第10話◆別離(わかれ)
「なぁ、〈シゲル〉。残念だよなぁ~💧
もっと早くに『転校』してくりゃあ、オレ達と一緒に《修学旅行》に行けたのによぉ💧」
メジャーリーグの帽子を被り〈サトル〉よりも頭一つ分大きい《少年》が、
白い《給食袋》を振り回しながら言うと、
「・・・原田はバカね💧
木崎クンは『帰国子女』で、しかも《世界中》を旅してたのよ?
《京都》や《大阪》なんかに行っても楽しい訳ナイじゃない‼️」
綺麗な黒髪を《ツインテール》にした気の強そうな《少女》は、更に続けて
「それにっ‼️木崎クンに〈シゲル〉って辞めてくんない⁉️『センス』無いし💢
だからアンタは《女子》から相手にされないのよ?判ってるぅ~?」
そう言って、手にしている《カバン》を軽く〈原田〉と呼んだ《少年》にぶつけ、
〈サトル〉に対しては可愛く微笑んで見せる。
「・・・木崎クンも、人が良すぎだよ?💧
どうして『こんな奴ら』の付けた《アダ名》を甘んじて受けて、ヘラヘラしてんの⁉️💧
《ジャニーズ》ばりにイケてるんだから、
コイツらなんか『鼻で』笑っちゃえばいいのよっ‼️💢」
案外可愛い顔をして、結構キツい(笑)。
その『雰囲気』に〈サトル〉は〈ルイス〉を思い出した。
「―・・・いや💧・・・別に『鼻で』笑わなくても・・・💧それに、ボクはそんなに気にしてる訳じゃあ―・・・」
「だぁ~よなぁ⁉️」
〈サトル〉の言葉に間髪を入れず、
〈原田〉は『どや顔(笑)』で〈サトル〉の肩を抱くと《ツインテール》の《少女》に、
「大体。三宅らお前達、《女子》が勝手にキャーキャー騒いでるだけで、
〈シゲル〉はそんな『スカした』嫌な野郎じゃねぇ~んだよぉ~‼️」
と、勝ち誇ったかのように告げるも、
「・・・木崎クン💧
《中学》上がる前に《友達》、ちゃんと選んどいた方がいいよ?」
その《少女》はサラッと〈原田〉をガン無視(笑)し〈サトル〉にそう言葉を残すと・・・『いつもの角』で別れた。
「・・・何なんだよ‼️アイツ💢
黙ってりゃあ結構可愛いクセに酷くね⁉️💧」
《少女》の後ろ姿を見送りながら、グチる〈原田〉に「・・・そうだね・・・💧」と乗っかった〈サトル〉に目を丸くすると、
「・・・お前・・・ああいうの《タイプ》?💧」
そう何気に『小声(笑)』で囁かれ、
〈サトル〉は思わず取り繕うようなぎこちない微笑(えみ)を返す。
そんな答えに窮する様相に、
〈原田〉は嬉しそうに〈サトル〉の背中をバンバンと叩くと、
「お前ってホント‼️《いいヤツ》だよなぁ❤️」
と、ご機嫌で笑った。
《少女》と別れた十字路で〈原田〉とも別れるが、その〈原田〉は《少女》とは反対側の角を曲がり帰って行く。
・・・そして〈サトル〉は二人をそれぞれに見送った後に、そのまま直進して帰るのだ。
《日本》に帰って来て、
通学路が殆ど同じのあの二人と一番最初に仲良くなった。
しかし〈原田〉曰く、
それまで《少女》とは行き帰りで一緒に通った事も無かったらしく、
「・・・アイツ、絶対お前に『気がある』んだと思うわ(笑)」
と、つい先日聞かされた。
―・・・けれど、
〈サトル〉はそう言われてもピンと来ないのが正直な感想だった。
向こうでは〈ルイス〉に積極的に『アピール』されていても、
ひたすら『困惑(笑)』するだけだったのだから《レディ》を扱う術だけは・・・『至難の技』だと自覚する。
そう思う程、
《前世(過去)》を振り返ってみても『恋愛』をした記憶が見当たらなかった・・・。
『・・・ボクはどんな《女性》が好きなのかなぁ―・・・』
そんなコトを考えている内に家に着く。
セキュリティ万全のいかにも『高級』な《高層マンション》の27階が〈サトル〉の《新居》だ。
《都心》から近く、
『最上階』になる33階には《プール》や《スパ》を備えた住民専用の《ジム》の他に《バー》も併設されている。
頻繁に〈亮〉が帰って来る訳でも無いのに〈サトル〉が一人で暮らすには『贅沢』だが
24時間有人管理の『安全性』と――・・・
「きっと気に入るゾ🎵」
と、《父》が嬉しそうに言った27階の部屋(リビング)の、壁一面の《窓ガラス》からの『眺望』は確かに素晴らしいモノだった。
「・・・オレは常に《世界》の何処かの海に居る。海は必ず繋がってるんだ。
・・・これならお前も淋しくないだろ?」
そう言った景色の向こうには《東京湾》が
見えた―・・・。
「・・・ただいま、亮」
《部屋》に入れば、必ず〈サトル〉はその景色に声を掛けるのが『日課』になっている。
勿論、今日もそう声を掛けた後に《留守番電話》のランプが点滅しているのに気が付いた。
『亮からだっ‼️』
急いでその《ボタン》を押すと『用件』は一件のみ。
懐かしい声が聞こえて来た。
「・・・元気か?
