2-17 エンチャント

 まぁ、俺の以前の体形の話は置いといて、ドワーフさんが結構多そうな町と言うのはわかった。

 ドワーフさんの女性って男性と同じ体型だとちょっとかわいそうと思っていたら、小柄で心持ちがっしりとしては居ても可愛い女性であることがわかったよ。


 たまたま出会った武具屋の店を覗いたら、そこの店長さんがドワーフ女性だった。

 鑑定かけて分かったんだけどね。


 鑑定かけないうちは16歳ぐらいのどっかの娘さんぐらいに思ってたんだけど、実は28歳の女性とわかってビックリ。

 タマラ・ブランディングさん、職業、武具商人さんです。


 レベル28と結構高いから或いは冒険者やってた人かもしれない。

 武具で興味を引いたものはいくつかあった。


 武具にエンチャントをかけて強度を増したり、火炎などをまとわせるようなものである。

 中にはアンデッドに効く聖属性魔法だったり、ダメージ増大タイプもあった。


 何れも通常の武器よりも5割から10割程度高くなっている。

 そうしたエンチャントが切れた武具も中には在って、それが二束三文でたたき売りされていた。

 それを手に取って見ていると件のタマラさんが口を出した。


「そこの、兄ちゃん。

 そこにあるのはエンチャントが切れた古式武具だ。

 そいつはエンチャントが切れただけに普通の武具よりもむしろ使いにくいものだ。

 初心者が扱うのであればそんなものを扱わない方がいいよ。」


「御忠告、ありがとうございます。

 でも、このエンチャントの痕跡が面白いのでのぞいていました。」


「ほう、今時の子にしては珍しいじゃないか。

 古式武具のエンチャント文字や魔法陣がわかる奴はほとんどいないからね。

 兄ちゃん読めるのかい?」


「はい、何とか読めますね。」


「ふーん、読めて尚且つ上掛けするぐらいのエンチャンターだったらよかったのに。

 そうすりゃ、そこの二束三文が生まれかわるかも知れない。」


「あ、それ面白そうですね。

 エンチャンターと言うのは、錬金術とは違うんですよね?」


「ああ、エンチャンターってのは魔法師の職の一つなんだが、不遇職でねぇ。

 鍛冶屋の手伝いぐらいしか能がない。

 火力が全くないから、冒険者にはなれないんだ。

 で、儲けも出ないから余りそっちの方へ進む人がいなくなって、今ではほとんど絶滅危惧種だよ。

 だから再生できればとってもいい武具になる筈が、もうガラクタとして捨てられる。

 なまじ良いものだったからこそ鍛冶屋や武具屋でも溶かしたり、バラしたりするのは手控える代物なんだよ。

 鉄を溶かすのでさえ普通の武具とは違って、手間暇かかるからねぇ。」


 俺はそこで剣と槍と弓を購入した。

 三つで銀貨6枚にしかならない。


 それぞれ見事な彫刻などがついているし、磨き上げれば綺麗になる筈の代物だ。

 今日は宿に戻って、こいつらの復元を図ってみよう。


 明るいうちから宿に戻り、今日購入した物件に関して色々試行錯誤をやってみた。

 最初にテントだが、使えなくなった魔核の魔法陣をほんの少し改良し、大き目の新たな魔核に魔法陣を書き加えて、取り換えてみた。


 結果として大成功でうまく行ったよ。

 外見上は一人用のテントよりもわずかに大きめのテントを宿の居間に広げ、魔力を通して入り口を開くことができた。


 その中に入れば天井の高さは3mぐらいの空間であり、入り口に玄関があり、僅かに段座のある上がりかまちがあって、内部に入るとキッチン付きの12畳ほどの居間があり、一度に8人ほどが座れる応接セットが置かれていた。

 テーブルもついていることだし、食事もここでできるようだ。


 隣には、風呂トイレなどの水屋区画が在る。

 居間の奥に通路があってその両脇に4つの寝室がある。


 それらの寝室は概ね8畳ほどの部屋にクイーンサイズのダブルベッドが備えられている。

 俺が改良したのは、浴室と浴槽を広げたこと、浴室の手前に洗面所を設け、そのわきに洗濯機を置くスペースを設けたこと、トイレは蓋付きのオマルタイプだったものをウオッシュレット・トイレに改造したことだ。


