第五章 八月その19

試合が始まった。


お互いのサード同士がじゃんけんをする。


こちらからは旭先輩。


「お願いします!じゃぁぁぁんけぇぇぇぇんッッッポイ!!」


やたらとやかましいじゃんけんが行われる。


「まぁぁぁけたぁぁぁぁ!!」


…じゃんけんに負けただけで試合に負けた訳ではあるまいに。


勝った相手チームは当然後攻を選択する。


僕らは赤いストーンを選択する。


僕らチーム黒崎は


リード:友利、セカンド:僕、サード:旭先輩、スキップ:黒崎


という順番になる。


町内の大会では、エンド数は6エンドまで。


世界的には5ロックルールだが、町内の大会では以前までの4ロックルールとなる。


※5ロックルール…ハウス外のストーンについてお互いの5投までプレイエリアから出すことが出来ない。


僕と友利は初めての試合となる。


緊張しないかといえば緊張していた。


「わへい君、楽にイキマショ。ラクニ」


「がっちがちに緊張してるじゃないか」


友利を見ていたらこちらの緊張が解れてきた。


「さ、友利からだぞ」


「いきまーす」


「友利!センターガードだ!」


反対側のハウスで黒崎が叫ぶ。


※ガードショット…ハウスの円の中に入れず、外に置くショットのこと。次のショットでガードの裏にストーンを置くことで得点につなげる。


友利がひょろひょろとデリバリーする。


「速くないか?」


「ウェイトあるぞ?」


いつもと違うウェイトのあるストーンに僕と旭先輩が驚く。


「友利、押したな!?」


「ごめんです~」


どうやらリリースの際に手で押したらしい。


それなら当然ストーンのウェイトはあり…。


「スルーするぞ!?」


「俺のオーバースキルで!!止めてやるぅ!!」


旭先輩が何かの念を送るが当然止まらない。


友利のストーンはハウスを通りすぎてしまう。


「すみません~」


「気にするな!友利!」


「ドンマイドンマイ!」


「友利!次だ次!」


皆で友利を励ます。


どんな時でも笑っていたい。


それは僕らのチーム、そして我がカーリング部の誓いだ。


相手チームはコーナーにガードを置こうとするが、ショートして届かなかった。


「友利!もう一回!」


「今度こそ~」


「力むなよ!」


友利がまたひょろひょろとデリバリーする。


「イエス!」


黒崎からスイープの指示が飛ぶ。


「っいくぞ!わへい!」


「はいっっ、師匠ししょー!」


「「ダブルバーニングスイープ!!」」


「お前ら騒がしい!」


黒崎の苦笑。


なんとか二人のスイープでハウス前まで持ってくる。


「ナイススイープ!」


「旭先輩、わへい君ナイスです!」


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