78話 霊峰の災厄(前)

「おお、こりゃエリシュカと若き英雄の皆さん方! 随分と早いお戻りで――」

「おい、ミコラーシュと言ったか、ユニオンから何か異変が起きたというような情報は入っていないか!?」


 <神罰の迷宮>の管理小屋。

 ラビリンス入口の転移スフィアがある石室から慌ただしく駆け出してきた一行は、とりあえずの最新情報を求めて受付のユニオン職員に詰め寄っていた。


「へ? 皆さん方か来るから最大限の便宜を図れって通達が、遅ればせながらさっき来た他は――」

「そうか、まだ何も起きてはいないようだな。ならばユニオンファルタ支部への緊急通信を要請する。奈落に関する一大事だ」

「は? 今何と?」

「だからユニオンのファルタ支部への緊急通信だ! 書くものを用意しろ、急げ!」


 思わず声を荒げたシルヴィエに、ユニオン職員のミコラーシュが慌ててカウンターの下から石板を始めとした筆記用具を取り出した。


 最大限の便宜を図れと言われた相手ではあるし、後ろにザヴジェル本家の姫君も深刻な顔をして控えている。何より、シルヴィエの声に込められた切迫感が彼の反論を消し去ったのだ。


「いいか、今からいうことを一言一句漏らさずに本部に通達するのだ。書き留める準備は良いか?」

「は、はいっ」

「いくぞ。――緊急事態。神罰の迷宮の最奥の間で」

「さ、最奥の間!? <裁きの原野>を越えたってのか!」

「うるさい黙れ。――神罰の迷宮の最奥の間で、我々は奈落の先兵と遭遇」

「な、奈落の先兵!?」


 いちいち驚いて手が止まるミコラーシュに、ガンッ!とシルヴィエの神槍が床に突き立てられた。


「――――神罰の迷宮の最奥の間で、我々は数百からなる奈落の先兵と遭遇、これを殲滅した」

「…………」

「――やつらの狙いはラビリンスコア。守護魔獣の門の手前、<深淵に架かる道>のその深淵から侵入してきた模様。他の未踏破ラビリンスにも同様に侵入している可能性あり。繰り返す。他の未踏破ラビリンスにも同様に侵入している可能性あり」


 カリカリと必死に書きとめるミコラーシュの額に、一気に脂汗が噴き出してきている。それだけ途方もない、度肝を抜く情報なのだ。


「……よって本事案に遭遇した私こと<神槍>フーゴの娘シルヴィエ、天人族サシャ、ヴィオラ=ザヴジェル、<神盾>イグナーツ、クラン幻灯弧のエリシュカ――」


 シルヴィエが名を告げるたび、その当人が重々しく頷いていく。


「――その五名全員の連名により、次のことを要請する」


 それからシルヴィエがミコラーシュに書き留めさせたことは次のとおり。


 ひとつ、可及的速やかに本情報を領主館およびザヴジェル騎士団を始めとする関係各所に知らせること。


 ひとつ、ザヴジェルに存在する全ての未踏破ラビリンスを即刻封鎖し、対奈落の備えを持った部隊を緊急派兵すること。


 ひとつ、そしてもしその未踏破ラビリンスが唐突に解放されたならば――


「――その場合はラビリンスコアが奈落の先兵の手に落ちたと考え、最大限の警戒を持って不測の事態に備えること。これには、当該ラビリンスから奈落の先兵がザヴジェル領内に溢れ出ることも含む。……以上だ」

「な、なんてこった」

「今の言葉を間違いなくユニオンに伝えてくれ。それと、この<神罰の迷宮>も解放されている。我々が遭遇した奈落の先兵は殲滅したが、その後追加が侵入してこないとも限らない。よってここも封鎖対象だ、急げ」


