第六章 十一月 その8

北海道からの高校が来る日。


連休前の金曜日の夜。


僕ら公立高校のカーリングメンバーはリューリ達のいる私立学園に集まっていた。


「北海道の私立KF高校?」


「そう、うちの学園と創設者が仲が良いみたいよ?数年前まで女子校だったって」


そう、学園のカーリング部部長が教えてくれた。




二十時を過ぎた頃、部員達を乗せたレンタカーが到着し、うちの顧問の先生が駆け寄る。


真っ先に降りて来たのは二十代くらいの女性。


恐らくはあちらの高校の顧問だろう。


暗いので僕からは顔がはっきりとは見えなかったが。


顧問の先生には見えていたのだろう。


「いやぁ、長旅お疲れ様でした。あ、牧村先生ですね?いやぁ、想像通り!お美しい!あ、私顧問の杉村です」


「あ、はぁ牧村です。杉村先生ですね。色々お世話になりました」


「いえ、大した事ではありません。あなたのような方のためなら、いや、同じカーラーとして、当然のことです。しかし北海道からここまで大変だったでしょう!」


「これくらい何て事ありません!私個人なら車で来ちゃいますけどね」


「えっ…はぁ」


うちの顧問が呆気に取られている。


「私、素人ですけどカーリング大好きで!年末北海道から東北行って新潟まで来るんですよ!今度はここまで来ようかな」


「あ、それはもう是非に。よく新潟までいらっしゃるんですか?」


「はい!それはもう!杉村先生はカーリングお上手なんですか」


「いや、いまはもう部長達に任せてますがね。それなりにやっとおりました」


がはは、と笑う顧問をうちのカーリングメンバーが冷たい目で見ている。


「顧問ティーチャーアイスに乗ったこたすらないよ」


「本当に分かりやすすぎだろ」


「やはり嫁狙いか」


「…あさましい…」


て散々だな。顧問ティーチャー。


「あれが噂に聞く…バカーラー」


私立学園の部長がぽそりと呟く。


「バカーラー?なんですか?」


所謂いわゆるカーリング狂?二十四耐久時間カーリングとか平気な人達を、尊敬と親しみの念を込めて人はそう呼ぶわ」


部長の代わりにリューリが教えてくれる。


「…二十四時間耐久カーリング…」


聞いただけで凄まじい…。


それが平気な人達って一体…。




「私立KF高校部員八名お世話になります!」


部長と名乗った男子が頭を下げる。


数年まで女子校だったということだが、確かに女子の数が多い。


「ではここで二手に別れましょうか」


杉村先生が声を張り上げる。


音頭を取る辺り、本当にあからさまなアピールだが。


「松山京子さん、新田佳乃はいますか?」


「あ…」


杉村先生が声を出した瞬間。


牧村先生が同時に声を出す。




「俺は京子じゃない、きょうだ!」


髪の極端に短い女の子(?)が声を張り上げた。


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