・・・次の仕事が終わったら『帰る』」
相変わらず『ぶっきらぼう』で言葉数の少なさに、思わず微笑(えみ)が溢れる。
でも、それが嬉しくて〈サトル〉は気の済むまで何度も繰り返しては・・・その声を聞いていた――・・・。
「―・・・何か『いいコト』でもあったの?」
朝、登校して挨拶した早々に《少女》に訊ねられ〈サトル〉は素直に、はにかむ。
「うん🎵・・・りょ・・・《父さん》が、近い内に帰って来るって―・・・」
「ふうん」
そこに二人の会話を聞いていた〈原田〉が話に割り込んで来た。
「ナニ⁉️〈シゲル〉の《父ちゃん》帰って来んの⁉️・・・いつ⁉️ 」
「・・・う~ん💧そうだなぁ💧
・・・多分『三ヶ月』以内には帰って来ると思うケド―・・・」
そう答えた〈サトル〉に、
「何それ⁉️(笑)・・・未だ先のハナシじゃない‼️」
と《少女》は思わず非難めいた声を出してしまうのを〈サトル〉は気にする風でも無く
「・・・そうだね💧」と肯定して苦笑した。
そこでその話は終わったが、
〈サトル〉が離れたのを見た隙に〈原田〉は《少女》に近付き、聞こえよがしに呟いた。
「・・・お前って、つくづく『思い遣り』ねぇのな?💧」
「・・・‼️💢」
《少女》は目を三角にして〈原田〉を睨み付けたが本人は気にもせずに〈サトル〉に駆け寄り、
「なぁ🎵今度〈シゲル〉ん家、遊びに行ってもいい?」
と、いつもの調子でじゃれているのを見て《少女》は益々怒りを覚える。
『何よ‼️💢エラそうに―・・・‼️』
そう思いつつ、
〈サトル〉に対しては確かに悪かったかも知れないと、少し『後悔』した・・・。
「・・・三宅さん、どうかした?」
一時限目の《授業》が終わり、
次の《音楽》の授業の為に教室を移動する際〈サトル〉は《少女》に声を掛けた。
「・・・別に。」
そう、素っ気なく答えた後に、
「―・・・ねぇ、その『三宅さん』って呼ぶの辞めてくんない?💧
他の男子みたく〈三宅〉って『呼び捨て』にするか、《女子》みたく〈ユキ〉って《名前》呼びにするか、どっちかにしてよ。
・・・何か余所余所しくて、イヤなんだけど」
と、言った後でまた『後悔』する。
こんなコトを言いたい訳じゃない。
――・・・判ってる。
〈サトル〉に心配して貰えて嬉しいし、
本当は今朝のコトだって謝りたいのに・・・。
〈ユキ〉は自分の口から出て来た言葉に泣きそうになった。
ところが、
「・・・あぁ❗️そうか。
そうだね💧《友達》なのに余所余所しいのって、イヤだよね?💧
・・・ゴメン💧今まで気付かなくって・・・💧」
逆に〈サトル〉に謝られ〈ユキ〉はア然とした。
「・・・木崎くんって、もしかして《天然》?」
・・・コレもまた『失礼(笑)』な《言葉》には違いが無いが、
「・・・『天然』⁉️💦ボク『天然』なの・・・⁉️💧」
どうやら言われている《意味》がイマイチ判っていないらしく、
素で聞いてくる〈サトル〉に遂に笑い出してしまった。
するとすかさず、
「良かった。微笑(わら)ってくれて(笑)」
と満面の笑みを〈ユキ〉に向け、
「・・・《名前》の呼び方、どっちの方がいい?
