第四章 伯爵になってはみたものの
4-1 取り敢えず準備? その一
◇◇◇◇
領地のことはともかくとして、俺は全くの貴族初心者だからね、とにもかくにも色々と貴族や社交界のしきたりを教えて貰うために、舞踏会の翌日から後見役となったマクレナン侯爵の家宰ディケンズから色々指南を受けている最中なのです。
そのディケンズからは、やはり伯爵に相応しき屋敷の入手が一番の難題と言われた。
どうも入手可能な伯爵クラスの屋敷が王都では不足しているらしい。
三年前に大公家の次男が伯爵位を賜った際に、相応の敷地が無く、止むを得ず子爵クラスでも大きめの屋敷を入手したとのことだった。
俺が旧ダンケルガー辺境伯邸を入手済みであるものの、屋敷が未だ未整備状態であることを説明すると、随分と驚かれたが、「そうであるなれば何はともあれ、家宰とメイド長を急ぎ雇いなされませ。」と言われた。
そのほかに必要な人手としては、王都の滞在中の警護を任せる騎士、更には移動のための馬車、当然馬丁や庭師も必要なのだが、家宰やメイド長が決まるとその人脈で他の執事、メイド、馬丁、庭師それにコックなども集められると言う。
騎士は、マクレナン侯爵の伝手で、貴族の三男坊、四男坊辺りを紹介してもらい、これも面接で決めるのだそうだ。
この辺りはまだ先になっても良いが、少なくとも屋敷で開催するお披露目までには騎士を確保しておく必要があるようだ。
因みに伯爵の場合、慣例上、王都で抱える騎士は30名以上を用意する必要があるほか、領地に控えておく領軍若しくは騎士団は総勢で最低でも五百名以上が必要とされるらしい。
無論、騎士等は子飼いになる中心人物であるから、別途俺自身が知人若しくは冒険者等の腕利きから指名で雇っても構わないそうだ。
一方それ以外の用人は王都で家宰及びメイド長の他に最低でも16名、叶うならその倍以上の人員を雇うことがノブレス・オブリージュとして望まれることらしい。
当然に領地にも同程度の本宅と共に使用人が必要なのは言うまでも無く、通常領地の方が人数は多いのだが、王都にある別邸には優秀な人物を置くことが望ましいそうだ。
基本的に王都では貴族社会での交流が頻繁に求められることから、特に家宰やメイド長は駆け引きに秀でた者で尚且つ情報収集に長けた者でなければ務まらないのだそうな。
フレゴルドの場合のように王都の口入屋から借金奴隷を選ぶ例も無いわけではないそうだが、当たり外れが大きいので、堅実なのは執事・メイドギルドで募集をかけ、面接を行って採用を決めるが宜しきかとと勧められた。
で、まぁ、取り敢えず騎士の方は後回しにして、俺は、執事・メイドギルドの受付に来たのだが、すぐにギルドマスターの元へと案内された。
ギルドマスター曰く、既に俺が伯爵位を賜ったことはこのギルド関係者に知れ渡っており、現時点でも募集があればすぐにでも馳せ参じるという手合いが多数いるのだそうだ。
今回は准男爵から、二つの勲章を授与されて一気に伯爵にまで陞爵した王都の英雄ということで、執事・メイドギルドでも手ぐすね引いて待ち構えていたようだ。
ギルドとしてもそうした人物の元へ生半可な人物を送り込むわけには行かないので、事前にギルド内で
何か随分と手回しがいいので、これが普通なのかと尋ねると、普通であって普通ではないという。
無論陞爵その他による需要の情報はその都度ギルドで入手すべく努めているのだが、往々にして初めての家宰やメイド長が必要となる貴族の場合はそのほとんどが男爵に限られる。
男爵から子爵、子爵から伯爵と上位に陞爵する場合はあっても、既にそれまでの家宰やメイド長が持ち上がりでそのまま成りあがることが多いため、次点の執事クラスやメイド等を用意すれば足り、むしろそうした場合には新人の方が喜ばれやすいらしい。
まぁ、下手に別の家風に染まった者よりも無垢のままが良いと言うところか。
で、俺の場合は全くの貴族一年生だからして、いきなり練達の家宰とメイド長が必要とされるわけで、このギルドでもここ30年来無かった事案だそうだ。
現状で練達の人材がいないわけではなく、むしろ、このギルドでは有能な人材が余っているらしいのである。
余っている理由は、有能な人材程主を選ぶということと、雇用の賃金が相応に高いことが上げられるらしい。
借金奴隷ほどの金は必要としないのだが、どうも年俸で白輪金貨7、8枚程度の賃金は必要であるらしい。
この賃金惜しさに有能な家宰なりメイド長なりを手放す貴族も最近は多いのだそうだ。