 蒼白な顔でこくりと頷き、ミコラーシュは脱兎のごとく奥の事務室へと駆け出した。


「我々はこの足で最寄りの未踏破ラビリンス、<偽りの迷宮>へと急行するからな! 頼んだぞ!」


 シルヴィエはミコラーシュが消えた戸口へと最後の言葉を叫び、くるりと仲間たちへと振り返った。


「さあ、行くぞ」


 サシャを始めとした四人が無言で頷きを返し、一行は管理小屋から駆け足で飛び出した。一拍の間を置き、居合わせた他のラビリンス採掘者を含めて管理小屋が大騒ぎに包まれたのは仕方のないこと。



 ◇



「これは皆さん! 連絡は来ています、どうぞこちらへ!」


 一行が<偽りの迷宮>の管理小屋に辿り着くと、ユニオンの管理職員がカウンター越しに大声を上げてきた。そのカウンターには大勢のラビリンス採掘者たちが詰め寄せていたが、全員が一斉にこちらを振り向いた。そして広がるどよめきと緊張感。


「……おい、まさかあれって」

「……間違いない、凱旋パレードで見た奈落撃退の英雄たちだ」

「……てことは、あの少年が噂の天人族か。すげえ」

「……なんでトンチキエリシュカが一緒にいるのよ?」

「……それだけじゃない、ヴィオラ姫も<槍騎馬>も勢揃いしているぞ。ラビリンス封鎖なんてふざけんなって思ってたけどよ、こりゃ奈落がらみってのは本物だぞ」


 既にここまで情報が回っているとは、ユニオンのような大組織にしては随分と早い対応である。ラビリンスの封鎖も確実に行われているようで、この場の探索者たちはラビリンスへの入場を止められた者たちなのだろう。


 事前のシルヴィエの提案どおり、全員の連名で要請を行ったのが功を奏したと思われる。ザヴジェル本家のヴィオラはもちろん、サシャの天人族という肩書もそれだけの重みを持っているのだ。


 ざわめきから一転、ゆっくりと水を打ったような沈黙が広がっていく管理小屋の中、一行は探索者たちに道を譲られながらカウンターと進んでいく。


「よくぞお越しいただきました。私、ユニオンの二級迷宮管理官のアロイスと申します。まだどこからも増援は到着しておりませんのに、こんなに早く皆様に来ていただけるとは」

「うむ、たまたま今日は未踏破ラビリンスを回る予定だったからな。それよりも」


 アロイスと名乗った職員と正対する形で、カウンターの前に勢揃いする一行。


 代表して受け答えをするシルヴィエの言葉に嘘はない。エリシュカとオルガが吟味して作成していた、未踏破ラビリンスの往訪リストが殊のほか役に立ったのだ。それがあったお陰で同じ霊峰チェカルにある最寄りの未踏破ラビリンスに、一行はこうして最短ルートで到着することができたのだった。


 移動に要した時間はわずか十五分、それでも遅すぎたのではないかという予感が全員の胸の奥でじりじりととぐろを巻いている。


「あの、ここのラビリンスはまだ今のところ何の異変もなく?」


 諸々の挨拶をすっとばしたヴィオラの問いは、全員に共通した想いだ。


 もし先ほどの<神罰の迷宮>と同様に、この<偽りの迷宮>にも奈落の先兵が侵入していた場合。最奥の間の守護魔獣と召喚される魔獣群の質と量にもよるが、もうとっくにラビリンスコアが陥落していてもおかしくはない時間なのだ。


「ええ、緊急通達のとおりに封鎖をして、唐突な解放がないかの監視員を主要三層に派遣したところです。今のところは特に」

「では、他の未踏破ラビリンスに何か異変があったという連絡は?」

「はい、それも今のところは。ただ、通達を受けたのはつい先ほどのことです。他もそうかと思いますが、監視員が配置につき、ラビリンスが解放されていないか魔獣の動きを確認するまでには若干の時間が――」


