第五章 八月その18

僕達四人、カーリングホールに足を踏み入れる。


僕はいつも通り一礼する。


僕が現金なのか、所詮その程度の感情なのか。


当たり前だが、カーリングホール内は真夏の外との気温差がすごかった。


カーリングホールに入ると、今までのもやもやした気持ちが和らいでいった。


リューリとリョージさんの事を考えるとふつふつと沸き上がる昏い嫉妬も、カーリングホールの冷たい空気が浄化してくれたようだった。


清々し空気を胸一杯に吸う。


剣道をやっていたときもそうだったが、道場の空気を吸うことで自分のスイッチをONにしていた。


同じようにカーリングホールの空気を吸い、僕は頭の中を切り替える。


『よし、集中』


準備運動の後、アイスの上でいつも通りウォーミングアップをする。


「今日は滑りませんね」


「そうだな。霜が降りたかな」


「試合が進めば滑るようになるか」


「このシートはストーンのゴミをしっかり落とした方がいいですよ」


「クリーンはしっかりしないとダメだな」


黒崎と旭先輩で話している。


旭先輩がデリバリーし、黒崎がタイムを計っている。


僕もふむふむと聞いているが、実感が全くない。


「ダメです。僕ショートしちゃいます」


友利が力なく言う。


「友利!任せろ!俺とわへいで引っ張ってやる!」


「馬車馬ばしゃうまのごとく働く!任せろ!」


旭先輩と僕でにかっと笑う。


「友利!ハウスの手前で止まるぐらいでいいぞ!ハウスの中狙うと後々はスルーしそうだ」


「了解りょーかいー」


対戦相手も到着し、ウォーミングアップを始める。


初戦は地元の企業チーム。


僕から見るとどの人も強そうに見える。


マイブラシ、マイシューズを持っている人もいる。


「「よろしくお願いします!」」


全員と握手をして、試合が始まった。


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