第六章 十一月 その30
「えーお集まりの皆さん」
突如私立学園の部長が話し始める。
「名残惜しいのはやまやまですが、そろそろ時間です。明日はKF高校の皆さんは移動日なので練習はありません。あっという間の二日間でした」
ざわざわと騒いでいた皆が急にしん、と静かになる。
…そうか、明日でお別れか…。
カウンター越しに松山と新田さんを見る。
独特な、本当に独特な人と出会えた。
でも、良い出会いだった。
「おっと、静かにならないで下さいね。また来年会いましょう!そして、願わくば、来年一月に青森で会いましょう」
わぁっと食堂が盛り上がる。
「そうだな、青森で」
「青森で会おう」
「勝ち上がってこいよな」
お互い声を掛け合っている。
「すみません野山先輩。青森ってなんです?」
「全国高校カーリング選手権のことだ。青森市で来年一月に開かれる」
…全国高校カーリング選手権…。
そうか、そういうのもあるんだな、と僕は初めて知る。
「森島、青森に来いよな」
「分かったよ」
松山が握手を求め、僕も握手に応じる。
「わへい、出るつもりなの?」
「出てみたいですね。大きな大会なんですか?」
リューリと野山先輩が顔を見合わせて苦笑する。
「まずは十二月末に行われる関東中部トライアルを勝ち上がらないと行けないわよ?」
「…関東?中部?」
…そんなに規模が大きいのか…。
「男に二言なし、な」
松山は握った手を離さない。
…前言撤回…出来ないかな。これは。
それにしても、と考える。
わずか二日程でずいぶん仲良くなったと思う。
最初に会った時はなんだコイツって思ったけど。
「松山、連絡先教えてくれないかな」
「いいぞ、もちろん」
松山と連絡先を交換する。
新田さんに聞こうか迷ったが、僕から新田さんに連絡することはないだろうな、リューリに睨まれるかなと、考え直す。
「確認だけど、僕らは友達ってことでいいかな」
僕が聞くと一瞬、松山がキョトンとした顔になる。
あれ、友達じゃなかったかな。
「今さら何を言ってるんだお前は。というかわざわざきちんと確認してはっきりさせておくとか…律儀っていうか面倒というか。っととリューリさん睨まないでくれるかな。冗談だよ?冗談」
これだけ面倒な奴に面倒と言われた。
「お前は友達だが俺が認めた
松山が僕を指差して言う。
ああ、いるよな。
すぐにライバル扱いしたがる奴。
とりあえず友達兼ライバルの立場を得る事が出来た。
交流会はお開きとなったが、皆、名残惜しのだろう。
しばらく別れを惜しんでいた。
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