第六章 十一月 その21
女性陣はお風呂から上がると食堂に戻り何事か話し始めた。
「ねぇねぇ、リューリさんと森島君ってどこまでいってるんです?」
…部長がリューリにそんなことを聞いている。
僕はキッチンで洗い物を拭きながらなんとなく聞いていた。
…これが噂に聞く女子会だろうか?
ちなみに松山は女子会には混ざらずカウンター席で携帯を見ている。
「…まだ何も」
リューリがこちらをちらりと見ながら答える。
口元には微笑み。
しかし僕を向いたときに犬歯を見せ付ける。
…リューリに噛まれた首筋が疼いた気がして僕は首筋を押さえる。
…吸血鬼かな。
リューリみたいに綺麗な吸血鬼なら、血を吸われても…って僕は何を考えているのか。
「…奥手過ぎるのよね。もっと…積極的でも私は…」
おおーと新田さんや部長が声をあげる。
「リューリさん、大人っぽいー」
新田さんが頬を赤らめている。
今は人が減ったので新田さんは車椅子に座っている。
「
…皆の視線を感じる。
「優しすぎるところもあるけどね」
リューリの視線を感じる。
「それでも良物件ですよ。うちのカーリング部って男子は皆子供っぽくて…あ、黒崎君は違うよ?」
「…私にフォローしなくていいよ、部長」
部長が野山先輩に振り、野山先輩が苦笑しながら言う。
「そうなの?でも黒崎君て、ハナちゃんのことスキスキーって感じしない?」
「…知りません」
珍しく照れる野山先輩。
ちょっと可愛い…等と考えようものならリューリに睨まれるかな。
あ、睨んでる。
「部長こそ、旭はどうなの?」
「ああ…いや、ねぇ…。アイツは子供っぽいヤツの代表格じゃない?」
そういえば部長と旭先輩はミックスダブルスでペアを組んでいた。
「私は大人っぽい人が良いなぁ…」
部長が溜め息をつく。
「んじゃ旭が大人っぽくなったらどう(。-∀-)」
野山先輩がニマニマしながら聞く。
「アイツが大人っぽくなったら、ねぇ…」
なんだかんだ言いながら部長と旭先輩のペアは良い雰囲気には見えるのだが。
こんな風に恋愛の話しに花が咲く辺り、やっぱり皆、女の子だなぁと思う。
リューリも初対面の新田さんと問題なくコミュニケーション取れてるみたいだった。
以前の彼女だったらどうだろうか?
以前の彼女は同年齢の子達を馬鹿にする素振りがあった。
あんな風に同い年の子達と話をする姿は、とても年相応で僕を安心させるものだった。
そんな時、廊下がどたどたと騒がしくなり。
「どうだよ!?俺のパワーゲイザーの威力は!?スゲーだろう」
旭先輩がいかにもひと風呂浴びてきました、という出で立ちで現れる。
「…アイツが大人っぽくなる?ないわー」
部長が呆れたように呟いた。
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