 アロイスがそう説明をした、まさにその時。




「ファルタ支部より緊急連絡が入りました! <湖底の迷宮>と<氷壁の迷宮>で踏破者不明のラビリンス解放を確認、当<偽りの迷宮>においても最大限の警戒をと!」




 奥の事務室から平服の女性職員が飛び出してくるのと――




「大変だ! 第十五階層じゃ魔獣同士が戦い始めてるぞ! 間違いなく解放されてる!」




 ――転移スフィアの石室から、監視員と思しき武装職員が駆け戻ってくるのは同時だった。さらに。


「それと転移スフィアの様子もおかしい! 青の輝きがくすんできているぞ!」

「戻ったぞ! 第一層でラビリンス解放を確認――エヴシェン、お前のところもか!」

「それより見ろ転移スフィアを! どんどん黒くなっていく!」

「な、なんだよアレ。おい、オルジフはまだ戻ってないのか!? 呼び戻した方が――」


 行こう。

 サシャたちは以心伝心の視線のやり取りで、転移スフィアのある石室へと一斉に駆け出した。扉口で立ち止まっている二人の武装職員の脇をすり抜け、薄暗くひんやりとした石室へとなだれ込む。


「な――!」


 その喘ぎを漏らしたのはシルヴィエだったか、それともサシャだったか。


 そこに青く静謐な輝きと共に佇んでいるはずの転移スフィアが、確かに黒ずんできてしまっているのだ。


「……ねえ、この黒いのって、まさか」


 サシャが誰にともなく呟くと、残る四人が同時に頷いた。

 そう。スフィアを侵食するその黒を見て、全員の頭に連想されたのは全く同じもの。それは、南領境でさんざん眺めてきた奈落の瘴気だ。


「……これは、なにか途方もなくマズい事態が起きているぞ。皆、油断するな」


 そう言って青く輝く愛槍を、す、と体の前に構えるシルヴィエ。

 他の面々も一気に武器を抜き放ち、無意識に息を押し殺してスフィアを取り囲むように静かに散開していく。


「――――ッ!」


 と、そこに弱々しい青光と共に、ユニオンの装備をまとった人間が転移してきた。三つの階層に派遣されたという監視員の、最後の一人だ。


「第三十階層、解放を確認――」


 そう言うなり石床に崩れ落ちる最後の監視員。

 見れば体のあちこちに瘴気の黒霧がまとわりついている。


「おいオルジフ! 大丈夫か!」

「待って!」


 駆け寄ろうとする他の監視員たちをサシャが押しとどめ、一人ゆっくりと歩み寄って癒しの聖光で包み込んだ。今は弱くなってしまったスフィアの輝きと同じ、神々しい青光が監視員の全身を輝かせて――


「おおおっ! こいつはまさかっ!」

「クラールの聖なる癒し!? てことはあんたが最後の天人族、<救世の使徒>さんか!」


 ――まるで聖光で洗われたかのように、倒れ伏した監視員の体からみるみるうちに瘴気が薄れていく。そして微かに身じろぎと共に、そのユニオン職員はゆっくりと意識を取り戻した。


「……俺は、死んでしまったのか? 天空神クラールに会った」

「ぶはっ! オルジフお前、何を言うかと思えば! 目を覚ませ!」

「……クラール?」


 先行して戻っていた二人の監視員に抱き起されたその男が、その後の介抱を譲って一歩下がったサシャを見て首を傾げた。


「おいオルジフ、寝ぼけてんのか! その御方は噂の<救世の使徒>殿、聖なる癒しでお前を癒してくれたんだよ!」

「俺を、癒して……?」

「そうだよ。スフィアから出てくるなり倒れた前を、凄え聖光で包んでくれてな。礼ぐらい言ったらどうだ」

「クラールでは、ないのか……?」


 オルジフと呼ばれた男は未だ混乱している様子だが、癒し自体は無事に効いているようだ。その様子を見てとったシルヴィエが、愛槍の石突きで軽く床を鳴らして注意を喚起した。


