5-6 ハイジャック?それともテロ?
またまた、俺が元の世界に戻っている時の話なんだけれど、今、俺が居るのは東京羽田空港国際線の搭乗口付近の待合エリアだ。
羽田発シンガポール向けシンガポール航空のSQ635便に搭乗するため待機状態である。
今夜の22時50分に羽田発、シンガポールには7時間ほどのフライトで、シンガポールのチャンギ国際空港着は午前4時55分になる。
まぁ、日本に色々と所用があって短期間滞在するために定期的にシンガポールと日本の間を往復する俺の定番となった空の旅だ。
で、空港の中で俺の体内センサーがとんでもない奴を見つけてしまった。
二つほど離れた搭乗口周辺で待っている搭乗客の中に複数のテロリストが居たんだ。
奴らが待っている航空機は、ユナイテッド航空の22時45分東京発サンフランシスコ行きだ。
なんでテロリストと分かったかって?
俺のセンサーで赤みがかったオレンジに見える奴は危険人物なんだ。
俺に対して明白な害意を持っているヤツは真っ赤なんだが、要注意人物は普通警戒色の黄色になる。
だが、この間シンガポールで犯罪者集団をちょっと殲滅した時にセンサーが変化した為に、俺に害意は無くとも所謂一般人に害意を持っている人物は赤みがかったオレンジの色がつくようになった。
その危ない連中なんだが、ちょっと見はアジア系なんだけれど、イスラムを信仰している連中が8人、ばらばらに配置している。
イスラムの連中って色々特徴があるんだけれど、こいつらに特徴的なのは、全員がコーランを持っていることかな。
鑑定で出てきたコーランは所謂アラビア語で書かれているもの。
アラビア語以外で書かれたものは、原則コーランではないとされている。
イスラム信者とは
例外はインドネシア。あそこにはインドネシア語で書かれたものがあるらしいけれど、例外的に認められているらしい。
まぁ、俺のセンサーで周囲に危険であることはわかっても、流石に奴らの意志がどうなのかまでは探れない。
それでも過激派の連中が米国航空機に搭乗して何か悪さをしようと考えているのじゃないかと推測は付く。
で、凶器や爆発物があるのかどうか、そいつらの持ち物を片っ端から鑑定をかけまくった。
見た目武器に見えないが、強化プラスチック製の杖に似せた銃が一丁、こいつは一発しか発射できない代物だし、弾丸も金属製じゃない。
中々ハイテクじゃん。
銃弾も強化プラスチックだけれど、毒が塗ってあるね。
テトロドトキシンっていう神経毒。
フグやヒョウモンダコで有名な毒なんだけれど、解毒剤が今もって無いんだ。
弾が当たると小さなプラスチック針が、標的体内に毒を注入する仕組みみたいだ。
どれも金属じゃないから、荷物検査のゲートでは引っかからない。
杖を持った者一名、足を負傷したふりで、松葉づえ一対を持っているもの一名の計二名がこの特殊武器を持っている。
松葉づえはご丁寧なことに全部強化プラスティックで金属は使われていないから、凶器と見做されない限り、フリーだよね。
一応棒状のものは60センチ以内にたためることが要件なんだけれど、こいつはねじ込み式の組み立てでたためる仕様だ。
この松葉づえ、一つが三つに分解出来て、6丁の毒発射銃になる代物だ。
見栄えは悪いけれど、俺の見るところ立派に実用になりそうな感じだよ。
で、もう少し危ないものを持っているのが四名。
新型のプラスティック爆弾みたい。
これまでのプラスティック爆弾は大枠で二種類あるけれど、どちらも微量の臭いがあるために、訓練された犬が嗅ぎ分けることができるらしい。
だが、彼らの携帯しているのは、臭いが無い代物だ。
C4やセムテックスは可塑性で有名なんだが、可塑性故に液状物質が幾分かでも含まれており、そいつがニトロ等特有のにおいを発するから、爆弾探知犬が活躍できる余地がある。
だが、奴らが持っているのはどうやったかは知らんが、セムテックス系の爆薬を焼き固めたものだ。
このために芳香が完全に飛んでしまっている。
そんな奴で爆薬になるのかどうか俺は科学者じゃないからよくわからんが、新品のキュービックパズルやおもちゃの組み立てブロックに化けて持たれたら、多少の数を持っていても誰も疑わないだろう。
多分土産物で通ると思うのだ。
だがその実、キュービックパズルも組み立て用ブロックも、全て特殊セムテックスなのだ。
セムテックスの場合250グラムから320グラムほどで航空機を爆破するには十分だという話もある。
俺が今鑑定で見つけた代物は総重量で5キロを超える重量になる。
C-4では、3.5㎏あれば幅200mmのH鋼を一撃で切断できるほどの爆発力を有するというから、かなりの爆弾であることは言うまでもない。
因みにC-4やセムテックスに火をつけても燃えるだけで爆発はしない。
爆発させるには通電させる必要があるし、一般には別の爆薬を混合させることが多い。
俺の鑑定でも爆薬の成分のような詳細まではわからないのだが、こいつら電池の代わりに特殊なスマホ用バッテリーを持っていやがった。
スマホに入れているんだが、スマホの電源は誰も入れていない。
今時誰でも暇ならスマホをいじるのに、こいつら八人間違いなくスマホを持っているのにかかわらず、誰もいじってはいないんだ。
どうやら、スマホの電池は起爆用の高電圧のものなんじゃないかと思われる。
普通のスマホより明らかに電圧が高いからね。
羽田空港内でテロでも働くつもりなら速攻でこいつらを動けなくするんだが、どうもここで動く気はなさそうだ。
であれば、ハイジャックでもしてから、米国国内で自爆テロか?
