第10話 私だけじゃないハズ!

学校からの帰り道。

部活中にも少し話したが裕香のIDを教えてもいいのかどうか。


「カレシにちょっとお伺いを立ててからね?」


と薄情な事を言う。

まぁ相手の一人がイケメンさんである。

下手に誤解を招くよりは良い事だと思うけれど。

なんかこう納得いかない。

思いっきり惚気られている気がするんだよねぇ。


「電話でないわ。メッセ入れとくから、

 この件は後で連絡するって事で良い?」


「イイケド。できればその許可もらえるようにしてね?」


「解ってるって。一応さ、朱里を応援しようと思ってるし」


「応援ってなんだよーー!

 べべべべべ、べ 別に応援されるような事無いし!」


「あー、うん。

 アンタ結構分かりやすいわ。

 外見では全くそんな感じないけど、

 正確とか知ってる私からすればおもし・・じゃない。

 応援したくなるって事よ」


なんだかはぐらかされている気がする。

裕香はちょっと大人っぽい思考をする所も憧れで嫉妬しちゃうところなのだ。

しかもラブラブの幼馴染の彼氏付き。

こっちは好きでも何でもない男からの告白ばかりでうんざりなのに。


モヤモヤを抱えてそのまま帰宅すると裕香からのメッセージが届いた。


『京くんが相手の写真を送れって言ってきたけど持ってる?』


これはどういう事なのか理解が追い付かない。

裕香のカレシは男の子の写真が欲しいのだろうか?


『え?なんでそんなの欲しがってるの?』


もしかしてホ・・・


『深い意味は無いよ?

 なんかイケメンで私をとられると思ってるみたいで、

 相手はどんな奴だ~って言ってるのよ』


違ったようだ。


『えっと、その遠目で撮ったの送るよ?』


二人が話している写真を送る。

実はこれはこっそり撮ったもので所謂盗撮だけれど。

今はこれしかない。

普通に仲がよさそうな男子が写っているだけだ。


『あー、盗撮?』


『違うから!風景撮っただけだから。

 たまたま写り込んでただけ!それだけなのぉ!』


自分でもイイワケ全開だと思うけれど認めるわけにはいかない。

ハンザイユクナイヨw


『うん、まぁそのさ、ちょっと京くんに説明したらさ。

 彼女持ちなのか聞いてくれって言われたんだけど・・・。

 そんなのわかんないよね?』


『橋場君には彼女はいないわよ?』


『そっちはいいのよ。ちゃんと説明してあるから。

 さすがに長身イメケンの友達がいると京くんが気が気じゃないらしくって』


くっ、惚気か!愛されてるなぁこのぉ!


『いや、さすがに分かんないよ。遠海君モテるし居るんじゃない?』


『ちょっと訊いてみてくんない?親友の橋場君なら知ってるかもだし?』


ん?そう言うの訊いても良いのかな?

まぁいいか。


『いいよ、わかった。

 その・・・実は話す話題がなくって何を送れば良いかわかんなかったから。

 ちょっとした雑談で訊いてみるよ』


強制的に後押しされる事でやっと自分からメッセージの送信ができると少し浮かれてしまった。

さっきまで震えて打てなかったのに、

今では裕香に訊かれた事を確認するべく動いてくれた。


『その、遠海君って彼女とかいたりするのかな?』


『ごめんね。今は居るみたいだよ。この学校の子じゃないけど』


すぐに返事が返ってきた。

これは朗報と言う奴だろう。

裕香のカレシもこれで安心してくれると思うし、

これからのグループメッセージが楽しくなりそうだった。

遠海君はどうでも良かったが裕香には助けて欲しいのだ。

恋愛初心者だと自覚しているのですよこれでもね。


『わかった。教えてくれてありがとう』


橋場君にお礼を送り早速裕香に報告する。


『カノジョ持ちだったよ~。

 カレシくんに盗られる心配ないって言ってあげて~』


『そんなストレートに言えるか!

 まぁ嫉妬なんだろうけどね( *´艸`)』


くっ、かるく嫌味だったのに惚気返されたゾ。

ダメージは私のが大きいようだ。

しばらくすると裕香からの連絡が来た。


『おっけー貰えたよ~。

 それで明日4人でちょっと話しない?

 実はついでに京くんも誘っても良いか訊きたいのよ』


これは恐らくはカレシくんからの要望だろう。

イケメン相手に牽制するために。

「裕香のカレシが仲間になりたそうにこちらを見ている」

状態が伺えた。


『カレシくんの愛が重いねぇ』


『違うから、重いんじゃなくて深いのよ』


ああ、そう来るかぁ。

まぁそうなのかなぁと思わない事もないけれど。

やっぱり彼女持ち男子にとってイケメンは要注意なのだろうか。

外見は確かに重要かもしれないけれど、

ある程度中身もないと女子は上辺でキャーキャー言うだけだと思うんだけど。

カレシくんが不安がるのも解らないでもない。

他校に彼氏が居ると宣言している裕香はそれでもモテるから。

だからさらりとこんな事が言える関係の二人が羨ましいのだ。


『ハイハイ。ごちそうさま』


と、適当に返してから本題に入る。


『ちょっと問題があるのよ。

 橋場君になんて言って4人で話す場を作ってもらうの?

 自慢じゃないけどそんな事会って話せる自信がありません』


『確かにちょっと難しいかも。

 誰かしら付いてきて、それでみんなで騒がしくなるだけの未来しか見えないね』


『でしょ?』


『この件は出来れば私から説明したいからねぇ。

 朱里には繋ぎ的な感じになっちゃうけど』


まぁ自分の彼氏の事だし、

イケメンの遠海君にもその辺りの釘を刺しときたいって感じかもしれない。


『うーん。ねぇ朱里。いっその事遊びにさそっちゃう?』


『ムリムリムリムイムエイあげっらいおのあ』


無理って打とうして勝手に変な所押して送信されてしまった。

だっていきなりそんなの誘えない。無理だ。


『さすがに何言ってるかわかないんだけど?

 まぁ、無理って言ってるのは分かったわ』


『うううううぅぅ(;_:)』


『あとさ、どうせなら遠海君の彼女とか見たいと思わない?』


『あ、それ思った。

 遠海君の彼女ってどういう人なんだろうね?

 うちの学校じゃないって橋場君が言ってたけど』


『だったらさ、いっその事京くんも誘ってみんなで会うのはどう?

 トリプルデートじゃないけど、ちょっとくらいお互い面識あった方が

 友達になりやすいハズだし』


そんな事が可能なのかはわからないけれど、

これはある意味私と橋場君「だけ」が彼氏彼女でない空間に置かれるのでは?

あれぇ?なんか胃が痛くなってくるぞぉ?


『ちょっと待って!そんなカップル空間にいたら、

 私と橋場君がボッチになるよね?!』


そうまだ私にはハードルが高すぎる!

飛び越えようとして脛打ってのたうちまわって泣くレベルだよ!


『んん~、そっかなぁちょっと考えてみるよ。

 とりあえずは京くんに相談かなぁ。

 で、そっちは京くんもグループメッセ参加許可貰っておいてね?』


『それは、うん。わかった』


そこは了承する以外ないだろう。

ヤキモチ焼きのカレシみたいだしね。

でもそう言うのあると多分愛されてるとか思ってしまうんだろうなぁ。

やっぱり、そんな裕香が羨ましいしあこがれてしまうのは仕方ない事だった。

でも身近にカレシ持ち居て惚気られる皆そうなるんだろうなぁとも思う。

だから私だけじゃないハズ!

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