 無論、試行錯誤しながらなのではあるが、やってみると意外と簡単だった。

 特に俺のパソコンに魔法陣を映しこんでから作業をすると凄くはかどった。


 俺のパソコン用プログラミング言語での考え方が、魔法陣と凄く相性が良かった所為せいでもある。

 まぁ後は、テントを広げたままでインベントリに放り込んでおけば、いつでも使える。

 洗濯機の製造は別の機会に考えることにした。


 続いて、武具屋から購入した二束三文の剣、槍、弓の三つだ。

 何れも魔法陣が消えかかるほどに古いもので、組み込まれた魔核がやはり力を失っているのだ。


 剣の場合は柄に、槍の場合は石突に、弓の場合はハンドル部分の木部に埋め込まれた魔核である。

 強固な魔法で魔核を埋め込み、それを封印している代物なので、或いは封印が解けないために魔核の取り換えが効かないのかもしれない。


 まぁ、エンチャンターの希少化と共にその技量が昔よりも下がってしまったのかもしれないな。

 俺は数種類の魔法属性を使って、簡単に埋め込みから魔核を掘り出した。


 その上で、魔核に埋め込まれたエンチャント魔法陣の中身を読んで、新たな魔核を使って複写の様に書き込むのだ。

 魔法陣が出来上がったなら、俺の魔力をつぎ込んで活性化するとともに魔核を強化する。


 魔核は普通のオークのものだから、幼女神様がくれたものに比べるとかなり見劣りがするのだが、元々あった魔力に加えて俺の魔力を魔核の限界近くまでねじ込むと、色が変わって灰色になる。

 その状態で元の場所に埋め込んでしまえば古のエンチャント武具の復活である。


 俺が知っているラノベでは魔核については属性などの適性があったように思うのだが、今はそこまで厳密でなくとも良さそうなので、取り敢えずは三つともに何とか復元をやってみたのである。

 魔核の適性の確認などは別の機会に試行錯誤してみようと思うのだ。


 魔法陣を新たな魔核に書き写しただけなので、それぞれに元々想定された能力しか発揮できないが、その解析過程で得られたものは大きく、別途に俺は改良版が作れる自信があった。

 因みに剣は火炎、槍は水又は氷、弓は矢に雷をまとわせるものだった。


 次いでもう一つの懸案である治癒魔法についても試すことにした。

 宿の裏手を散策中に空き地で見つけた錆びた鉄釘を元に、小さなメスやら針やらを製造、これで鼠を盛んにいじめるのだ。


 切り傷を作ってはヒールをかけ、刺し傷を作ってはヒールをかけ、しっぽをちょん切ってはリライズで生体復元回復をさせ、心臓を刺して一旦殺してから直ぐにリバイタルで蘇生させた。

 更には宿の庭にあった植物から毒物を作って、それを水魔法で体内に入れ、ディポイズンで毒消しを試した。


 一応全部できたから、無罪放免で鼠を放してあげたら、それこそ飛ぶように三階の俺の部屋から柱やら手摺やらを伝って隣家へ逃げて行った。

 あの分ではあの鼠は絶対にこの宿には侵入してこないと思う。


 おそらく俺の虐めで半分精神が壊れかけていた筈だ。

 俺もとんだ虐めっ子になったものだ。

 うん、これで、不動産係のハンナさんを治療する目途がついたんじゃないかと思うのだが甘いのかなぁ。


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 エンチャントってそんなに簡単にできてもいいのでしょうかね?

 でもほら、錬金術師だしぃ、魔法創造も持っているしぃ、幼女神の加護も持ってるしぃ、チートがあってなんぼでしょう。


 ただ、ネズミさん可哀そうでしたね。

 でも犬や猫なら動物愛護協会から非難が出そうですが、ネズミさんなら大丈夫かな????


 何にせよ、人妻ハンナさんを助けるための尊い犠牲だったと思うことにしましょう。

 チュウ公残酷物語の巻でした。


                 By サクラ近衛将監

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