第六章 十一月 その3
次の日曜日。
僕らのチーム黒崎(黒崎、旭先輩、友利)と野山先輩、リューリ、部長が僕の家の片付けに来てくれる。
リューリと黒崎以外は初めて訪れることになる。
「あら…親方さん。おはようございます」
リューリがハクセキレイノ親方に向かって律儀に挨拶をする。
親方は胸を反らして精一杯の上から目線で出迎えてくれる。
「…なんだ、このもふもふの生き物は」
野山先輩が眼鏡を曇らせながらリューリに聞く。
「この家の守り神、ね。入室を許可してくれたわ」
「これが許可しなけりゃ入れないのか?この家は?」
親方はそれを聞いて頭を上下させた。
…怒ってるのかな。
「親方ごめん。後で向日葵の種あげるから。…風邪ひかないでね」
親方は尾羽をぴょこぴょこさせてから飛び去る。
「なんだこのぬめぬめした生き物は」
キッチン脇に置いてある水槽を見て野山先輩が驚く。
中には我が家の
…さっきのハクセキレイノといい、この人見てると飽きないな。
「この家の
律儀にリューリが説明する。
「これに悩み事を相談するんか!?そもそもこんな悩み事なんか無さそうなヤツになんだの解決能力があるのか?」
「
「え…と。とりあえず女子の部屋を二部屋、男子の部屋を一部屋片付けかな。あと女性用お風呂の掃除」
僕がやるべきことを皆に伝える。
「それじゃ男子は二チームに別れて。女子は女子で一チームかな。男子はお布団干すのもお願いね」
部長がテキパキと指示を出す。
「僕は女性風呂の水出しするから。下手したら配管漏水してるかもしれないし。水でないと掃除出来ないし」
「女性用のお風呂掃除とかなんだかやらしーな」
「野山先輩止めて下さいよ。やらしくありません」
「リューリいいのか?他の女が浸かった浴槽をわへいが洗うんだぞ?いやらしい弛緩しきった顔で」
「無理にリューリ焚き付けないで下さい。それに弛緩してませんよ」
「いいわよ。私はわへいの本当に弛緩しきった顔、知ってるし」
「……」
結局野山先輩が何も言えなくなってしまう。
「それじゃあ開始。夕方までには目処つけましょうか」
各々が掃除道具を持ち、清掃を開始する。
僕はかつて見付けた、この家の配管図を取り出す。
軽井沢では冬季に水道管が凍結することがある。
そのため、使わない配管は系統ごとに水が止められるようになっている事がある。
この家の女性用お風呂はそのように水止めされていた。
僕は父親から借りたスパナやドライバーをポシェットに入れ、水出しに取り掛かる。
蛇口なども取り外されていたから改めて取り付けを行い、最後に配管のバルブを開ける。
幸い、どこも水漏れしている様子はない。
僕は恐る恐る水道の蛇口を捻る。
ゴボゴボと空気が抜ける音がした後。
爆発するような勢いで茶色い水が溢れ出す。
…成功。
僕はしばらく水を出したままにし、水が綺麗になるのを待った。
しかし寒い。
冷えきったの床の上に立っていると、氷の上にいるようだった。
僕は給湯器の電源を入れお湯が出ることを確認する。
お昼は僕が皆にパスタを作り、カフェオレを振る舞う。
パスタはトマト缶とコンソメの素を使った簡単なものだが。
「これはぁぁぁっ!しめじだとぉぉぉ!」
旭先輩が大袈裟な声を上げる。
「ちょっちょっと!アキラ!人のお皿にしめじ入れないでよ!きちんと食べなさい」
「しめじはぁ!しめじだけはぁ!部長、助けてくれぇ」
どうやらしめじが地雷だったらしい。
部長にしめじを食べさせようとしていた。
午後はお風呂場の掃除、そして僕は食堂であることに挑戦していた。
「薪ストーブ?」
「そうなんだ。薪は薪小屋にあったし、着火材も見付けた。出来るかもしれない。…本当は煙突清掃しないとダメなんだろうけど。食事会するならこれが手っ取り早いからね」
一応側に消火器を用意して。
古ぼけた説明書を見ながら着火材の上に薪を組んで火を着ける。
やがて薪はぱちぱちと音を立てながら燃え始める。
煙突の途中から煙が漏れる事もなさそうだ。
「温かい…」
「火ってこんなに気持ち良いんだ…」
「キャンプファイヤー見たいで燃えてきたー!」
「暖まりますなぁ」
各々が各々の感想を述べる。
どうにか、準備は整ったのだった。
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