終章 十二月 その11
リューリの家に行った次の日。
この日は私立学園との練習が重なっている日だった。
「はい、
例によってうちの部長が皆を集める。
「今月末に全国高等学校カーリング選手権の関東中部エリアトライアルがあります。四人制とミックスダブルスね。参加は各チームに任せるので出場するチームは来週までに私に言ってね。もちろん私立学園との合同チームやペアもありです。私立学園の部長何か追加、あります?」
「登録料は部費から出すけど、本大会に出場の場合、申し訳ないけど旅費は各自負担になるので。それくらいかな?それじゃ
解散後もしばらく皆でどうするか、集まっていた。
「黒崎達はどうするんだ?四人制、出るのか?」
野山先輩が集まっている僕らに話し掛けてくる。
「そうですね…。万が一本大会出場となると…うちのチビ達の面倒見なきゃいけないんで難しいですが…」
…黒崎みたいに実力があっても家庭の事情で出られない奴もいるのだな、と思い知らされる。
松山は…どうしてるんだろう?
男と女とどちらの枠で登録するんだろうか。
新田さんは?
車椅子の出場枠なんてあるのかな。
野山先輩は環境の整っているカーラーにコンプレックスを持っているようだったけど…。
きっとこういう事があるからなのかな…。
努力でどうにもならない部分で道を閉ざされた時。
僕は腐らないでいられるだろうか?
「まぁ俺達のチームで本大会出場はないだろ。でも挑むのが男ってもんだろ!?」
旭先輩が拳を突き出して叫ぶ。
そして僕、黒崎、友利の肩に腕を回す。
「ってことでチーム黒崎参加でいいよな?」
「ってことで参加です。ハナさん」
「ヨシヨシ。派手に砕け散ってこいよ」
…どういう激励だか。
「わへい。旭先輩にも相談したんだけど…」
改まって黒崎が僕に向き直る。
「なんだよ。改まって」
「ポジションなんだが。お前、フォースやらないか?」
「僕が!?フォースに!?」
突然の事でそのまま聞き返してしまう。
「そうだ。僕がセカンドでスキップをやる。お前はフォースでバイススキップをやってみないか」
いま僕達のポジションは友利(リード)、僕(セカンド)、旭先輩(サード・バイススキップ)、黒崎(フォース・スキップ)となっている。
これが友利(リード)、黒崎(セカンド・スキップ)、旭先輩(サード)、僕(フォース・バイススキップ)となる。
「理由は?僕がフォースをやる理由」
「お前のミックスダブルスのプレーを見ていて、かな。あとうちのチームの将来性を持たせるため」
フォースというのは最後の一投を行うからそのプレッシャーは生半可はものではない。
失敗=敗北というケースで落ち着いて投げなければならない。
普通はスキップが兼任し、得点を取るために組み立て、最後に自分で決める…というのが一般的だが…。
無理だ、と言うのは簡単。
黒崎も無理強いはしないだろう。
でも、それで良いのか?
「…考えていいかな」
「うん。いいよ。リューリさんに聞くのもいいだろうし」
リューリに聞く。確かにありだ。
…しかし僕はリューリに勝たなければならない。
いつまでも頼っていて良いのか?
「いや。やっぱり受けるよ。今までと同じ事していたら成長しないから。つまらない勝ちを拾うより面白く負けろ、だ」
「そう言ってくれると思ったよ。頼む。期待はしてないから安心しろ」
「ありがたいんだか、悲しいんだか分からないな。友利も旭先輩も良いんですね?」
「何言ってるんだ。
「わへい君に任せるよ~」
「一蓮托生、だな」
それぞれがそれぞれの表現で後押しをしてくれた。
やる、と決めた瞬間から不思議と頭の上に大空が広がった気がする。
これが、僕の目指す次の景色なのだろうと、そう僕は捉えた。
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