2-10 再びの襲撃か?

 散策の合間にも、例の赤点マークの連中と、代官所の不審者をマップ上で見張っていたのだが、王女一行が、不審者たちが待ち受ける場所に近づいている。

 不審者一人ならばシレーヌ達が何とかするだろうけれど、4個の赤点マークもその周囲に配置され、徐々に近づいているようだ。


 場所は此処から直線で300m足らず、道なりに行けば500mぐらいだろうか?

 俺は、即座に駆けだした。


 シレーヌ達がそれなりに注意をしている筈だが、昨夜というか今日の未明、見かけた連中は、隠ぺい術LV1を持っている上に、スキルはほぼシレーヌに拮抗きっこうし、レベルが三つほど上である。

 仮に乱戦となった場合、シレーヌに劣る近衛騎士達では歯が立たないかもしれない。


 シレーヌが拮抗したにしても4人で同時に襲撃されたならコレット王女やザイル王子を守り抜くのは至難の業だ。

 それゆえに俺は急いだ。

 昨日のちょっとした戦闘で俺のレベルはまた上がっていた。


名前:リューマ・アグティ

種族:ヒト族

年齢:17歳(23歳)

性別:男

職業:冒険者G

   錬金術師-I〔+1〕<New>

   薬師-Ⅰ  〔+1〕<New>

レベル :26(+7)<New>

HP(生命力) :480(+200)<New>

MP(魔力) :320(+130)<New>

STR(筋力) :21(+8)<New>

DEX(器用さ) :70(+30)<New>

VIT(丈夫さ、持久力):17(+4)<New>

INT(知性) :220(+70)<New>

MND(精神力) :40(+20)<New>

LUK(運) :13(+2)<New>

AGI(敏捷性) :38(+5)<New>

CHA(カリスマ、魅力):13(+2)<New>

言語理解 :5(ホブランド統一言語ほか)

【スキル】

 剣術    :LV1

 槍術    :LV1

 棒術   :LV1

 格闘術   :LV5(+4)<New>

 弓術    :LV1

 生活魔法 :LV1

 鑑定術   :LV3(+2)<New>

 隠ぺい術 :LV6(+3)<New>

 射撃術  :LV5

 隠密術   :LV1

 マップ術 :LV2


【ユニークスキル】

 錬金術    :LV5(+3)<New>

 魔法創生 :LV3(+1)<New>

 インベントリ:LV1


【魔法属性】

 火:LV1

 水:LV2 (+1) <New>

 木:LV4 (+2) <New>

 金:LV2 (+1)<New>

 土:LV3

 風:LV4 (+1) <New>

 光:LV2 (+1)<New>

 聖:LV2 (+1) <New>

 闇:LV1

 無:LV3 (+1) <New>


【加護】

 アルノス神の加護(アップ率上昇)


【称号】

 魔弾の射手

 錬金術師期待の星<New>

 薬師期待の星<New>


 まぁ、どんな法則があるのか全然わからんけど、よう上がってますわぁ。

 それに何?


 称号にある錬金術師と薬師の期待の星って・・・。

 一体何なんだろうね?