それにしては装備が少ないかな?
で、もう一度念のために鑑定で調べると、一人だけケツに何かを入れてやがる。
デスフルラン?確か、麻酔ガスを発生する液体だよな?
アレ?これを使ったら防毒マスクでもない限り、こいつらも寝てしまうぞ。
何かマスクがあるのかな、それとも抗麻酔薬みたいなもの?
うん、一人がなんか変な薬を持っているね。
英語で酔い止め薬?Made in USAだって。
でも俺の鑑定では、偽装酔い止め薬(抗麻酔錠剤)って出てるよ。
そんな薬って本当ににあるのかどうかも知らないぜ。
あるいはこのためにイスラム過激派組織が産み出したモノか?
こいつらで、航空機の中で実行する犯罪としてはやはりハイジャックかな。
身代金要求ぐらいなら可愛いもんだけれど、こいつら9割がたハイジャックで最後は自爆テロの類だな。
さてさて、どうするか。
これって航空機に乗せたら、絶対
うーん、何とか乗せずに全員を捕縛する法はあるんかいな?
色々困ったが、俺が怪しまれずに済む方法はないと結論。
最終的に空港警察にタレコムことにした。
全員の本名はわかっているけれど、パスポート記載の名前は不明だから、認識疎外にインビンシブルをかけて、一人ずつ直接接触してパスポートをコピー。
でもって、その名前を元に空港警察にタレ込んだ。
やっぱりこいつらパスポートも偽造で偽名を使っていた。
タレコミは勿論、ネットからだけど、出元がどこがわからないようにチョチョイと細工した。
10分後、私服警官が16人やって来て、八人を即座に確保。
手錠をかまして、事務室の方に連れてった。
多分、そのお陰でユナイテッド航空は少し遅れて22時59分に出発した模様。
奴らの預けた荷物も確認せにゃならんだろうしね。
俺はシンガポール航空に搭乗したから後のことは知らん。
シンガポールについてからニュースで見たけれど、「大規模テロ、寸前で未然防止」って見出しででかでかと載ってたね。
新型爆薬に、仕込み銃、それにケツの穴に隠していた液体麻酔剤に抗麻酔錠剤の存在が明らかになって、世界中に警鐘を鳴らしたんだと。
全部俺のタレコミのお陰なんだけど、空港警察は自分の手柄の様に吹聴していたね。
まぁ、それ覚悟でタレこんだのだからいいんだけどね
正直言って、あんまり、こんなのに出会いたくないよねぇ。
出会うなら、美女との出会いにしたいもんだよ、全く。
そう言えば、シンガポール航空のCA(キャビンアテンダント)さん、とっても美人で可愛い人だったな。
鑑定かけたら、マレーシア人、英国人、中国人(華僑)の混血さんでした。
やっぱし、ハーフってかわいい人多いのかな。
シンガポールに居るのはこちらの時間で3か月に一日か二日程度なんだけれど、その間だけでもお友達になりたい女性ナンバーワンでした。
こんなこと考えていても、身の固い女性はまず無理だね。
一夜妻だけならなぁ何とかなるかもしれないけれど、三カ月に一回の逢瀬なんて七夕の
まぁ、ホブランドで複数の女が俺を待っているんだから、こっちの世界に彼女が居なくてもいいよな。
東京とシンガポール、俺としては結構連続して長居してるんだけどね。
何せ、地球の時間は、ホブランドの二か月ほどで、三年ちょっとになるから、二十倍ほどの差があるんだ。
だから俺は少なくともホブランドで10日に一度くらいは、地球へ戻って日本とシンガポールを往復してるんだ。
本来は4日に一回程度の方がベターなんだけど、そんなに頻繁に来てると俺の身体が持たない。
だから、そこは名目上シンガポール滞在を長くして、日本へ偶に行ってるように装っているわけだ。
シンガポールに戻ると早めにホブランドに戻るのが常なんだけれどね。
まぁ、こっち(地球)で左程仕事をしているわけじゃないから、今のところ、何も困ることは無い。
警察とかに目を付けられると面倒だけど、今のところは大丈夫。
定期的に、警察のシステムにも侵入して情報収集してるし、危うければトンヅラするだけだよな。
シンガポールに続いて、東京で見つけた
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