第四章 七月その7

リューリは怒り出すこともなく、僕の言葉を受け止めたようだった。


「…耳に痛い言葉ね」


ふぅっと息を吐き出しながらぽそりと呟く。


「良薬口に苦しっていうけど。耳に痛い言葉はきっと真実ね」


…心当たりがあるのだろうか。


僕は背中に嫌な汗をかく。


「男の子はヤりたいだけ、か。あなたもそう?」


一瞬聞かれたことの意味が分からず戸惑う、僕。


「わへいも私を抱きたい?」


頭をハンマーで殴られたような感覚。


彼女に対してここまで踏み込んだ会話をしてしまった。


こんな会話する資格が僕にあるのだろうか?


「生物的には…Yesかな。それは僕が男で君が女性だから…本能的にそうなるよ」


…自分でも言い訳がましいと思う。


「一人の人間としては、Whoa《ウォー》。そんな覚悟はないよ」


「…そうよね。私はね、私をよく理解してくれる人に寄りかかりたい。私を、ね気持ち良くしてくれる人といたい」


そこでリューリは突然ふふっと笑い出す。


「さっきの会話…ね」


さっきの、とは野山先輩に突っ込まれた会話の事だろう。


「気付いてた?なんていうか、その、男女の事後みたいな会話」


「…気付いてた。野山先輩に聞かれてるのも分かってた」


「ふふっ。あなたも意地が悪いわ」


「君も相当だけど」


「カーリングの会話であんな話になるのね。知らなかったわ」


僕は先ほどの会話を思い出す。


そして、はっとしてリューリに話しかける。


「リューリ、その、もう一度僕と…しないか?」


なんだか周りがまたざわっ、としたようだが気にしない。


「次はもっと君を気持ち良くさせてみせる」


「カーリングの話、よね?」


「Yes」


僕は勢い良く頷いた。

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