第3話 簡単に愛しい
【
彼はテテだった。
僕の、大好きだったテテ。
小学校低学年の頃、学校終わるのが早くて
両親がいる病院に行ってはよく2人で遊んでた。
年は2つ上だけど
小学生の僕は全く気にならなかった。
テテは全く歳上ぶらなかった。
僕はテテと呼び、テテもテテと名乗ってた。
可愛いくて、いつも守ってあげたかった。
僕だけに弱音を吐いて甘えてくれて、
それが僕の自信になった。
2人だけの絆、秘密、約束が幸せだった。
何で女の子って思い込んでたんだろう。
何ですぐテテって気付かなかったんだろう。
僕はテテを傷付けてしまった気がする。
結婚の約束をした仲なのに…と言われ、
約束を信じていたら'怖い'と一瞬思ってしまった。
将来の進路で悩んでると話すと、
テテの為に医者になると
言い回っていたのは僕なのに
逆にテテのせいで余計迷っていると思いこむ。
…泣かないで。
急に湧き上がる懐かしい、愛しい気持ちが
抑えきれなくなりそうだから。
…今までの恋愛で
僕の愛情は普通より薄いんだと思ってた。
実際ダンスやゲームをしたり、
病院で過ごす事の方が好きだったから。
そう、思っていたのに。
咳き込むテテを見て
忘れてた夢の…本来の意味を思い出す。
ロウソクで毎日のように願っていた事。
…僕の力で治せる病気、軽くなる病気、
医者になって助けられますように。
今もこんなに楽にしてあげたいと思う。願う。
……テテの事が好きだったから。
好きだった。
今は……?
…久しぶりに会ったばかりなのに、
昔と変わらず素直で
僕の気持ちを考えて優先してくれる優しさ。
好きを簡単に超えれた。
男の人だとわかっても簡単に愛しい。
病院のプレイルーム。
子供達、看護師さん、誰も来る気配は無い。
…あんまり食べて無いのかな…
人の事あまり言えないけど、
痩せてる身体を抱きしめた。
愛しくて、自然な行動。
思ったより近くで彼が僕の方へ向いたから…
キス。
抑えられなかった。自然な流れ。
少し震えながらテテの唇が応えてくれる。
舌を入れ、ゆっくり…
テテの舌に絡めると絡め返してくれる。
…ずっと、もっと、深く味わいたい。
けど…キスで愛情の確認が出来た気がする。
顔を離すと、真っ直ぐ僕を見てくるテテ。
…儚げ……って言葉が似合うな……
「…これって…キス…
付き合う人達がするやつ…僕、初めてした…
キスして僕達…これから仲良く過ごせるかな
…尊と昔みたいに…沢山過ごしたい…」
…あの頃と同じ。僕には安心して
本音を言ってくれてるはず。
しかも嬉しい事を言ってくれる…
キス、初めてって。
ただでさえ
素直に思った通り話すテテは本当に可愛い。
「うん……出来るだけ会おう。
僕、受験だけどこうして病院に来てるし…」
「うん、出来るだけ会う。会いたい。
僕はずっと尊に会いたかったし、
明日も明後日もこれからずっと会いたい。
あ、受験…会えない日があっても我慢出来るから、
尊は無理しないで」
小さい頃の様な可愛い笑顔。
さっきまでの笑顔と違って、
照れたように…はにかむ笑顔。
「テテ。僕達キスもしたし
これから出来るだけ会うって事は、
付き合ってくって事でいいんだよね?」
「……僕は…人と付き合うとか…
全然楽しそうじゃないからしてこなかったけど…。
尊となら…僕の全部で付き合って行きたい」
キスも初めて。付き合うのも初めて。
…キス、大事にとっておけば良かったかな…
また、キスしたいと思うけど、
とてもとても大切な事…
テテを大切にしなきゃ。したいと思う。
『僕の全部で付き合って行きたい』
どれだけ僕に、テテが向けられるのか。
こんな事言われて…
絶対他の人からなら逆に引いてしまい
怖い、面倒、とか思う僕。
テテの全部。
大切にしながら付き合って行きたい。
キスも。キスより先も。ゆっくり、丁寧に。
「テテ。大切にする。
僕と、付き合ってください」
…小さい頃、言ったかどうか覚えてないけど
好きだったテテに、もう一度
お付き合いを申し込んだ。
【
「ごめんね、ゆっくりデート出来なくて。」
お互い学校が始まった。
尊は自習室に向かわず
帰宅後、病院で勉強する毎日。
僕も一緒に勉強して、子供達と遊んで、
息抜きして会話をする…
とても楽しいデートをしていたつもり。
「こうやって尊といるから…」
勉強しながら…目はノートや参考書に向けたまま、
僕と会話する尊。
僕だったら勉強の内容入らないけどな…
受験の邪魔してる自覚はある。
「受験が終わったら、どこか遊びに行こうね。
どこか行きたい所ある?」
「…んーー…尊の家とか…?」
「あーー、それはデートって言わなそう…家ね…」
行きたい所って聞かれたから答えたのに。
「…尊は?僕とどこ行きたい?僕と何したい?」
「……考えとく」
……考えても無かったのか。
僕と行きたい所、したい事、特に無いとか。
「…ねぇ、付き合うと何するの?
尊は今まで何人と付き合った?
デートとかは…映画とか?買い物とか?
あ、尊とお揃いの物とかする?
そういうの凄くカップルっぽい。ネックレスとか?
なんか指輪より主張してる感じ…胸に近いし」
「胸、最近どう?苦しくなる?」
手を止め、視線がノートから僕の方へ。
…僕の話聞いてたかな。
尊の質問には首を振る。
「…ストレスとかあった?
小児喘息は治ってるはずだし…
大人になってそれが振り返す事は
ほぼ無いんだって」
「うん…。調べてくれたんだ。
…短期間だけだったから、
風邪とか拗らせただけだったのかな。
完治したしさ、尊は将来どうする?
ゲームだったら僕と同じ所で働こうよ。
ダンスだったら…僕もダンス趣味で始めようかな。
僕に気を使って医者を選ぶ必要は無いよ」
「ふふっ気を使って無いよ。
ちゃんと考えて選ぶし、…テテのおかげで
昔の気持ちを思い出せた。もう迷わないと思う」
尊の意を決した男らしい笑顔。
…ホントかっこいいし、頼もしいんだ。
一緒にいて何度も惚れ直してる。
キスを、したい。
付き合い出した時に1度してくれた。
またして欲しいのに、
あれから何度会ってもしてくれない。
して欲しいと伝えようか。
…僕からしたらおかしいかな。
そもそもするとなると
とてつもない緊張が襲って来る。
………僕の初めてのお付き合いは
何も進展しないまま。
季節は秋、冬…
当たり前の事なのに不思議な程のスピードで
季節が変わっていく。
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