 それはともかくステータスが上がったおかげで500mの道のりもおそらく1分足らずで踏破し、息せき切ってもいない状態。

 で、襲撃に間に合ったようだ。


 場所は市内某所の高級レストラン。

 コレット王女やザイル王子と同じ席について、二人の前に座っているのが例の不審人物。


 何やら、キンキラ金の豪華な衣装を着て二人の王族よりも偉そうにしている奴だ。

 俺は、レストランに飛び込みざま、シレーヌに向かって叫んだ。


「刺客が四人、そこの青い服を着た店員二人と、そっちの客を装った二人だ。

 あと、そこのキンキラ金のオッサンにも注意しろ。

 そいつが刺客と接触した可能性が高い。」


 俺の声で敏感に反応した近衛騎士たちが一斉に抜刀して、王女と王子の周囲を守り、前の席のオッサンも当然のように遠ざけられた。

 近衛騎士の動きに呼応するように一斉に動き出した刺客集団だが、いきなりの暴露に驚いてしまって反応が若干遅かった。


 その間に、俺は暗器を取り出した店員風の男二人を相手にして、一瞬で無力化した。

 無属性魔法で空間を支配し、奴らの周囲の酸素を奪っただけなんだけどね。


 一瞬で彼らは意識を失ったよ。

 無酸素状態の場所に入ると人は気づかないうちに一瞬で意識を刈り取られ、放置されるとそのままあの世行きだ。


 少なくとも5分以内に人工呼吸をさせて肺に酸素を取り入れないとアウトだ。

 おそらく周囲の者には俺が手を向けただけで賊が倒れたように見えただろう。


 そうして、二人の客を装った賊は暗器で王女と王子に襲撃を仕掛けたが、周囲を囲む近衛騎士に跳ね返されていた。

 その隙に乗じてシレーヌが、うまく立ち回って格上の刺客一人に深手を負わせた。


 そうしてもう一人は俺が接近して素手で殴り倒した。

 左程力はいれていないよ。


 フックを相手の長めのあごにぶちかましただけ。

 チン(下あご)は弱点の一つ、こいつをフックでかすめるように鋭く殴ると、激しく脳が揺さぶられ脳震盪のうしんとうを起こして倒れるんだ。


 次いで、残った深手を負った一人が、諦めて降伏すればいいのに抵抗するから近衛騎士の連中になます切りにされていた。

 近衛騎士の一人が止めを刺したのを確認して、俺は、近くにあった籐製とうせい椅子を木魔法で解体し、その素材を利用して三人の意識を失った者達をがんじがらめに拘束した。


 何を思ったか、キンキラ金の男が剣を抜いて、刺客の一人を刺し殺そうとした。

 俺は、咄嗟に剣を抜いて、その剣を弾き飛ばした。


 途端にキンキラ金の男が騒ぎ立てた。


「そ奴らは、王族を狙った重罪人、一人として生かしてはおけない。

 何故に邪魔をする?」


「ご高説ごもっとも。

 だが制圧され、手出しできない者を殺すなれば、背後関係を調べてからでも遅くはないでしょう。

 それとも、それが拙いと仰せでしょうか?」


 男はぶすっとしたが、更に言った。


「なれば我らで調べる。

 代官所の警護の者達を使ってこ奴らを代官所に連れて参る。」


「うん、それもお待ちください。

 今、貴方が殺そうとしたこの男を蘇生させます。

 そいつの話を聞いてからでも遅くはないでしょう。」


 キンキラ金の男は、それを聞いて真っ青になっていた。

 その様子を見てシレーヌが、すっとその男の前に出て俺や刺客たちの壁になった。


「グルーアント殿、午前中の監査の折の何かと不自然な邪魔立てを含め、貴方には疑わしい点が多々あります。

 ここは、そのままおとなしくしていただきたい。

 さもなくば、我ら近衛騎士、武威を持って制圧することになる。」


 グルーアントとは、確かこの王領の代官だったはず。

 やっぱり上の者が関わっていたかと思う俺だった。


 代官は分が悪いと思ったか、そのまま剣を収めた。

 そうしてそのまま、レストランの出口に向かったが、近衛騎士の一人に遮られた。


「恐れ入るが、そこの空いている椅子にお座りください。」


 代官はぶすっとしながらも、その椅子に座った。

 その両脇に近衛騎士二人で固められては何もできないだろう。


 俺は、代官が殺そうとした男の酸欠を解いた。

 その上で、男の胸をドンと軽く叩くと、男は息を吹き返した。


 もう一人、酸欠状態の男も同じように蘇生した。

 三分程度なので多分後遺症も残らないだろうと思う。


 もう一人は単に脳震盪を起こしているだけだからいずれ目を覚ますだろう。

 三人とも失禁しているから、周囲には若干アンモニア臭が漂っている。


 レストランの小窓を開け、風魔法でできるだけアンモニアを排気するように換気しながら尋問することにした。

 臭いのは嫌だもんね。


 代官が殺そうとした男は鑑定をかけて確認した情報では、カリメラドという男で闇ギルド組織の中では幹部クラスの男である。

 代官が真っ先に消そうとしたこの男だけが代官と接触していた可能性がある。


「おい、お前、誰から頼まれた?」


 男は、俺をにらみつけるようにしながらも口をつぐんでいた。


「ほう、義理堅いな。

 一応依頼主の秘密は守るってか?

 だが、そこに座っているキンキラ金のオッサンは、真っ先に意識のないお前を刺し殺そうとしていたぞ。」


 男は驚愕の表情を浮かべ、代官の方を見やる。

 代官はそっぽを向いた。

 それでも男は黙っていた。


「それでも秘匿するか?