―・・・それと。だったらボクの『呼び方』も皆みたいに〈シゲル〉って呼ぶか〈サトル〉でいいよ」
その〈サトル〉の『破壊力(笑)』に、不覚にも赤面してしまい・・・慌てて俯く。
「〈シゲル〉なんて呼べる訳ナイじゃない💦・・・私のは――・・・」
恥ずかしさに、徐々にトーンダウンしていく〈ユキ〉の声を聞き逃さないように耳を近付けて行くと、
「・・・ユキ、でいい・・・」
今にも消え去りそうな小声で言った後に続けて、
「・・・サトル・・・今朝は酷いコト言ってゴメンね――・・・」
涙声で謝った。
「なぁんだ、そんなコト気にしてたのかぁ。
・・・あんな『小さな事』で傷付かなくていいよ💦・・・ボクは全然、気にして無いんだから―・・・」
そう言うと〈ユキ〉の頭をポンっと軽く撫で、
「ハイ❗️涙の止まる『おまじない』❗️」
と、さっきから必死に何度も目を擦り・・・涙を誤魔化していた〈ユキ〉の顔を覗き込み『したり顔(笑)』で微笑んだ。
「・・・ユキって『ちゃんと』女の子なんだね」
「・・・何よ💢それっ‼️」
思わず〈ユキ〉が口を尖らせると、
「コレで『おあいこ』(笑)」
そう嬉しそうにもう一度微笑む〈サトル〉に、『ヤバい―・・・💦本気で好きになっちゃうかも・・・💧』と、
〈三宅ユキ〉―・・・12歳にして初めての《恋》を知る瞬間だった。
・・・そして――・・・。
《初恋》とは『実らぬ恋』だと知るのも、
やはり12歳が終わる頃なのである・・・。
年が明けてから『転校』して来た〈サトル〉にとって、
『卒業』と言われても実感が湧いてこないが―・・・《学年》は勿論、《クラス》の皆は
もうそれ一色で盛り上がっていた。
「・・・なぁ、今日〈シゲル〉ん家、遊びに行っていい?」
〈原田〉が〈サトル〉に声を掛けた。
「今日は《委員会》はいいの?」
この時期―・・・〈原田〉は《クラス》代表で『卒業アルバム制作委員』として毎日、
《放課後》学校に残っていた為、このところ一緒に帰ってはいなかった。
「今日は無いんだ❤️
・・・だぁ~からぁ~🎵今のうちに(笑)お前ん家『お宅訪問』しとかないとさぁ❤️」
「ヤダ、何それ⁉️・・・意味判んない💢」
〈サトル〉の横に居た〈ユキ〉が露骨に怪訝な顔をして言う。
「三宅ぇ💧お前にゃあ関係ねぇんだよ‼️
《女子》ん中でお前だけ『名前呼び』されて〈シゲル〉と『仲良しアピール』出来てるからって、浮かれてんじゃねぇ~の?」
「はぁ⁉️・・・ヤぁねぇ~💧
それって『嫉妬』⁉️・・・最近、私達だけで帰って『仲間ハズレ』にされてるから悔しくて仕方がないんでしょ~ぉ?」
「バァ~カ💢
お前の方こそ、オレみたいに気軽に『家に行きたい❤️』って言えねぇから、
妬いてんだろう💢」
・・・端から聞くと『異様(笑)』でしか無いこの《口ゲンカ》に呆れた〈サトル〉が待ったを掛けた。
「・・・あのさぁ💧
二人共、変な《ケンカ》しなくても家に一緒に来ればいいんじゃないの?
