第六章 十一月 その9
「京子さん?」
「俺は京子じゃない、京だ」
そのショートヘアー、いやベリーショートと言うべきか?
女の子が杉村先生に喰って掛かっている。
「今日別で宿泊するのは女子が三名と伺いましたが?」
「俺は男だ」
「やめなよ、京ちゃん」
「離せ
側にいた車椅子の娘がその京子と呼ばれた女の子を止めている。
「ごめんなさい、先に言っておけば良かったのですが。ちょっと事情がありまして」
牧村先生が頭を下げる。
他の部員達は慣れっこなんだろうか?
遠巻きに見ている部員もいれば、気にせずまたレンタカーに乗り込む部員もいる。
「元気がいいのは、良いことですな。ま、とりあえず今日はお疲れでしょうから宿に行きましょう。森島、案内頼むな」
杉村先生の車に杉村先生、僕、リューリ、野山先輩が乗り込み先導する。
KF高校のレンタカーが続いた。
僕の家の前で車が停まり、今日から宿泊予定の松山、新田と呼ばれていた二人、それに牧村先生、それに黒崎や旭先輩が下車する。
「部長、後で宿に顔出しますからね。ちゃんとご挨拶するのよ」
「先生、僕達も子供じゃないですから。松山達をお願いします」
「わかったわ」
「なんだかボロいな」
「京ちゃん!」
「いや、気にしないよ。実際ボロいし。さ、中へどうぞ」
先生達を中へ案内する。
新田と呼ばれていた車椅子の女の子は松山と呼ばれていた子が付き添っている。
「下の部屋を三人で使って下さい。…それとも、もう一部屋必要ですか?」
僕はそれとなく牧村先生に聞いてみる。
「実は、そうなの。“彼”は私達と同室は嫌がるかな」
「…そうですか…。明日から他のメンバーも宿泊しますから一人の部屋も準備出来ますけど」
明日の夜は友利と旭先輩、野山先輩にリューリ、部長も泊まるのでもう二部屋準備はしてある。
その部屋を使わせるのもアリだが。
それだと明日の夜、この松山京という“彼”を泊める部屋が無くなる。
それなら…。
僕はリューリをチラリと見る。
事情はわからないけど、どうみても“彼女”だが“彼”ということらしい。
“彼”を僕の部屋に泊めると言ったらリューリは何て言うかな。
でも、直感みたいなものだがコイツはきっとそういう扱いで大丈夫だと思った。
却下されたら僕がどこか別の(清掃してないが)部屋で眠ればいい。
リューリがスッと目を細める。
僕が何か考えているのを理解してくれたのだろう…と思うのだけど。
「えっと、松山?」
「なんだよ」
「僕の部屋に泊まれよ。僕は上のベッドだから君は下のベッドだ。他の部屋は明日使うから、それでいいか?」
松山の目をまっすぐ見ながら言う。
リューリ以外、びっくりしたようや顔をしている。
「ふーん」
松山は僕の顔をじろじろと見て。
「ならそうさしてもらうわ。お前名前は?」
「
「良いのか?わへい」
心配そうな旭先輩。
僕はこくりと頷く。
「わへい?お前のあだ名?」
「そうだよ」
「なら俺は森島って呼ばせてもらう。俺は松山京。
「よろしく、京」
握手を交わす。
周りの空気がホッと緩んだ。
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