9ー6 δ539号、痕跡?
私は、
α、β、γ型のゴーレムもあったのだが、現在ではそのほとんどが
以前のゴーレムとの違いは、自立型AIプロセスの魔法陣の進化もあるけれど、魔導通信機の内臓と、ベルゼルト魔境内に設置された魔素吸収装置からのエネルギー転送装置の内蔵が一番大きいだろう。
在来型と同じく百分の一秒遅れの亜空間(「ディアトラゾ空間」と呼称されることになった)に潜伏しながら、途切れることのない動力源を確保でき、なおかつ収集した情報を主の元へ魔導通信で瞬時に転送できる仕様がとても重宝されている。
収集された情報は、異世界から持ち込まれた電子脳と大昔にあったAI魔法陣の融合技術により製造された中央制御脳が整理し、分析している。
元々ゴーレム本体の耐久性は、アゾール飛空艇研究所で使われていたものと同等だから、少なくとも千年単位の寿命がある。
我々ゴーレムは、ファンデンダルク辺境伯の領内外を含むジェスタ国内での監視拠点に配備され、拠点を中心に情報収集に努めている。
メインは情報収集なのだが、我々
特に人命にかかわる場合には、独自の判断で助力を与えることが許されている。
勿論、必要に応じて助けないことも選択肢の一つになっている。
主曰く、本来自力救済がメインであり、他力による救済はできるだけ控えることが望ましいのだそうである。
我々には人情が未だ理解しがたいが、新たなファジー回路により、疑似的な類推が可能となっており、人間のように感情に溺れることなく正確な判断が可能となっている。
いつ何時であれ、最優先は「主」及び「主の指定した身内の者」の安全が最優先事項となっているので、俗世に関与することでそれらの安全を脅かす恐れがある場合は、むしろ何もしないことが原則になっている。
私の配属先は、ジェスタ王国の存在するアルバンド大陸の西方に位置するファランド北大陸であり、主要な強国ではないが中規模の領域を統治しているベスタレッド連合国の首都ハイレマールである。
大陸派遣の留意事項に従い、メインは連合国政府首脳及びその取り巻きを監視しているところである。
あ、
従って、情報収集能力はβやγ型に比べると格段に強化されている。
で、ついに主の主眼であった邪神の欠片の痕跡を発見したかもしれない。
ベスタレッド政府首脳及びその取り巻きの人物ではない。
首都から少し離れた商業自治都市の長である男が、毒々しいまでの紫色のオーラに包まれていることが分かったのである。
オーラの色で識別する能力を持たされたのは
聖魔法、光魔法、闇魔法及び空間魔法の四つの魔法陣を融合させた全く新たなセンサーでなければ判断できない代物なのだ。
探査は一度だけ、場合によっては相手に気づかれる恐れもあるので、以後はセンサーを封印している。
探査は僅かながら魔素を操作するので、その所為で気づかれる可能性もあるのだ。
因みに主とリサ殿はセンサーが作動すると違和感を感じるのだそうです。
他の主の奥様方は感じ取れないようですが、主の血を引いたお子達はより敏感に反応するようです。
主は気づいてもリサ殿が感知できないほど微弱な魔素の動きでも、お子達の半数は気づいている様子です。
従って、表現の仕方が悪いかもしれませんが、主のお子達は皆モンスター並みの人外だと判断している。
何しろ知覚できないはずのディアトラゾ空間内に居る我々の存在をどうも承知しているお子が居るようなのです。
お身内のガードの取りまとめをしている
他のお子も、時折、じっと我々を見つめていることがあるそうで、少なくともお子達には我々の存在はバレているようなのです。
主にその旨報告すると、「あぁ、だろうね。君らの監視や警備に支障がないなら放置しておいてくれ。」と簡単に流されてしまいました。
まぁ、そんなこともあって、能力者の周辺では極力動かないようにしているわけである。
邪神の欠片についての情報は、優先度が高いので警報を発して主の元に速報した。
緊急度の高い情報は中央制御脳を介さずに直接主に伝達される。
現状はスレーブ1を近接配置し、そこから少し離れた位置にスレーブ2を配置、更にスレーブ2をかろうじて監視できる位置にスレーブ3を配置して監視に当たっているが、邪神の欠片を持っている可能性のある男に、今のところは具体的な動きは無い。
仮に奴が本気で動き出した場合、残念なことに我らの能力で太刀打ちできる可能性は低いと看られている。
◇◇◇◇
俺(リューマ)の手元に、別大陸に配備中の特殊ゴーレムからようやく邪神の欠片と思われる情報が入った。
問題は、色々とある。
前回、俺が対応した邪神の欠片を持った男は、何とかブラックホールに閉じ込めたのだが、今回も同じ手が使えるとは限らない。