・・・ボクは別に構わないよ・・・?💧」
すると、二人して同時に、
「お邪魔しまぁ~す❤️」
と、まるでさっきの様子がウソのように見事な『シンクロ(笑)』で笑顔で答える。
そんな二人に〈サトル〉は可笑しくて笑いを堪えようとするも、
顔がニヤけてどうしようも無かった――・・・。
「・・・エッ・・・💧
―・・・お前ん家・・・ココなの⁉️💧」
「ココって《億ション》だって、《ママ》が言ってたケド・・・✨」
〈サトル〉に案内されて来た《マンション》の前で二人は絶句する。
〈サトル〉自身の《容姿(ルックス)》だけでも充分に《芸能人》っぽいのに、
更に『帰国子女』という響きさえ『庶民離れ』している所に、コレは《とどめ》を刺しているとしか思えない。
「・・・お前ん家・・・《金持ち》なんだな💧」
「もう❤️・・・非の打ち処が無さ過ぎじゃないの✨」
二人の反応が対照的で面白く、
〈サトル〉は笑いを堪えるのに必死だが、
「ボクはボクなんだから、あんまりこういうの・・・気にしないで💧」
そう恐縮して見せ、二人を押し込むように中へと入って行った・・・。
《高速エレベーター》で27階の《自宅》へ招き入れると、
二人は初めて見るモノだらけに興奮して大騒ぎ状態だった。
・・・まず《玄関》前の《ポーチ》の広さに驚き、その玄関を入った直ぐ横の《納戸》が《シューズインクローゼット》だと教えられても、
現在〈サトル〉しか住んでいないと並べる靴も無く、ちょっとした《倉庫》にしか見えなかった。
更に《廊下》の角にある〈サトル〉の部屋の《ウォークインクローゼット》も、
TVでしか見た事が無い。
・・・やはり、ココも〈サトル〉一人じゃあ埋まる事もなくガランとしていた・・・。
そして二人が声を揃えて感動したのが、
曲がった《廊下》の先のドアを開けた瞬間。
広々とした《リビングダイニング》には、
《カウンターキッチン》と―・・・その周りのの窓から見える、
《東京湾》を望む見事な『景色』に釘付けになってしまった。
「スゲェ~・・・っ‼️」
「・・・素敵ぃ~❤️」
こんな風に感動して貰えると、
何だか自分のコトのように嬉しくなる。
「―・・・あの《東京湾(うみ)》は必ず世界のあらゆる《海》と繋がってるから、
ボクが淋しくないように―・・・ってココに決めたんだって」
「・・・〈シゲル〉の《父ちゃん》って、確か」
「《水中カメラマン》やってるんだ」
「・・・素敵な《お父さん》ね❤️」
「うんっ‼️・・・ありがとう🎵」
満面の笑みでそう答える〈サトル〉に、
〈ユキ〉は思わず見惚(みと)れてしまい慌てて我に返った。
不意な《客人》を饗(もてな)そうにも、普段から用意している訳でも無い事に気付き、〈サトル〉は二人に声を掛ける。
「・・・どうしよう💧
何か食べる?―・・・って言っても、ボクが作れるモノって《フレンチトースト》か《パンケーキ》ぐらいしか無いケド・・・💧」
「スゴぉ~い❤️『料理』も出来るんだ❤️」
感心する〈ユキ〉に、
「・・・《海外(向こう)》では交替で作ってたんだケド・・・今は、ボク一人だからね・・・」
そう少し淋しげに〈サトル〉が答えるのを聞き、
「よしっ‼️・・・じゃあ、皆で作ろうゼェ🎵」
と、〈原田〉が『腕捲くり』をしながら言った。
「《小学校》の『思い出』作ろう‼️」
「・・・思い出・・・?」
「あぁ‼️・・・だって〈シゲル〉が『転校』して来た時って、もう《学校行事》終わっててオレ達との『思い出』何もねぇ~じゃん?
