終章 十二月 その19

十二月第三週の週末、金曜日の夜。


僕は期末の試験もなんとか乗り越え、いよいよ明日はを迎える。


ここ数日、どのような一日にしようかと、いろいろとプランを練っていた。


それこそ、このエンドでどのような点を取るか?


どのようなゲーム展開に持っていくかを悩むように。


その日の夜、お風呂ではなんとなく身体を念入りに洗ってしまう。


松山、女性的な男性目線(?)で見た場合、どの程度体毛は処理すればいいんだ?


アイツが無駄毛は処理しておけ、などと言うから変に意識してしまう。


恐らくそんなに体毛は濃くないはずなので、結局そのままにする。


リューリも…彼女も今頃明日の事を考えて準備しいるのだろうか?


胸の奥…いや下腹部から胸に向けて何かがたぎるのを感じる。


独占欲?性欲?劣情?


思えばたった四ヶ月前。


僕は彼女が他の男に抱かれ、その上不倫している事を知り、嫉妬しているだけだった。


それも彼女達の情事を夢にまで見るほどに。


狂おしい、という表現が当てはまるほどに。


恐らく、人生においてもう二度とこんな感情は沸かないと思えるほどに。


それが、明日彼女を思うがままに好きに出来る。


あの時の嫉妬がそのまま劣情に姿を変え、僕という存在を業火で焼き尽くそうとする。


期待と不安というが。


僕の場合は不安と不安と不安と期待。


僕は自分がリューリの裸を見たときに、この劣情で身を焦がし、正気ではいられなくなるのではないか、と不安なのだった。


『お前、計画とかガッチガッチに立てて本番で緊張して失敗しそうだからさ。ちゃんとドコにナニ入れるか分かってるか?…俺のでよければおっぱい見ておくか?お前さえ良ければ下だって…』


松山の声が頭をよぎる。


松山は性別的には女性だが、心は男そのものだ。


そしてだからこそ、自分の女性としての身体に違和感を持ち続けている。


そんなアイツが自分の身体を手本にしようとしてまで僕を心配してくれた。


ばかやろ。お前に心配はされたくないよ。松山。


『エロ映像はアテにならないぞ。女には優しく優しくな』


分かった。分かったよ。松山。


劣情が引き潮のように引いていく。


さんきゅな、松山。


ちょっと悔しいが僕はその特異な友人に感謝する。




次の日。


父は母の所に宿泊に行っている。


それは、母に今日の事を話した結果だった。


母は


「後悔がないようにしなさい」


とだけ言って後は何も言わなかった。


ひょっとして、リューリのお母さんから何か聞いているのかもしれない。


食堂にいる海鼠なまこに挨拶し(海鼠は寡黙だ)風除室から外へ出る。


玄関先ではハクセキレイの親方が待ち構えていた。


親方は僕の顔をじっと見て、尾羽をぴっ、と立てる。


人間で言うと親指を立てているようだ。


僕は朝から行動を開始する。




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