2-3 女騎士とお姫様

 馬車に近づくと、簡易アーマーの騎士が一人近づいてきた。

 立ち止まってかぶっていた革製の兜を脱ぐと驚いたことに女だった。


 確かに胸部アーマーの一部が少し盛り上がっていたからその兆しはあったのだが、中身は金髪の美女だった。

 十代後半から精々20代前半までの若い女性だろうと思うのだが、正直なところ外人さんの年齢はよくわからない。


 身長は175センチの俺よりも数センチ低いぐらいに見えるから、172センチ若しくはそれよりわずかに低いかな?

 念のため、鑑定をかけてみると出ちゃいましたよ。

 女騎士さんのステータスが。


名前:シレーヌ・バイフェルン

種族:ヒト族

年齢:19歳

性別:女

職業:近衛騎士(分隊長)

レベル:25

HP(生命力)     :46

MP(魔力)      :18

STR(筋力)     :28

DEX(器用さ)    :11

VIT(丈夫さ、持久力) :24

INT(知性)      :12

MND(精神力)    :8

LUV(運)      :5

AGV(敏捷)     :24

CHA(カリスマ、魅力):4

言語理解:ホブランド統一言語


【スキル】

 剣術 :LV4

 槍術 :LV2

 棒術 :LV2

 斧術 :LV3

 格闘術 :LV3

 弓術 :LV2

 生活魔法:LV1


【ユニークスキル】

 狂戦士 :LV3


【属性】

 火:LV2


【加護】

 なし


【称号】

 ジェスタの戦姫


 そうして総勢で7人もいた騎士さん達は、全員若い女性でした。

『何だ?これ?』と思うのはおかしいのかな?


 ひょっとして女ばかりの国?

 それはまた何気にウハウハかもしれないけれど困った一面もありそうな。


 件の女騎士さんが俺に向かって言いました。


あやういところをご助勢いただき誠にかたじけない。

 私は、ジェスタ国近衛騎士の分隊長をしているシレーヌ・バイフェルンという。

 失礼ながら貴殿きでんの御名と、先ほどオークどもを打倒した際に使われた不思議な魔法について是非お伺いしたいのだが。」



 相手の言う言葉がしっかりわかったのも驚きなのだが、いやいや、これはいきなり直球での質問が来ましたねぇ。

 それと、やっぱり豚ゴリラは、オークって言うんだネ。


 ラノベで読んでいた姿形に何となく似ていたので、そうじゃないかなっと思ってはいたんだけれど。

 どうしようか?


 ラノベじゃ、個人のスキルや魔法は秘匿できるはず。

 うん、ここはそれで押し切ろう。


「私の名は、リューマ・アグティと言います。

 旅をしている者ですが、先ほど使った魔法については私のスキルの一つであり、師匠からは他人には明かすなときつく言われておりますので、何卒なにとぞ説明の方はご勘弁を願います。」


「なるほど、確かに個人のスキルは秘匿されるべきもの、これまで見たことも聞いたことも無い魔法であったので驚いたのだが、私がそのことを尋ねたのが誤りであった。

 どうか私の非礼をお許し願いたい。」


 それにしてもこのシレーヌさん、きりっとしたきつめの表情ながらなかなかの美人ですよ。

 びる姿も中々のイケメン。


 ン?

 女性にイケメンは使わないのかな?


 「イケてる面」の意味なら使えるけれど、「イケてるMen」なら確かに使えないよな。

 格好いいとか容姿が優れているって意味ならイイ女に使ってもいいのに・・・。


 まぁ、俗語に理屈言っても仕方ないか。

 じゃぁ、女ならイケウーメン?それともイケじょかな?


 分隊長をやっているぐらいだから、多分格闘戦に強いのだろうけれど、女性騎士って男性騎士と比べてどうなんだろうね?