・・・だからぁ、今から作ろうっての‼️
《小学生》最後のヤ・ツ❤️」
その〈原田〉の意見に珍しく〈ユキ〉も賛同する。
「・・・アンタも、たまには『いいコト』言うじゃない🎵
――・・・それでは〈サトル先生〉❤️
《お料理》私達にも作らせて下さぁ~い❤️」
「・・・みんな―・・・」
〈サトル〉は思わず鼻の奥がツンとして、
泣きそうになるのを必死で我慢した。
「・・・じゃあ、《フレンチトースト》作ろうか❗️💦」
――・・・今まで味わった事の無い『感動』が沸々と込み上げて来て・・・
皆で作っている間中〈サトル〉は、
自分が何だか上手く笑えていないような気がしていた―・・・。
・・・初めてじゃないかと言えるくらいの《キッチン》の『散らかりよう』と、
その『出来上がり』の見栄えの悪さ(笑)は別として、
三人で初めて作った《フレンチトースト》の味は『最高』に美味かった・・・。
「じゃあ、『片付け』はボクに任せて、ゆっくり寛いでてよ🎵」
〈サトル〉はそう言うが早いか、テキパキと《主婦》のように手際よく片付けて行く。
その素晴らしさに、
「・・・ホントにスゲェ~なぁ〈シゲル〉💧」
そう〈原田〉が感心して呟いたのと同時に突然、《リビング》のドアが開き、
三人は《心臓》が飛び出るかと思う程驚いた。
・・・が、その瞬間。
「・・・‼️――亮っ‼️‼️」
二人が唖然として言葉を失くしているのも『お構い無し』に、
〈サトル〉は突然現れた《父》へ一目散に
駆け寄るや、思い切り抱き着いた。
「・・・ただいま―・・・サトル」
《カメラ》や機材の入った大きめの《ジェラルミンケース》に《ショルダーバッグ》を掛けた《父》は、
そんな《息子》をしっかりと優しく抱き止めるが、他二人の『存在』に気付き思わず苦笑する。
「・・・サトル。あの子達はお前の《友達》?」
耳許の〈亮〉の声で、
二人が一緒に居た事を思い出し(笑)、顔から
火が出る勢いで『赤面』したまま〈サトル〉は無言で頷いた。
「おっ・・・お邪魔してますっ‼️💦・・・は・・・原田裕章(ひろあき)って、いいます‼️」
緊張して噛み捲りの〈原田〉に対して、
流石は〈ユキ〉だ。
「・・・初めまして、三宅ユキです🎵」
二人同時に立ち上がり、それぞれに『自己紹介』をすると、
「・・・サトルの《父》です。初めまして」
至って『シンプル(笑)』な〈亮〉らしい挨拶だが、
聞いた事も無いような甘く穏やかなその《口調》に〈サトル〉は目を丸くする。
「・・・〈シゲル〉の《父ちゃん》も、やっぱカッコいいなぁ・・・✨」
何気に呟いた〈原田〉の言葉に〈亮〉が反応した。
「・・・何?お前〈シゲル〉って呼ばれてんのか⁉️」
「・・・―・・・うん・・・💧」
《息子》は何ともバツの悪そうな顔をして上目遣いで《父》を見る。
それを見た〈ユキ〉は慌てて『フォロー』した。
「あのっ💦皆がそう呼んでる訳じゃ無いんです‼️・・・《クラス》の男子がサトルの日焼けを茶化して、面白がってるだけなんです💦
・・・サトル・・・人がいいから、
ちっとも嫌がらなくて――・・・」
「・・・ふうん・・・で?〈シゲル〉って―・・・」
真っ黒に『日焼け』した〈サトル〉をそう呼ぶ《理由(わけ)》を、
おおよそで『想像』が付くのか《父》の口許が弛んでいるのが見て判る。
それに気付いているだけに〈サトル〉も自分の口から言い出すのが、恥ずかしくて仕方がない。
「――・・・《芸能人》に居るんだって・・・💧
ボクみたいに焼けて真っ黒な人が・・・💧」
と、渋々打ち明ける《息子》に〈亮〉が珍しく小さく噴き出すと、
「やっぱり、あの〈しげる〉かぁっ‼️」
そう言って大笑いした。
〈亮〉がそんな風に『爆笑』するとは夢にも思わず、〈サトル〉はあまりの恥ずかしさに耳まで真っ赤になって、
まるで『半べそ』みたいな表情(かお)をしているが、
久々に逢うそんな《息子》に愛しさが溢れる〈亮〉は〈サトル〉の肩を引き寄せると、