 そう、オルジフが横たわっているそこは刻々と黒変していくスフィアのすぐ脇。何が起きてもおかしくない、現在進行中の異変の中心部なのだ。


「――取り込み中すまないが。動けるのであれば早々に退避しておいた方がいい」

「うっ、そのとおりだ。すまない皆さんがた、礼はまた改めて。ほらオルジフ行くぞ、歩けるか?」


 仲間たちに両側から支えられ、連れ去られるように退去していく最後の監視員。

 彼らが石室から出るのを待ってイグナーツが扉を閉ざし、油断なくスフィアににじり寄っていく。


「…………」


 今やスフィアからはかつての神秘性は一切感じられなく、禍々しい、そのひと言がふさわしい状態へと変貌を遂げてしまっている。透きとおった青光は既に消え失せ、代わりに色を失った結晶の内部に充満しているのは暗黒の瘴気だ。


 サシャが隣のシルヴィエに小声で囁く。


「ねえ、さっきの<神罰の迷宮>じゃ、帰還の宝珠で戻った時にこんな気配は全然なかったけど――」

「あそこは我々が介入してコアは自壊したような形だし、先兵はひとまず殲滅したからな。ここのコアは我々の介入がなく、奈落の手に落ちたと考えるべきだろう。転移スフィアがこうなるなど、何がどうなっているかは見当もつかないが」


 シルヴィエのその言葉に触発されたように、スフィアの結晶、その複雑に渦巻く瘴気の奥に緋色の物体がちらりと垣間見え――


「……今、遠くに死蟲が見えたような」

「私にも見えた。これはマズ――」


 サシャとシルヴィエがもう一度囁きを交わそうとした、次の瞬間。


「来るぞッ!」


 イグナーツが咄嗟に無詠唱で神盾を展開し、黒変したスフィアを覆った。

 が、僅かに間に合わず、高速で変形していく神盾の隙間を一匹の死蟲がかいくぐり、耳障りな奇声を上げて飛び出してくる。


「させるか!」

「やあっ!」


 即座に繰り出される青の直線と緑白の閃光。

 シルヴィエの突きとヴィオラの斬撃が同時にその死蟲に襲いかかったのだ。どさり、と地面に落ちた時にはもうそれはふたつに分断され、三つの穴が開けられた骸に成り果てていた。


「――お見事」


 そして、そう声をかけたイグナーツの神盾は既にスフィアを隙間なく覆い尽くし、完全な封印が完成している。これでもう次の死蟲が出てくることはない……のだが。


「……ねえイグナーツさん、その中ってまさか」

「ああ、おそらく少なくはない数の先兵が外に出ようと暴れているな。かなりの圧力がかかってきている」


 イグナーツの言葉に、シルヴィエは大きく天を仰いだ。

 それは彼女が想定していたうちの、最悪の事態だった。


「……ここは我々がこうして対処できたが、もしかしたら他の未踏破ラビリンスでは」


 唇を噛み締めるシルヴィエに、ヴィオラがはっと息を呑む。


「シルヴィエ、それは! ここの他にもふたつのラビリンスが解放されていると、先ほどカウンターで!」

「……ヴィオラも聞いていたか。その後も増えている可能性は別として、タイミングを考えれば、そのふたつのラビリンスのスフィアがここと同じことになっていると覚悟するべきだろう」

「なんてこと!」


 シルヴィエの指摘に、ヴィオラのみならず全員が身を強張らせる。


 対奈落の備えを持った増援を各所に派遣するように要請はしたが、それが間に合うとは到底考えられない。そうなると他のラビリンスでは今、備蓄のポーションとたまたま居合わせた探索者だけで溢れ出る死蟲を迎え撃っている可能性が高いということだ。