 それに称号に「ジェスタの戦姫」がついている上に、ユニークスキルに狂戦士(バーサーカー?又はベルセルク?)がついているのは、ちょっと怖いよね。


 男性騎士も混じっての分隊長ならば、こちらの世界での大枠の強さがわかるかも知れないが、他の人と比べないと今のところ判断がつかないな。


 そんなこんなと色々としょうもないことを思案しているうちに、馬車の扉が開いて、若い女性と少年が出て来た。

 うん、女性ばかりの国ではなさそうだ・・・(-_-)。


 変なところで安堵あんどする俺だった。

 馬車を牽いていた六本脚のお馬さんはかなり酷い怪我を負っているようだし、騎士たちが乗っていた馬も半数ほどは傷を負っている。


 俺とシレーヌさんが馬車の方に近づき、シレーヌさんが片膝つきながら馬車から降りてきた人物に紹介してくれた。

 勿論、俺もシレーヌさんにならって片膝ついて頭を下げましたとも。


「リューマ殿、こちらはジェスタ国第二王女であらせられるコレット殿下、そうして第二王子であらせられるザイル殿下にございます。

 コレット王女、ザイル王子。

 こちらは我らの危いところに駆けつけ、オークども多数を魔法で撃ち倒してくれた旅人のリューマ・アグティ殿にございます。

 お二方からもどうぞこの者にお言葉を賜りますようお願い申し上げます。」


 御姫様も中々の美形ですよ。

 後二、三年すればきっといい女になれるでしょう。


 王子様はイケメンぽいけれど今のところは未確定かな?

 御姫様が微笑みながら声をかけてくれました。


「リューマ殿とやら、我らの危難を救ってくれてありがとう。

 あの凶暴なオークの頭が、目の前で次々と血しぶきを上げて吹き飛ぶのが何度か見えました。

 驚きと同時に、とっても嬉しくて喝采かっさいを上げたかったのですよ。

 特にわらわ達の近衛騎士たちがとても危い状況でしたから。」


「私としては自分のできることをしたまでのことにございますが、王女殿下から過分なるお言葉を賜り、恐悦至極きょうえつしごくにございます。」


 舌を噛みそうな難し気な言葉がきちんと言えたぜ。

 誉めて、誉めて。

 俺って何気に優秀なのかな?

 

 その後は馬車のき馬を替え、騎士たちの半数は徒歩、重傷者二名は馬車の御者台に座って、最寄りの街であるフレゴルドに向かうことになりました。

 お姫様からは馬車に乗ってくださいと誘われたが、そこは丁重にお断りして騎士たちと共に徒歩で歩きましたよ。やっぱり。


 全部で九頭いたお馬さんも、脚を痛めて使えない馬四頭は結局安楽死させてました。

 現実って厳しいんだね。


 て、言うか、重傷者には治癒ちゆの魔法を使っていたのに、なんでお馬さんには使わないのだろうと思っていたら、分隊でたった一人のヒーラーである女騎士さんの魔力が枯渇こかつしそうだったので人だけに限定したのだそうです。

 何でもオークとの戦闘中にも仲間の騎士にヒールをかけまくっていたとのこと。

 それで枯渇なら止むを得ないよね。

 

 俺も、そのうち治癒魔法を覚えておくことにしよう。

 何かあったら困るもんね。


 あそこで魔法創造を試したりすると何となくやらかしそうなので止めたのだが、やっぱり人に慣れている生き物を殺さなければならないって可哀そうだよね。

 騎士さん達も涙目で安楽死させてましたよ。


 豚ゴリラであるオークをぶち殺すのには何のためらいも無かったけれどね。

 やっぱ、ペットや家畜と、害獣である魔獣や魔物は扱いが違うよね。


 襲撃現場から町まで徒歩で1時間弱ほどでした。

 王女様と王子様は、王の代理として定期的な査察のために王都ジェスゴルドからフレゴルドへ向かう途中だったとのこと。


 本来この街道は安全なはずなのに、総数で23匹ものオークに襲われてしまったのは極めて異常な事らしい。

 オークの肉とやらはラノベでは美味しいとされているのだが、シレーヌさんに聞いてみると、やはり肉としては上等らしいが、今は旅を急がねばならないので、肉を回収している余裕が無いとのこと。


 特にシレーヌさんが心配しているのは、これだけ集団のオークが街道に出て来たということはオークの巣がこの近くにある可能性もあるかららしい。

 オークが巣を作って繁殖し始めるとオークのボスのレベルが上がってジェネラルや、キングが生まれる可能性もあるようだ。


 ジェネラルやキングが率いる百から数百匹の集団は災害級であり、場合によっては大規模な軍隊を出動させる必要があるようだ。

 その対策のためにも、彼女は町への到着を早めたかったらしい。


 徒歩の警護付きの馬車ながらも何とか無事にフレゴルドの街に到着した姫様たちの一行は、直ちにフレゴルドの代官所に向かった。

 フレゴルドは王領の一部であり、王の代わりに代官が治めているらしい。


 一方で、俺の方は町の門衛に教えられた冒険者ギルドに向かっている。

 尤も、俺が落ち着いたら代官所の方へ早い時期に訪問するという約束を姫様とシレーヌさんの両方にさせられていた。


 王族や貴族の慣行もあって、やっぱり、危難を救われて何のご褒美も無しというわけには行かない様だ。

 姫さん達は少なくとも三日ほどはこの街に滞在する予定らしい。

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