「じゃあオレ達🎵《Wしげる》だナ✨」
と、やんちゃな顔をして笑顔を向けた。
『・・・亮・・・』
以前、一緒に居た時には見せた事もない《父》のその表情(かお)に、〈サトル〉も自然と笑顔になる。
そんな『超』が付く程の《仲良し父子(おやこ)》のイチャイチャっぷり(笑)に、
〈原田〉は羨み・・・〈ユキ〉は少し『嫉妬』した―・・・。
その帰り道。
「いいよなぁ~✨あんな《父ちゃん》✨
若くてカッコ良くて、めちゃくちゃフレンドリーで・・・しかも『お金持ち』で‼️✨」
テンションの高い〈原田〉が〈サトル〉親子を『絶賛』するのに対し、
〈ユキ〉は不機嫌そのものだった。
「・・・私は何かイヤ。
まるで《親バカ》じゃない?〈サトル〉も私達なんか『眼中にありませぇ~ん』みたいなカンジで《父親》にベッタリだし‼️」
「だって仕方ねぇじゃん❗️
いつもは『離ればなれ』で暮らしてんだから・・・」
そう言いながらいつもの《十字路》の別れ際に〈原田〉は、
「・・・お前が『また』アイツにひでぇコト言わねぇ内に言っとくケド。
アイツの本当の《両親》・・・居ないから。
あの《父ちゃん》が〈シゲル〉引き取って面倒見てんだ。・・・お前、知らなかっただろ?
―・・・知ってたら、さっきみたいなコト言わねぇモンな?💧」
真顔で〈ユキ〉に釘を刺す。
「―・・・アイツの事。
本気で『好き』なら自己チューで考えない方がイイぜ?💧
・・・お前、《思い遣り》ねぇんだから」
そう言って、〈ユキ〉に背中を向けて帰って行った。
「・・・ナニ?💢あの、エラそぶった言い方‼️
アンタが私に《思い遣り》が無いっちゅうのっ‼️💢💢」
その〈原田〉の帰って行く後ろ姿に〈ユキ〉は舌を出す。
今まで、あんな〈サトル〉の顔を見た事が無かったのが『悔しい』と思った。
「この気持ちのどこが悪いのよっ‼️
・・・私だって、あの《お父さん》と同じくらい―・・・〈サトル〉のコト『好き』なんだからねっ‼️💢」
まるで《宣戦布告》のように言い切ると、
ズンズンという音が聞こえそうな勢いで、家路へと歩き始めた――・・・。
「亮って、『子供好き』だったんだね(笑)」
二人が帰った後片付けをしながら、〈サトル〉が嬉しそうに言うと、
「・・・おい💧
今更になって気付くのは『ナイ』だろう💧」
《ソファー》では無く《窓台》に腰を掛け、《父》がいつ帰って来てもいいようにと《我が子》が用意してあった《缶ビール》を飲みながら、
〈亮〉は憮然とするも、
「・・・淋しくなかったか?
―・・・未だこの家に『生活感』が無いから、一人じゃどうだろうかと心配してたんだ💧」
その気遣いが嬉しい。
「・・・うん。この《景色》が無かったら・・・💧『ホームシック』になってたかも知れないかな?💧」
〈サトル〉は片付けを終えると、
〈亮〉と向かい合うように《ソファー》の背凭れに腰を掛けた。
「・・・何時まで《日本(こっち)》に居られるの・・・?」
急にトーンダウンし、淋しげに訊く。
「あぁ。お前の《卒業式》と《中学》の《入学式》には顔を出せるように調整して来たから、しばらくは一緒に過ごせる」
「本当にっ⁉️✨」
〈サトル〉は素直に喜ぶが、
ふと《父》の酒を呷(あお)るペースが早いのが気になった。
「・・・亮・・・ちょっと―・・・」
そんな《息子》の心配する声を遮るように
〈亮〉は胸元のポケットから、
折り畳まれた《白い封筒》を差し出す。
「・・・何・・・?」
「・・・ケリーからだ。
《お前》に渡してくれと頼まれた」
「わぁ🎵ありがとう❗️元気にしてた?」
その問いに少しの間が空くと、
「――・・・一週間ほど前に亡くなった」
〈亮〉の言葉が、
『耳鳴り』みたいに〈サトル〉の頭を貫いた――・・・。
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