第六章 十一月 その25

松山、新田ペアに勝利した後は他チームにもなんとか勝つことが出来た。


そして最終戦。


旭先輩と部長のペアとの対戦。


二エンドで終わるとはいえ、ミックスダブルスはそれぞれのプレイヤーにかなりの負担をかける。


「秋さん、大丈夫?」


「なんのこれしき、ですよぅ」


秋さんが胸を振るわせながら両手でガッツポーズを作ってみせる。


強がっているけど眼界が近いかな。


それは旭先輩達も同じだけど。


「旭~スイープ任せたぁ」


「グゥレイトッ任されたぁ!」


しかし旭先輩もスイープを始めると…。


「腕がぁぁぁ!オラの腕が死んじまっただぁ!」


案の定、部長がバテており、スイープは旭先輩任せになっていた。


その旭先輩も腕はパンパンみたいだ。


僕は…まだまだいける。


旭先輩チームとの対戦も辛くも勝利する。


「わへいさん、ナイスっ!」


「秋さん、ドロー上手だね。いつも救われてるよ」


僕は他意はなく思ったままを口にする。


「そんなこと、ないです。本当に。わへいさんのスイープに助けられてます」


秋さんが照れて手をぴろぴろと振りながら言う。


確かに僕のスイープで持って行ってるところは、ある。


でもそれは僕のスイープを信用し、秋さんがちょうど良いウェイトで投げてくれているからであって。


つまり、僕らはこの二日間で噛み合っているのだ。


「ありがと。僕のスイープ信用してくれて」


「ああ、いえ、その、ホント、やだなぁ」


手を振りながらぶんぶん首まで振る。


つられて胸もすごい勢いで揺れてるけど…。


「わ・へ・い」


背筋が凍りつくような絶対零度の視線。


しまった。


秋さんの胸を見すぎたか。


「ヤァ。リューリ元気カナ」


僕はぎこちなく、そして恐る恐る振り替える。


「元気だわ。でもちょうど機嫌が悪くなったトコ」


意地悪な微笑み。


「ゴメンナサイ」


素直に頭を下げる、僕。


「まぁ、いいわ…とでも言うと思ったかしら?後でうーんと私を甘えさせなさい」


「…かしこまりました」


秋さんが物言いたげにしているけど、さすがにこの雰囲気で何も言わなかった。


…端からみたら物凄い束縛されているのように見えるんだろうな、僕は。


「そちらはわへい達が一位ね?よろしく、ね」


「…という事はそちらはリューリ達が一位か」


「そ。約束守って偉いわ」


目を細めて僕を見る。


そのまま僕の頭を撫でそうな勢いだ。


後ろには黒崎と野山先輩。


「後もう一エンドあれば勝ってたんだ。そうだよな!?」


「ああ、いやどうでしょうかね」


どうやら黒崎達でもリューリ達には勝てなかったのだろう。


「それじゃ、始めましょう?」


獲物を狙う豹の目。


見入られるほど恐ろしく、美しかった。


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