11ー15 別の異世界探査?
嫁sへ一部の秘密の打ち明け話が済んで、子供達への指導にかける時間が増えたことから、セカンダリオの調査の時間がなかなか取れなくなった。
もともと時間の合間を縫ってやっていた地球訪問でありセカンダリオへの訪問である。
俺には領主としての仕事も有って、その意味では結構タイトなスケジュールだったんだ。
亜空間の経時調整で地球世界やセカンダリオ世界に行っている時間を見かけ上数秒程度のミニマムにできるとは言うものの、セカンダリオでのセキュリティが余り良くはないことから、セカンダリオへ行くとどうしてもホブランドに精神的疲労を持ち越すようになってしまったのだ。
地球世界への訪問の場合は、それなりの安心感もあったし、早い時点で家を購入するなどしてアジトを設けていたことから疲れを残すようなことが避けられていたのだが、取り敢えずの根拠地としての宿は必ずしも安心できる場所では無かったというのが大きい。
多分俺が塩を商業ギルドへ卸すことで結構な金を持っていることをかぎつけた者が居るのだろうと思う。
最初は、町の外に出る際に尾行が付いた。
二度ほども尾行を撒くと、次は実力行使に出た。
恐らくは捕らえて塩の入手先を吐かせようという魂胆だったのだろう。
無論、簡単に撃退はできるのだが、困ったことに少々痛めつけても諦めない連中だったのだ。
この辺はこの世界のメンタリティの違いかも知れない。
地球世界やホブランド世界ならば一度痛めつければ相手が敵わないと知って手を引くようになるのだが、セカンダリオの小悪党は、しつこいし、執念深い。
何度ぶちのめしてもあきらめるということを知らないらしい。
塩の納品のために定期的にセカンダリオ訪問を繰り返しているうちに、最終的には街中や宿での襲撃にも見舞われるようになった。
誤解してもらっては困るが、セカンダリオの住民が全て悪党というわけでは無いんだぞ。
精々一割か二割程度の者が、強盗や略奪を天職とはき違えているだけの話で、残りの住民は普通におとなしい連中だと思う。
それに小悪党が特別な種族に偏っているわけでは無さそうだ。
此処の住人には、ヒト族に似た種族、ドワーフに似た種族、獣人に似た種族、そうして樹人としか呼びようのない種族などが居るが、そのいずれの種族にも同じような割合で小悪党が居るようで、俺としては何故にそうなのかとむしろ不思議に思っている。
知的種族がまとまるのは最初に血族や同じ種族であればあるほどまとまりやすいものだ。
仮に異種族同士でまとまるとなればそれらをまとめるものが必要なはずだ。
仮にカリスマ性を持つものが居れば他種族であってもまとまるが、普通は諍いが絶えないのでまとまらないのが普通なんだ。
まぁね、セカンダリオでは種族間の抗争そのものが少なそうだから、融和が進んでいるのかもしれないが、それでもどうしても同化できないモノはあるはずだ。
それが同じ目的のために死を恐れず立向かってくるのはちょっと違和感を感じざるを得ない。
これが国家存続や家族の命を救うための大同団結ならばわからないでもない。
しかしながら、どう見ても小銭稼ぎにしかならない、強盗にみんなが意思を揃えるというのが、俺にはちょっと異様に感じられるんだ。
それに感性が俺とは少し違うかもしれない。
目の前にいる者が何の理由もなく突然泣き喚き始めたり、何の脈絡も無しに何故か怒りだしたり、突然周囲の人を口汚く罵ったりすることがある。
何となく精神的に不安定な兆候が見られる者が多いような気がするんだ。
何度か訪れてそんなことが続くと俺が精神病院の病棟に入り込んだような気がしたもんだ。
このセカンダリオ社会の特性と言ってしまえばそれでおしまいなんだが、これでは俺のメンタルの方が
比較的街の中でも上等な宿屋でもゆっくりと休めそうにないので、仕方がないから山中の大深度地下にアジトを設け、休憩と睡眠はできるだけそこで取るようにしたのだった。
それでも人づきあいに精神的に疲れるとなると、勢いセカンダリオの訪問をすることが苦痛で、億劫になるというものだ。
