第六章 十一月 その16
ミックスダブルスの練習をした後はチームに分かれての練習となり、その日は練習が終了する。
結局練習中にリューリと言葉を交わすことはほとんどなかった。
今日はこの後で交流会が催される。
KF高校の生徒は一旦宿に戻った後で僕の家に全員が集まることになっていた。
僕はカーリング場のラウンジで私立の部長と僕の部長とでこの後の打ち合わせを行い、カーリング場を出ようとしたとき。
「キミ、わへいクン?」
声を掛けられて立ち止まる。
一瞬無視して帰ろうかとも考えたが、僕は仕方なく振り替える。
そこにはリューリと練習でペアを組んでいた
…出たな。ざまぁ夏彦。
僕は心の中で毒突く。
「そう、ですけど。この後で交流会があるので失礼します」
僕は頭をペコリと下げてそのまま回れ右。
「ちょーっと待ちたまえ!いきなりあんまりな扱いだな。君に話があるんだ…って少しは立ち止まりたまえよ」
「僕には話す理由がありませんので。失礼します」
そのまま本当にカーリング場を出ていく。
「僕にはあるんだよ。本当にちょーっと止まりたまえ」
「交流会の準備で忙しいんですよ。先輩の話なら歩きながら聞きます」
「仕方ないな。単刀直入に言おう。リューリクンとのペアを解消したまえ」
「嫌です。お疲れ様でした」
「ちょーっとは考えたまえよ」
「考える余地がありません。失礼します」
「君もわかってるのだろう?自分の技量ではリューリクンの足を引っ張るだけだと」
「わかってますけど。嫌です。さようなら」
「僕なら彼女の実力を引き出してもっと上を目指せる。君がリューリクンと付き合ってることは知っている。何も別れろとかそういう事を言ってるんじゃないんだ。ミックスダブルスのペアを変わって欲しいだけなんだ」
「それなら僕じゃなくてリューリに言ってくださいよ」
「言ったんだよ」
「…僕に話を持ってくるくらいだから、ダメだったんですね」
「そう。ものすごい怖い目で睨まれたよ」
しょげる夏彦先輩。
「ああ…(察し)。でも、なら無理ですよ」
「だよなぁ。惜しいなぁ。僕となら君以上に活躍出来るのだが」
いつの間にか二人でとぼとぼと歩いていた。
先輩の話はよく分かる。
悔しいが本当の事だろう。
でもリューリにも僕にもその気はない。
ましてやリューリを説得するのは生半可ではないだろう。
…それこそ僕からペア解消の話を切り出さなければ、不可能だろう。
気が付くといつの間にか僕の家に到着していた。
「…僕の家に着きましたけど」
「しまった!君が話を聞いてくれないからだぞ?」
「いや、最終的に聞きましたけどね?」
「ここから一旦帰るのは手間だぞ」
「先輩、暇なら準備手伝ってくださいよ」
「…なんで僕がそんなことを。で、どんな準備するんだ」
「この後で皆が集まるので、会場の準備はないです。KF高校でうちに宿泊するメンバーがいるんで、風呂洗いですね」
「会場の準備ですらないのか」
「僕は女性用のお風呂やるんで。先輩は男風呂です。寒いですから、長靴履いて下さい。ブラシは脱衣場の用具室に」
「洗剤を寄越したまえよ」
…なんだかんだ言って手伝ってくれた。
…噂ほど悪い人ではないかも。
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