或いは貨幣経済の進展に伴う商人の台頭と相まって、貴族自体が経済的に困窮し始めているのかもしれない。
また、これらの者達は練達故に決して若くはないが、だからこそ仕える先にはこだわる人物が多いようだ。
そうして、俺の案件では何故かこぞって家宰に或いはメイド長になりたいという者が多かったようだ。
俺はギルドマスターに聞いてみた。
「その家宰やメイド長になりたがっている人たちは、私と言う人物については、何も知らないのでは?」
ニヤリと笑いながらギルドマスターが言った。
「我々のギルドの情報網を舐めてはいけませぬ。
我々は人とのつながりを非常に大事にしております。
ですから貴方様に関する情報であれば膨大な数を既に集めております。
フレゴルドの貴方様所有の屋敷を任されている執事とメイド二人もさることながら、王宮や近衛騎士団での評判、冒険者ギルド、商業ギルド、錬金術・薬師ギルド、先日訪問された王太后殿下のお住まいであるワイオブール離宮、更にはバイフェルン伯爵邸での立ち居振る舞いなどは秘密情報として種々伝わっており、家宰やメイド長を望む者はそれらの情報をもとにして貴方様と言う人物を正確に評価しておるのです。
私から見ても彼らの判断は正しいと思っております。
貴方様は、執事・メイドギルドから見ても
貴族の方々は、往々にして横柄であり、人を人として扱いません。
人族であってさえそうなのですから、亜人や獣人に至っては何をか言わんやでございます。
時に自らの使用人に対しては、品物がごとき扱いをいたします。
さりながら貴方様は違います。
半ば死にかけた借金奴隷を買い取り、治療を為し、その奉仕に見合う以上の待遇で扱われているというこの一点だけでも我らが尊敬に値する人物にございます。
あ、予め申し上げておきますが、フレゴルドの屋敷の使用人たちは口が堅く、貴方様の秘密については一切口外しておりません。
しかしながらフレゴルドの口入屋は買い入れる前の状況を熟知しております。
また、主が居らずとも誠心誠意を尽くして屋敷を守っている姿は周りの者からしっかりと見られております。
彼ら使用人の顔にこれまでにない明るさがあるのは一目瞭然。
主の影響無くしてそのようなことは起こりえません。
先ほど申し上げた様に我らの情報網は草の根の如く、広く、浅く根付いております。
それゆえに正確に物事を判断することもできるのです。」
「なるほど・・・。
私が貴方方の尊敬に足る人物かどうかは別として、貴方方が情報を十分に吟味した上で私と言う人物を評価してくれたことには感謝いたします。
で、私はどうすればよろしいのかな?」
「できれば我らギルドが選抜した各三名の者から、家宰とメイド長を選んでいただきたく存じます。
いずれの者を選ばれても、貴方様が王都の屋敷で必要な人材は、騎士様達以外、全て揃えて御覧に入れ、なおかつ、旧ダンケルガー辺境伯邸の整備も滞りなく完了させて御覧に入れます。
貴方様は、かける金額と大枠で必要なご指示をなされるだけにございます。
家宰とメイド長が間違いなく貴方様のご意思に従い執行いたします。
選ぶには面会していただくのが一番の近道。
家宰候補三名、メイド長候補三名が別室にて貴方様をお待ちしております。」
俺は別室に案内され、6人の者と面会した。
俺は、その場で6人全員に鑑定を掛けた。
家宰候補①
名前: テルガー・ヤング
年齢: 45歳
種族: ヒト族
性別: 男
職業: 執事・家宰
剣士
レベル :15
HP :12
MP :4
STR/Strength(筋力) :46
DEX/Dexterity(器用さ) :4
VIT/Vitality(丈夫さ、持久力) :4
INT/Intelligence(知性) :10
MND/Mind(精神力) :2
LUK(運) :4
AGI/Agility(敏捷性) :10
CHA/Charisma(カリスマ、魅力) :2
言語理解 :1
【スキル】
剣術 :Lv4
槍術 :LV2
棒術 :Lv2
格闘術 :Lv3
生活魔法 :Lv2
儀礼・行儀 :Lv2
整頓術 :Lv2
事務処理 :Lv2
【魔法属性】
火 :Lv1
風 :Lv1
家宰候補②
名前: ビットリー・ウィルキンズ
年齢: 44歳
種族: ヒト族
性別: 男
職業: 執事・家宰
レベル :14
HP :13
MP :3
STR/Strength(筋力) :44