 頑固だな。

 じゃぁ、取引だ。

 死んだ一人を含め、お前ら四人は、未遂とは言え王族暗殺を企んだ。

 どうやっても死罪は免れないだろう。

 で、昨日宿に侵入した内の三人が4階から落ちて怪我を負っている筈だが、そいつらの罪は一等減じてやろう。

 単なる住居侵入に過ぎないからな。

 それで背後関係を語ってくれないか?」


 俺は、怪我をした三人のうち一人が同じ姓の男であることを知っている。

 年齢は17歳、カリメラドの息子であってもおかしくはない年齢だ。


 だから取引を持ち掛けた。

 だが、俺がそう言うと、途端に代官が金切り声を上げた。


「お前、何を勝手なことを言っている。

 そんなことが許されるはずがない。

 王族暗殺を企んだものはことごとく死罪だ。」


「おう、代官様が偉い勢いでそうおっしゃっているが、・・・。

 王女殿下並びに王子殿下はどう思われますか?

 このまま実行犯だけ罰して、背後の巨悪をのさばらせますか?

 それとも、先ほど俺が言ったように、今日未明の襲撃で怪我をした三人の罪を軽くしていただけますか?」


 即座に王女が反応した。


「王族の名に懸けて、そ奴が背後関係を正直に言うならば、怪我をした賊共の罪は住居侵入の罪だけとすることを約束しようぞ。」


 それを聞いてカリメラドは目を見開いた。

 そうして目を伏せ、少しして顔を上げた。


「王女の約束だ。

 怪我人の罪一等を減じてくれることを信じて、全てを話そう。

 此度の暗殺は、そこの代官グルーアントから依頼されたものだ。

 王女と王子を暗殺したならば白金貨二枚を報酬として出すという約束で、手付金白輪金貨二枚を受け取っている。

 契約書もある。

 何故に王女や王子を殺害せねばならぬか、その理由は聞いていない。

 我らの仕事は一々理由を確認してはいないからな。

 最初は、王女一行が通る時間を見計らって、魔物を呼び寄せる秘香でオークの集団を当てさせた。

 これならば、単なる魔物襲撃の被害として納められるからな。

 だが、生憎と余計な邪魔立てが入って失敗した。

 物見の話ではあと一歩だったそうなのだが・・・・。

 王女殿下は当初の計画をすり抜けて、フレゴルドの街に入ってしまった。

 何としても殺して欲しいと言う代官の願いで、場合によっては我らを人の目に晒す覚悟もして出陣したのが今日未明の襲撃だ。

 代官は報酬を倍額にしてきたのでな。

 だがそれも失敗した。

 止むを得ず、代官の手引きに従って、必殺の襲撃のつもりでお膳立てしたのがこのレストランだ。

 レストランの店主に代官から話を付け、特別の警護役として俺ともう一人が店員の振りをし、更に二人が客を装った。

 店員が客に近づいても何ら不思議はないから、隙を見て我ら二人の店員が王女と王子を殺害、即座に逃亡するが、その際に店主や事情を知った店の者達は殺害予定だった。

 警護の近衛騎士の力量からすれば、危なげなく遂行できるはずだったが、伏兵のお前さんが現れ、全て台無しにされたわけだ。

 これが、俺の知っているすべてだ。

 怪我を負った者の命の保証については、お前さんに任せるよ。

 少なくともそこにいる代官よりは信用できそうだ。」


 俺は頷いた。


「で、代官殿、何か申し開きできるかな。

 契約書もあるそうだから、余り余計な手間をかけないで欲しいが、王族暗殺の容疑を認めるかい?」


「これは俺様を陥れようとする誰かの陰謀じゃ。

 俺は知らぬ。

 契約なんぞ結んだ覚えもない。」


「なるほど、あくまでしらを切りますか?

 じゃぁ、カリメラドさん、契約書のありかを教えてもらえますか?