邪神の欠片を持つ者(物)が、仮にネットワークで結ばれており、リアルタイムで情報を知り得た場合、前回の手は使えない可能性もある。
邪神の名はイフリス。
分割されたために一つ一つの力は本来のものより劣っているかもしれないが、それでも広範囲の地域を破滅に至らす程度の力は確実にあるはずだ。
因みに取り敢えずブラックホールに閉じ込めてはいるものの、千年あるいは万年後にブラックホールから抜け出てくるやも知れない。
その恐れを封じるために、俺は飛空艇を改造して宇宙船を造り上げた。
空間魔法による転移陣を付加しており、ある意味で宇宙船ごと宇宙空間を転移できる。
但し、限界はある。
取り敢えず俺の目で見える範囲でしか動けない。
それでも結構遠くに行ける。
一度の遷移で最大数十光年の遷移は可能だが、あまり遠いと目測を誤って恒星の中に飛び込んでしまう可能性もあるので、無茶はできない。
一応、目でとらえられる十光年先をターゲットにして遷移し、目で見えないブラックホールを探してみた。
結構魔力を使ったけれど、俺のセンサーを駆使して、おそらく星団の中心であろう部分に巨大なブラックホールを見つけた。
そこには残念ながら俺も近づけない。
近づきすぎると吸引されて重力の井戸から抜け出れなくなるし、時空そのものが歪んでいるので空間転移も怪しくなる。
で、仕方がないので小型宇宙船一隻を監獄代わりにして、宇宙船ごとブラックホールに突っ込ませることにした。
勿論、宇宙船には俺の亜空間があり、そこにイフリスを封印した人工のブラックホールがある。
そいつをでっかいブラックホールに吸い込ませてどうなるか見てみようというわけだ。
人工とは言え、ブラックホール自体が危険だから通常空間には置いておけない。
だから俺の亜空間においてあるんだが、俺が死んだら、この亜空間は消滅する・・・と言うよりも亜空間の中に放り込んであるモノが吐き出される可能性が高い。
それが地上なら、・・・困るよね。
だから、ちょっとやそっとでは戻って来られない場所に放逐することにしたわけだ。
そのままブラックホールに吸い込まれて抜け出せなければそれでよし。
ブラックホールの穴の向こうはホワイトホールじゃないかと言う理論もあったようだが、取り敢えずそこは無視する。
環境保全に協力するのはやぶさかじゃないけれど、それが高じて自分達の生息域が存続できなくなったり、壊れたりするなら本末転倒だろうと思う。
クジラを保護しようと言う運動に俺は反対はしない。
でも、絶対的な食料不足に陥った時にクジラを採って食べちゃいかんと言うのはおかしいだろうと思う。
昔、第二次大戦終了後の食糧難の日本で、食管法違反の
で、司法を担当する判事さんがその闇米に手を出すことを潔しとしなかったばかりに餓死をしたそうな。
法を守るのも大事だけれど、生きてこそなんぼだよね。
だから、俺も必要な場合にはイケナイということもしてみる。
取り敢えずは試してみる。
それでだめなら別の手を考えてみる。
てなわけで、三か月前にこのホブランド世界のある星団中心部に巣くう巨大なブラックホールへ宇宙船を放り込んでみた。
まぁ、近くまで遷移させて、後は慣性力で自然に吸い込ませた感じかな。
因みに一回当たり10光年の遷移なのだけれど、そこに到達するまで千回は超えていたな。
宇宙船に乗って宇宙空間に遷移し、そこからホブランドに俺のみが転移で帰還することはできる。
但し、ホブランドから宇宙船に跳ぼうとするとこれは出来なかった。
一旦降りたタクシーを後から探して飛び乗るようなモノだから、宇宙船が移動していれば難しいよね。
だから、結局は二日がかりの仕事になったな。
留守になるから、嫁sには一応簡単な事情説明と理由を教えて置いた。
闇魔法で縛って他言無用にしているけれどね。
ブラックホール近傍では、時空間に歪みを生じているから、正直なところ最終的にどうなったかは俺のセンサーでも分からない。
イフリスに対しては、取り敢えず重力魔法が有効だったからブラックホールも有効だろうと安易に考えている。
少なくともこの三か月で巨大ブラックホールに送りこんだイフリスは戻っては来ていないようだ。
多分大丈夫じゃないかなと思っているのは楽天すぎるのかな?
で、新たに報告のあった邪神の欠片の疑いがある人物をどうするかだ。
放置すれば絶対に暗躍するだろうから放置はできないな。
殲滅するには、どう処理すれば良いかなんだが・・・。
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8月7日、一部の字句修正を行いました。
By @Sakura-shougen
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