4-3 取り敢えず準備? その三
旧辺境伯邸で最初に見つけたのは井戸の底に棲むスライムで、聖属性のスライムに変わっており、水の浄化を果たしてくれるものの害はなさそうだ。
従って、このまま放置する。
次に見つけたのはアカバラス鳩である。
地球で見かける土鳩に似ているが、少し赤みがかった色合いで倍ほどの大きさがある。
頭頂部に一対の角のような突起があり、普通のアカバラス鳩とは違うようだ。
面白いことに俺が近づくと、俺の方に近寄ってきて俺の足に身体を擦り付けるような仕草をした。
犬や猫ならともかく、鳥からこういうアクセスを受けるのは初めてだったが、中々可愛いものだ。
しゃがみこんで羽根の部分をなでてやると、「グルルッポ」と鳴いた。
ふと思いついて従魔契約ができないかどうか試してみることにした。
ラノベでは定番の従魔契約は、一応魔法の一種だと思う。
ならば魔法創造でできるんじゃないかと俺は安易に走る。
で、簡単にできちゃった。
うーん、ちょっと安易すぎない?
何かもう、生みの苦しみってのが全然ないんだけど・・・。
安直にポッポちゃんと名前を付けてやった。
ちょっと肩に乗っけるには大きめの鳩が俺の従魔第一号になった。
従魔契約をすると絆が深まり何となく意思が伝わるようだ。
そんな気がする。
そのうち会話もできるようになるかもしれないな。
取り敢えず伝書鳩としての利用なんかが考えられるネ。
更に次の奴の確認はと・・・。
居ましたねぇ。
デッカイのが・・・・。
昆虫だと思うんだけど・・・、これだけ大きいと自信が無くなる。
俺の目の前にいるのは、多分、クワガタかな?
頭部からにょっきり生えている様な角に見えそうな大顎にはのこぎり状の歯が並んでいる。
俺も昆虫学者じゃないから良くわからんが、小学校の頃、捕まえた奴なら大きくても精々全長が7~8センチ程度だったと思うのだが、目の前にいる奴は、体高60センチ、全長は多分2mはあるぜ。
そんなのが、のそのそと俺が手に入れた屋敷の庭先をはいずり回っているのだが・・・。
さて、退治すべきか否か。
迷うのは目の前の相手がものすごく平和的だからだ。
それに何というか綺麗なんだよね。
保護色なのかもしれないが、凄く綺麗なマリンブルー・・・、いや、ちょい薄目だからレガッタブルーかな?
そいつが、警戒感が全くないんだよ。
俺ってさ、敵性の意図を持った奴は、少なくともマップ上で黄色とか赤色に表示されるじゃん。
今、目の前のこいつはマップ表示も緑だぜ。
つまりは味方表示ってわけ。
味方かどうかわからないときは緑じゃなくって普通白だし・・・。
死んだら黒っぽい灰色だし。
そう言えばポッポちゃんも緑だったね。
スライムは白で点滅してた。
あれ、もしかしてこいつも俺に懐いてるのかな?
そういうことで、なけなしの勇気を振り絞るかのように、デカ物に近づいて触れてみた。
うん、触れるとよくわかるね。
こいつもわずかな動きながら俺の手に身体を擦り付けてくるんだ。
で、決定、俺の従魔第二号はケイスケ。
なんでケイスケだって?
俺の親父が好きだった特に夏にバカ売れするグループのリードボーカルがクワガタケイスケ、いや、違うな。
ゴメン、クワ*ケイスケだった。
ちょっと間違えた。
でも似てるからいいじゃん。
ケイスケも喜んでいるみたいだしさ。
俺のインベントリに入っていたリンゴに似た果物を上げたら喜んで食べてた。
四個出したんだけど、あっという間にペロリだぜ。
これは餌を考えないとな。
安いバナナとかあればいいんだけど。
果汁入りのゼリーでも良いって聞いたな、昔・・・。
さて次だ。
残りはあと二つ。
何を目標に探しているのかって?
