僕の目の前に。

額から汗が出てる尊。


「ごめん!テテ、ついてきてると…

思って…急いで歩きすぎた…」


息を切らせて話してる。


デートの王道だと言う遊園地に来た。

もともと人混みは苦手。

酔うし迷うから歩けないって心配もあった。

けど…そんな事どうでもいいほど

尊からの誘いが嬉しかった。

一緒に過ごす人にもよるんだと気づいたし、

来たからには楽しめると思った。



さっき、2人きりの観覧車の中で、

僕は…とてもとても勇気を出して

キスをしようとしたんだ。


けど、避けられた。


顔を逸らされて、

外の景色がどうとか…話も逸らされて。


確かに、尊と見れる景色は素晴らしい…

涙が流れ出さないように、

堪えてたから見れなかったのは残念。



…1度したキスは、何ヶ月も前。

尊からだったのになんか違かったのかな。


付き合うってやっぱり色々大変なんだな。



………それでも、尊と同じ方向を見て

一緒に歩んでいきたいと思う。


こんなにあっさり簡単に答えがでる。


尊が好き。


会う度に簡単に思う。

会ってない時も思う。



「尊…僕は尊が好き。さっきしようとしたのは、

ずっと…いつも、キスしたかったから。

けど、…もうしないって事なら教えて。

僕は知らないでまたしようとするかも」


どれほど勇気を出した行動だったか…

あ、自分で言った言葉でもショックで

ギリギリ…泣きそう…


「ちょっと待って!…ゴメン、びっくりして…え?

キス…?テテしようとした?確かに顔近くて…

っていうか…僕……テテを大事にしなきゃって…

少し…我慢してたんだけど…」


「何で?何が?大事にするって何を?

…僕からのキス、避けなくたって…」


「…顔が近くて…

またキスしたいって一瞬思ったけど…

テテを大事にしようと決めてたから…

微妙に我慢我慢で過ごしてきたから…」


「尊は受験だったし、僕も我慢してた。

何年も会ってなくて、

やっと付き合っても何ヶ月も我慢して…

キスも1回で…もうキスしたくない?

その先は僕としたくない?男だし?

セックスは無理?したいのは僕だけ?

付き合うってセックスもするでしょ?

男同士のセックスだって、

経験は無いけど知識はある!

僕は尊としたい!」


「ちょ!ちょっと待ってってば!

ここ人混みっ……!」


僕はどうにか涙を堪えながら…

本音を吐き出してしまった。


尊が顔を赤くして

困った顔だけど僕を抱きしめてくれた。

…確かに人混み…何人に僕の本音を聞かれただろ…



「……もう1回観覧車乗る?」


耳元で囁かれた言葉は

一見何の意味も無い事だけど……


……期待通りだった。



2人きりの観覧車、沢山キスをした。

尊からしてくれた。僕からもした。


「…もう我慢しない…」


キスの合間に吐息と混ざって微かに聞こえた。

僕に言うつもりだったのか、

自分に言い聞かせただけなのか…


どちらにしても、嬉しくて顔も胸も熱くなった。






僕の希望していた尊の部屋。


…散らかってるとか言って全然散らかってない。

尊の服装みたいに、シンプルでスッキリした部屋。

落ち着くインテリアなのにドキドキが大きくなる。


…こういう事を我慢する為、

尊は部屋に呼びづらかったと言った。


僕はこうなりたくて尊の部屋に来たかった。



遊園地から地下鉄での移動時間、

距離が長く感じた。

圧迫感や緊張する気持ちで目がまわったけど

普通に見えるように頑張った。


これからエッチな事、するつもり…

なんだよね…きっと…

目が合うと、尊の目が優しく微笑んてくれる。


緊張からか、幸せだからか…僕は笑いながら…

泣きそうになるのをまた我慢した。




「…緊張する?…僕は…凄いしてる…」


コートや上着を脱ぎお互い少し肌寒い格好で

尊とベットの上で向き合い、

僕の髪を触りながら尊が話す。


僕も…身動き出来ない程、返事も出来ない程、

未経験の事をするっていう怖さもあるけど…

尊の目を見たら、また優しい目。

僕の必要不可欠な安心要素。

僕も尊の髪を触ってみる。

尊の手が顔に下りて、

僕の頬を包む様に撫でる。

僕も手を下ろし、尊の頬を撫でる。

少しぎこちないけど…

僕の頬から唇へ移動する尊の手。

僕もまた真似して尊の唇を触る。

…唇と唇を近づける。

キス。

唇の動き、舌の動き、

真似したいけど…応えるだけで

いっぱいいっぱい…


尊から優しく押されて

僕自身を支える力も抜けて

座った体制からベットに背中から倒れた。

同時にキスも重く、深くなる。


奥へ奥へと舌が僕の中に来るから

僕の頭の奥、身体の奥が熱くてもう…

何も考えられない。


尊の動きに、反応するだけの僕。


手がいろんなところを触れ回ってる。

首、腹、胸、…の突起、

触られるだけでも感じるのに、

唇で吸い付き舌で舐められる。歯で甘噛みも。

僕…食べられてるみたい。変な感じ。



シャツやズボン、下着も…キスしながら

丁寧に脱がされていく。

…けど笑顔が無くて少し怖い…


「み、こと…怖い…」


「え……えっと……」


「…怖い顔しないで…

尊が何考えてるか分からないと怖い…」


「…あー…何考えてるかって…

今は…テテほんとカワイイな、とかしか

考えて無いけど…」


「…じゃあ言って欲しい……真顔怖い…」


「…僕も余裕無いからそりゃ真顔になっちゃうよ…

…聞きたいなら言うけど…

……テテの裸…想像通りっていうか…

…以上っていうか…なんでこんな綺麗なの…?

エロいっていうか…触り心地も…ヤバイ…」


言われたら言われたで、恥ずかしいけど…

尊の服を僕も脱がす。



布団の中、2人の熱で暑いけど

…包まれてる感じ、2人だけの狭い世界、

直接素肌から感じる熱がちょうど良い。


こんな気持ち良い事、

そりゃ世の中のカップルはみんなする筈だ。



「…テテ、初めて…なんだろうから…

僕、テテを抱きたいけど…いい?」


「…女の子みたいに…?

全然違うだろうけど…尊は…平気?」


「…さっきも言ったけど、

テテの裸…ヤバイから…」


ヤバイ……?よくわからないけど、

お互いの身体を自分以上に愛する行為…

気持ち良すぎるし、幸せすぎる…


「…テテ?なんか気にしてる?

いろいろされるのイヤ…?」


僕の下半身を尊が弄るから、

目を閉じて必死に尊に抱きつく事で精一杯だった。


自分で出す行為も、数えるほどしかした事が無い。

…何を思って精通?したのか、

何に対して欲情したのか…

ただギリギリ性欲が溢れ出しただけとしか

思えない様な経験しかした事ないのに…


「…みこ…出ちゃいそうな程気持ち良いから…

尊のも…」


尊のものに手を伸ばそうとしたら

尊が離れて僕の足元に移動した…

下半身が一気に濡れた熱いもので覆われる。

しかも柔らかい…舌が動くし…

いろんなものが絡めとられ…


「みこ…と…それは…すご…く……ぁ…」


漏れる自分の声にも焦る。


布団で顔を覆い声も漏れないように、

何故か達してしまわないように、耐える。


「…テテ…お尻弄っていい?」


恥ずかしいけど、尊がする事でダメな事は無い。


布団に顔を埋めたまま、

コクコク頷くと意思が伝わったようで…

前から後ろに熱く濡れた空気が

そのまま移動したと思ったら…

指でも奥を開かれ…理解出来ないところまで

熱く濡らされる。


感じた事の無い気持ち良さと圧力。


以前から想像していた事が、

想像以上の気持ち良さと期待で

怖さなんて微塵も無くなった。

…いや、もともと怖さなんて…


「…尊の欲し…それか…舐めたい…」


「……入れるの怖く無い?痛いかもよ?」


「大丈夫…なはず。無理そうなら言うから…

尊と…したいから…」


「……今日は…ホント我慢出来なそう…」


また独り言のような

溜め息と熱い息、微かな声と同時に聞こえたら…


一瞬で僕の身体が布団から離され、

視界が尊だけになる。

尊は器用に僕の片足を抱えたまま、

ゴムをつける…僕もその作業を

息を飲みながら見守る。

…付け終わった…?

ホント…ゴムでさえ触った事無いから

手伝えなかった…

今度は僕が付けてあげたり……


尊の目を見ていたら唇に食いつかれるようなキス。


やっとこれで繋がれる…?少しずつ…


尊は多分、僕の表情を確認する為に

僕を見つめたままなんだろうけど…


…逆に尊の困ったのうな我慢してるような…

目を閉じてはすぐ…

僕の表情を確認する為見つめ直してくる。


…僕、優しく笑えてるかな…


……感じてる。



下からの刺激も変になるくらいだし、

何より尊の見た事無い表情が

僕の頭も身体の奥も変にさせる。



思考は追いつかないまま、

尊の動きに気持ち良くなって

身体が声が反応するだけ。


…心配してた痛みはそれ程…

すごく尊が気を使ってるのも分かる…



我慢しない、我慢出来なそうって言ってたくせに…


どこまでも優しい尊が大好き…





尊のベットで僕は動く体力が無くなり、

横になったまま尊がティッシュで片付けして

横に来てくれるのを待っていた。


何も言わなくても

布団の中、僕の隣に擦り寄って来て…

素肌のまま、僕の頭を抱きしめてくる。

オデコ辺りが暖かい息と、唇の感触。


「僕、医学部に行くよ。まぁ受かったら、だけど」


「…そう。じゃあ僕は看護師に…」


「え?…え?」


「あ…無理だよね。

僕は父と兄とゲームを作る仕事をするんだ。

…僕にはやりたい事も出来る事も

ゲームだけだから」


「ははっいい事だよ。

僕のゲーム欲はテテに任せるし、

ダンス欲は親友に任せる事にした」


「任せられるんだ。うん。任された」


少し頭を動かし、尊を見つめる。



迷いは無くなったみたい。男らしい尊。


こんな尊に僕は抱かれて、

尊を愛せて、人としての幸せを感じる。



尊じゃなきゃ僕はこうならない。


なりたくも無い。



僕の世界は狭い。

今までも、これからも。


僕の真ん中に戻ってきた尊と

これからどれだけ過ごせるかわからない。



一緒にいたいだけいれますように。



尊も僕と同じく望んでくれますように。






END


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FOUND MY WAY けなこ @kenako

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