セカンダリオにも多少の知己はできたが、だからと言ってこの世界へ特段の思い入れがあるわけでもない。
今のところの調査では特段のメリットも見い出すことができないような状況だ。
例えばホブランドや地球世界では得られないような道具や素材とかがあれば別なんだが、彼らが作る道具も使う素材も特殊なものではなさそうだ。
敢えて特殊なものを挙げるならば、銃砲に使う火薬が硝酸塩を使っていないらしいということぐらいかもしれん。
地球世界では黒色火薬を作るのに、「木炭」、「硫黄」、「硝石」を用いたはずだが、セカンダリオでは「木炭」と「黄鉄鉱」と「ボーキサイトに似た鉱石」それに「蛍石に似た素材」を使用している。
よくわからんがアルミ成分が含まれていることから、テルミットを使った燃焼加速材なのかもしれない。
その意味では多少の学術的興味も無いわけでは無いのだが、この火薬は燃えると非常に煙が多く、恐らくは有害物だからこの煙を吸い込むと間違いなく身体に良いことは無いだろうと思っている。
そんなわけでこの世界で得られるメリットの少なさを考慮して、最終的には、このセカンダリオ世界への干渉を含めて訪問を
開きっぱなしだった亜空間をいったん閉じて、検証のために数分後に同じように開いた時、穴は発見できなかった。
しかしながら何度かやっているうちに穴が出現し、その先にある世界は別の世界のようだった。
但し、その穴から薄紫色のガスが噴出しだしたので、慌てて穴をふさぐようにシールドを張ったんだが、上手く塞ぎきれず僅かながらもガスの流入があるので、急遽当該亜空間は閉じて消滅させた。
分析も行えなかったので、詳細は不明だが、あの色のガスは間違いなく悪いものだ。
その次からはバブル状のシールドを身体の周りに張った上で亜空間に入ることにした。
仮に亜空間が毒ガスで埋め尽くされても俺自身が無事であれば何とでもなる。
そんなこんなで、俺もかなりしつこい奴だなと自分で思いつつ、日を替えて試すこと数十回あまり、ついに別の異世界を見つけたようだ。
例によって小さな穴で異世界とつながっている。
前回もそれなりに注意はしたつもりだったが、今回は念には念を入れて、最初に地球世界から持ち込んだ最新の分析機械で大気や水を分析し、有害な物質等が含まれていないことを確認した。
最初にステルス方式のドローンを送り込んで、大気を採取し、水や海水を採取して分析に掛けたんだが、結果としてこの世界がセカンダリオとは異なる世界であることを確信した。
海が近くに有り、当該海の成分がセカンダリオの海とは違っていたことと、大気成分で酸素の含有量が少し多めであることからセカンダリオとは違う世界と判断したのだ。
人が居るかどうかは今のところ不明だが、取り敢えず俺が呼吸のできる空気があるようだ。
そのうえで、ステルス方式のドローンを使って、文明の有無の確認をしたのだが、砂と岩ばかりしか見えないのであるいは不毛な世界かと思いきや、この世界にも都市があった。
但し、最初に見つけた都市は廃墟だった。
周囲は草も生えない砂漠であり、或いは水の不足で滅亡した都市なのかも知れない。
四方八方に飛ばしたドローンの一つが50キロ近く離れた場所で
そこから更に先に進むとサバンナというのか高い樹木の無い草原地帯に出た。
そうして遠く離れた湖と思われる周辺にはかなりの動物が存在するのが確認できた。
人類が居るかどうかは不明だが、都市を作った知的生命体がもし居るのなら話し合いもできる可能性がある。
そこでこの世界を「トロイジェム」と名付けた。
トロイジェム世界の探索第一日目は、そこまでの探査で終えた。
次回は、文明都市やその痕跡を見つけたならば地球世界から複製して来た最新の超軽量な宇宙服を着用して異世界に潜り込んでみるつもりでいる。
認識疎外を掛ければ大抵の障害は避けられるだろうし、飛空艇を持ち込むつもりでもいるんだ。
この世界で航空機が存在していなければ、上空からの監視が最もバレにくい筈なんだ。
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