DEX/Dexterity(器用さ) :4
VIT/Vitality(丈夫さ、持久力) :4
INT/Intelligence(知性) :8
MND/Mind(精神力) :3
LUK(運) :3
AGI/Agility(敏捷性) :10
CHA/Charisma(カリスマ、魅力):2
言語理解 :1
【スキル】
格闘術 :Lv1
生活魔法 :Lv2
儀礼・行儀 :Lv2
整頓術 :Lv2
事務処理 :Lv2
【魔法属性】
火 :Lv1
風 :Lv1
家宰候補③
名前: ジャック・ブレイン
年齢: 46歳
種族: ヒト族
性別: 男
職業: 執事・家宰
剣士
レベル :15
HP :15
MP :8
STR/Strength(筋力) :42
DEX/Dexterity(器用さ) :6
VIT/Vitality(丈夫さ、持久力) :5
INT/Intelligence(知性) :12
MND/Mind(精神力) :4
LUK(運) :5
AGI/Agility(敏捷性) :14
CHA/Charisma(カリスマ、魅力) :2
言語理解 :1
【スキル】
剣術 :Lv5
槍術 :LV3
棒術 :Lv3
格闘術 :Lv3
生活魔法 :Lv2
儀礼・行儀 :Lv2
整頓術 :Lv2
事務処理 :Lv2
【魔法属性】
風 :Lv1
無 :Lv2
メイド長候補①
名前: クレア・ルカナン
年齢: 42歳
種族: ヒト族
性別: 女
職業: メイド、メイド長
剣士
レベル :12
HP :14
MP :6
STR/Strength(筋力) :21
DEX/Dexterity(器用さ) :8
VIT/Vitality(丈夫さ、持久力) :4
INT/Intelligence(知性) :14
MND/Mind(精神力) :5
LUK(運) :5
AGI/Agility(敏捷性) :10
CHA/Charisma(カリスマ、魅力) :2
言語理解 :1
【スキル】
剣術 :Lv5
生活魔法 :Lv2
裁縫 :Lv2
料理 :Lv2
清掃 :Lv2
儀礼・行儀 :Lv2
【魔法属性】
風 :Lv1
水 :Lv2
メイド長候補②
名前: フレデリカ・バイデン
年齢: 124歳
種族: エルフ族
性別: 女
職業: メイド、メイド長
魔法師
レベル :52
HP :48
MP :147
STR/Strength(筋力) :42
DEX/Dexterity(器用さ) :8
VIT/Vitality(丈夫さ、持久力) :7
INT/Intelligence(知性) :16
MND/Mind(精神力) :8
LUK(運) :7
AGI/Agility(敏捷性) :18
CHA/Charisma(カリスマ、魅力) :3
言語理解 :2
【スキル】
暗殺術 :Lv5
弓術 : LV5
生活魔法 :Lv2
鑑定術 :Lv5
隠蔽術 :Lv2
隠密術 :Lv2
裁縫 :Lv3
料理 :Lv2
清掃 :Lv2
儀礼・行儀 :Lv3
【ユニークスキル】
精霊魔法
【魔法属性】
火 :Lv2
水 :Lv2
木 :Lv5
土 :Lv2
風 :Lv4
光 :Lv4
無 :Lv2
【加護】
ドリアードの加護
【称号】
エルフの家出王女
(森の巫女)【未確定】
メイド長候補③
名前: サマンサ・クレッサンス
年齢: 40歳
種族: 獣人族(猫)
性別: 女
職業: メイド・メイド長
療法士
レベル :15
HP :15
MP :24
TR/Strength(筋力) :18
EX/Dexterity(器用さ) :7
VIT/Vitality(丈夫さ、持久力) :8
INT/Intelligence(知性) :12
MND/Mind(精神力) :6
LUK(運) :6
AGI/Agility(敏捷性) :16
CHA/Charisma(カリスマ、魅力) :2
言語理解 :2
【スキル】
治癒術 :Lv4
格闘術 :Lv4
生活魔法 :Lv2
治癒魔法 :Lv3
裁縫 :Lv3
料理 :Lv3
清掃 :Lv3
儀礼・行儀 :Lv3
【魔法属性】
光 :Lv2
水 :Lv2
無 :Lv1
ウーン、なんて言ったらいいのかよくわからんが、・・・。
メイド長候補②のフレデリカさん、突っ込みどころ満載じゃないですか?
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