第四章 七月その9

「そろそろ終わりにしようか」


一時間程練習を続けた後にリューリの動きが目に見えて悪くなってきたため、僕は練習を打ち切ることを提案する。


「あら、私はまだ練習したりないわ」


「疲れが出てる。止めておこう」


カーリングは氷上で行うので見た目以上に体力を使う。


練習前に少し食事をしておかないと、エネルギー不足であっという間に動けなくなってしまう。


リューリは身体つきが細く、いかにも寒さに弱そうだった。


「もっと脂肪つけた方がいいんじゃないかな…なんて口が裂けても言えないか」


「聞こえてるわ」


「脂肪はともかく、体力不足だね」


「はっきり言われると癪だけどご名答」


「それで…今日は…」


言いたいことを言おうとして僕はちょっと照れる。


「ご満足頂けましたでしょうか、姫」


リューリは唇に人差し指をあて、少し考え、


「まだまだ、もっと私を気持ち良くさせて欲しいわね」


微笑みながら答えたのだった。

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