 そして、万が一それで抑えきれずに外部へ氾濫させてしまった場合。


 古代迷宮群があるこの霊峰チェカルは、言わばザヴジェルの懐の中である。

 先の南領境の防衛戦のように盾にできる防壁など、周囲にあるはずもなく。山を下りればすぐそこに、ファルタを始めとした豊かなザヴジェル領がそのまま広がっているのだ。


「我々が動くのが一番なのだが……まずここをどうにかしなければ」

「ふむ。抑え続けるだけで良いのであれば、この場は私一人が残れば充分なのだが――」

「――それは、悪手だろうな」


 イグナーツの言葉の続きを、硬い声でシルヴィエが引き取った。


「そうやって他にも手分けして我々が分散したとして、人数分、つまり最大でもあと四つのラビリンスしかフォローできない。この霊峰チェカルにある残りの未踏破ラビリンスもちょうど四カ所だが、はたして。さっきの<神罰の迷宮>もこうなっていたらどうする?」


 答えを待たず、シルヴィエはなおも言葉を続ける。


「仮に<神罰の迷宮>からは出てこなかったとしても。ここも含めた全五箇所、一人一箇所で分散したところで、我々の体力には限りがある。いつまでも戦い続けられる訳ではない。せめていつまで戦い続ければ良いのか、先の見通しが立ってからでなければ」


 そう。

 護りに特化したイグナーツの神剣とは違い、他の面々が取れる手段は正面切って戦うことだけなのだ。体力や魔力の面はもちろん、ひとつのミスが命取りになる。


 そして、そうした奮闘を続けていても。


 先ほど要請した、騎士団の増援部隊は遠からず来るだろう。

 だが、彼らが来たとて相手は奈落の先兵。結局皆が休めないことに変わりはないのだ。


 この霊峰チェカルにある残りの未踏破ラビリンスは、ここを含めて全部で五つ。最悪の場合、それら五つに分散した消耗戦に嵌まりこむ可能性が高い。さらに加えて先ほどの<神罰の迷宮>や、この霊峰チェカル以外にある未踏破ラビリンスからも奈落の先兵が出てきてしまったら。


「――いっそのことここで派手に戦って、さっきの<神罰の迷宮>のように殲滅させてから次に移るのはどうだ? 死蟲の大群相手にはうってつけの、とっておきの古代魔法があるぞ?」

「……悪くはないが、先兵の侵入元は<深淵に架かる道>だったのだぞ? そこまでの間にどれだけの数がいるのか予想もできないのがな」


 エリシュカの提案に、シルヴィエは溜息と共に首を振った。


「あれからかなりの時間が経っているし、さっき出てきたのは死蟲だった。ないとは思いたいが、死蟲が南領境で大地を覆い尽くしていた光景、私にはあれが思い出されてならない」


 類推にしかならないが、南領境で戦った飛行蟲と死蟲の比率を考えると――そうシルヴィエは言う。


 <神罰の迷宮>で戦ったのは、数百からなる飛行蟲だった。南領境と同じ比率で死蟲が存在するとなると、とんでもない数の死蟲がどこかに控えていた可能性がある。もちろんこの<偽りの迷宮>でそうなっている蓋然性はまるでないのだが、簡単に否定はできない推論であった。


 ここの先兵と戦端を開くこと自体、それは間違ったことではない。


 問題はそれが泥沼化して、結局他への救援が出来なくなるかもしれないこと。現状はせっかく一人の力だけで綺麗に抑え込めているのだ。それを自ら壊すには、やや分の悪い賭けであるといえよう――そうシルヴィエは自らの言葉を補足した。


「なら! いったいどうしろと! このままここで指を咥えて、わたくしたちだけ安全な場所から見ていろというのですか! 他のラビリンスでは今も奈落と戦っている人たちがいるかもしれないというのに! そしてもし彼らが力尽きれば、そのすぐ先にはザヴジェルの民がいるというのに!」


 イグナーツの神盾の奥からガリガリと嫌な音が漏れ始める中、ヴィオラの悲痛な叫びが石室にこだまする。


「落ち着けヴィオラ。今言ったことを全て解決できる、文字どおり最後の手段がひとつある」


 全員の注目を一身に受け、シルヴィエは静かにその手段を





「――――この転移スフィアを破壊すればいい」





 そう、端的に述べた。



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