 代官所の者は信用できないので俺と近衛騎士で行きますから。」


 カリメラドは驚いたように俺を見上げた。


「俺の名は言ってはいないはずだが・・・。

 まぁ・・・、いい。

 契約書の在処ありかは俺達のねぐらだ。

 ダーレ街の戸番32、その二階の南側の部屋の押し入れに金庫がある。

 木魔法を知らないと金庫は開けられんが、・・・。

 できるか?」


 俺は頷いて請け負った。


「ああ、できる。」


「そのねぐらには、怪我を負った三人がいる。

 あいつらは同じ屋敷の一階の別の部屋に寝かせている。

 奥まった部屋だ。

 とても動けるような状態ではないんだが、お前らが踏み込むと多分抵抗しようとするだろう。

 まぁ、お前ならば、一瞬で抵抗力を奪えるだろう。

 済まんがよろしく頼む。」


 俺は頷いた。

 代官は捕縛され、刺客たち三人と一緒に馬車に乗って代官所へ送られた。


 近衛騎士二人が傍についている。

 王女と王子も、馬車に乗って代官所に向い、その警護にはシレーヌ他三名の近衛騎士がついた。


 俺ともう一人の近衛騎士サレナは、徒歩で、刺客たちのねぐらに向かった。

 ねぐらではひと騒動があったものの、怪我人達がさしたる抵抗もできるわけが無く、すぐに無力化し、無事に二階にあった金庫の中に契約書を見つけた。


 余罪となるような書類も多数あったので、一応、金庫ごと保管して、持ち帰った。

 怪我を負った者達は、代官所の手配で後刻代官所に運ばれ、治癒魔法を使えるパメラの手で相応の治療がなされた。

 

 代官が自らサインした契約書を見せるとさすがに代官も観念して全てを語り出した。

 代官はこのフレゴルドに着任してすぐに、公金横領を始めたようで、最初はその額も大した額ではなかった。


 しかしながら年数が経つにつれ、その額が増え、会計担当の部下たちの首を挿げ替えてまで、仲間に引き入れ、かなり多額の横領をするようになってしまった。

 一応見かけ上は偽装しているが精査されれば簡単に見破られるほどの金額にまでなっていたのである。


 横領の監査は数年刻みで行われるが、往々にして監査役が買収されやすい役人が派遣される場合が少なくないために、これまで露見されずに済んだのである

 だが、正義感が強いと噂のある第二王女が監査役として来ることが伝えられ、止むを得ず王族暗殺の愚挙に出たのだった。


 しかも闇ギルドの存在で危うく成功しそうになったわけだが、俺という邪魔者が介在して全てが失敗したわけである。

 代官の失脚に伴って、かなり多くの代官所の手の者が共犯の嫌疑をかけられ、王都からはそれらの捜査のために10人規模の調査団が別途派遣されてくるようだ。


 このために当初は三日ほどの滞在予定だった王女たち一行のフレゴルド滞在が十日間ほどまでに延ばされたようだ。

 何れにしろ、俺の役割は、代官たちの捕縛で終了し、俺は宿に戻った。


 因みにその日の俺の昼飯は騒ぎの所為で抜きになってしまった。

 寝る前に自分のステータスを確認。


名前:リューマ・アグティ

種族:ヒト族

年齢:17歳(23歳)

性別:男

職業:冒険者G

錬金術師-I

薬師-I

レベル :15《28》(+2)<New>

HP(生命力) :500(+20)<New>

MP(魔力) :350(+30)<New>

STR(筋力) :35(+14)<New>

DEX(器用さ) :74(+4)<New>

VIT(丈夫さ、持久力):37(+20)<New>

INT(知性) :240(+20)<New>

MND(精神力) :50(+10)<New>

LUK(運) :14(+1)<New>

AGI(敏捷性) :43(+5)<New>

CHA(カリスマ、魅力):14(+1)<New>

言語理解 :5(ホブランド統一言語ほか)

【スキル】

 剣術    :LV2

 槍術    :LV1

 棒術    :LV1

 格闘術   :LV6(+1)<New>

 弓術     :LV1

 生活魔法  :LV1

 鑑定術    :LV6(+1)<New>

 隠ぺい術  :LV10

 射撃術    :LV5

 隠密術    :LV1

 マップ術  :LV3


【ユニークスキル】

 錬金術   :LV5

 魔法創生 :LV4

 インベントリ:LV1


【魔法属性】

 火 :LV3

 水 :LV2

 木 :LV5 (+1)<New>

 金 :LV2

 土 :LV3

 風 :LV5 (+1)<New>

 光 :LV1

 聖 :LV2

 闇 :LV1

 無 :LV4 (+1)<New>


【加護】

 アルノス神の加護(アップ率上昇)


【称号】

 魔弾の射手

 錬金術師期待の星

 薬師期待の星


 ちょっとだけ一生懸命走ったし、格闘と酸欠魔法使ったしね。

 おニューがやっぱり結構できてましたわ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 関わりたくないと言いつつもリューマは根っからのお人よし。

 お姫さん一行を助けるのはこれで三度目ですね。

 これは今後とも関わるしかないのでしょうねぇ。

By サクラ近衛将監

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