マップ上に、魔石を持ってる奴を表示させてるんだ。
次は、あら
何と言うか大きくは無いんだけど、何かあれに似てるね。
ほらドラゴンじゃなくって東洋の龍。
カナヘビって知ってる?
蛇みたいに細長くって四本脚のトカゲさん。
それに似てるんだけどね。
ただ、何って言うか、鹿みたいな角が生えてるし、口元はトカゲって感じじゃないね。
正面からちょっと見では、ワニみたいで狂暴な感じ。
髭も生えてるしさ。
何か、天井画や壁画で見た龍にそっくりなんだよね。
まぁ、全長が50センチぐらいだし、鱗がちょっと細かくて蛇の鱗に近いんだけど。
で、こいつもマップの敵味方表示では緑色で、俺の足元でじゃれている。
仕方がないからこいつも従魔第三号に決定。
名前はシロ。
身体のほとんどが真っ白で、尾っぽの部分が綺麗な瑠璃色なんだぜ。
後で気が付いたけど、シロって火魔法が使えるみたい。
口開けて火を吐いてたから。
オイ、延焼しそうなものがあるところではやたら目ったら火を吐くなって、注意はしといたけど、ちゃんと伝わってるかねぇ。
で、次が鳥型の魔物だった。
多分ノスリだと思うのだけれど自信は無い。
猛禽類でネズミやモグラ、カエルを餌にしているはず。
まぁ、益鳥の部類だろうね。
体長は40センチから50センチぐらいの筈だけど、こいつはちょっと小さめで、ポッポちゃんとどっこいどっこいだ。
色は目立たない褐色。
鋭い目とくちばしを持っている。
近づくとそいつがまっすぐに俺の方に飛んできたよ。
攻撃しているわけではなさそうなので、じっとしていたらふわっと俺の左肩に留まった。
うん、俺の従魔第四号だね。
名前はマロン、シロと同じで色から連想した。
日本語じゃなくってフランス語だけどね。
後は魔石を持っている魔物じみた奴はいないし、危険動物は居ないと思う。
まぁ、庭がほぼジャングル状態だから、毒虫とかが居る可能性はあるよね。
ジャックとフレデリカに言って、使用人や作業員には十分注意するように言っておいてもらおう。
一応庭先の巡回を一通り終えて建物に行くと、ジャックとフレデリカが目を丸くしている。
ん?あ、そうか。
従魔が四匹ついて来ているんだ。
ポッポちゃん、ケイスケ、シロは、俺の後から地べたを歩いている。
マロンは俺の左肩が定位置のようだ。
四匹が俺の従魔になったと説明すると二度吃驚していたね。
鳥はともかく、虫やトカゲ?が従魔になるケースは珍しいらしいし、フレデリカがマロン以外の従魔の種類を知らないと言っていた。
御年百歳を超える独身エルフが知らないんだから、どうやらポッポちゃん、ケイスケ、シロは希少種らしい。
一応屋敷で放し飼いにすることにした。
屋敷に入るモノには予めこいつらに危害を加えないよう注意喚起をすることになった。
いずれは、俺の領地かベルゼルト地方に連れて行こうと思っている。
都市部でペットにするには敷地が狭すぎて(俺の屋敷は結構広いけれど)可哀そうだもんね。
あれ?
俺ってペットに鑑定かけてないよね。
なんでだろう?
何となく安全と知っているから確認もしなかったけど・・・。
まぁ、別に不都合はなさそうだから、いいだろう。
そのうちに確認することにしよう。
因みに俺の領地は、取り敢えず王宮差し回しの代官が切り盛りしているので問題ないが、半年程度の間に引き継ぎを終えなければならないらしい。
従って領地を任せられる文官も必要なのだが、それも宰相の方で三男坊辺りの冷や飯食いの中から優秀な者を数名推薦してくれるらしい。
屋敷の方は仮住まいの整備も終わり、俺や他の使用人たちも仮住まいに移ることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます