第五章 八月その23

リューリが近付いてくる。


抽選会から一週間ほど経っていた。


その間、僕から連絡することはなく、彼女からも連絡はなかった。


もうすぐミックスダブルスの試合もあるから、連絡して、練習しなければとは思っていた。


…思っていたのだが。


結局その間僕は自分の気持ちを自力で整理出来ず。


野山先輩や黒崎に背中を押される形となった。


『…止めを刺してもらう、か』


確かにいまのすっきりしない状態よりは、きちんと振られてしまった方が楽になりそうだ。


その後はカーリングのチームメイトとして接していけばいい。


最初はギクシャクするかもしれないが、またいつもの憎まれ口を叩き合う仲に戻れるはずだ。


このままではミックスダブルスでの試合になったとき、僕はカーリングに集中出来ないかもしれない。


なんとなく、自分の中で考えがまとまる。


そして覚悟が決まる。


自分の気持ちを言ってしまおう。


もちろん迷惑は承知の上で。


試合前に黒崎に告白した女の子。


彼女も同じように悩み、悩みぬき、決め、覚悟をして今日を迎えたのだろう。


…尊敬に値する。


「何をぶつぶつ言ってるの?」


突然目の前から声がして僕は我に返る。


いつの間にかリューリが目の前に座っていた。

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