第四章 七月その6

「わへいも何か飲む?」


「いや、僕にはこれがある」


僕は先ほど“リョージさん”からもらった冷たい“あたたかーいお汁粉”を取り出す。


「なにそれ?」


「君の彼氏が押し付けていった」


「リョージさんが?」


「そう。そのリョージさん」


お汁粉の缶を振り、かちりと開ける。


『…まずい』


案の定冷えたお汁粉というものは美味しくなかった。


そのどろどろした食感、甘ったるさ、リョージさんの存在、リューリの彼の呼び方、それらが様々に混ざりあって僕をいらいらさせる。


「…付き合っているの?」


聞いてしまった。


「付き合っているわ。たぶん」


「でも彼は結婚している」


「奥さんには愛されてないって言ってるわ。可哀想でしょ?」


また一口お汁粉を飲む。


やはりまずい。


「それに…彼といると楽なのよ。他の男の子といるより」


「そんなの、当たり前だろ」


彼女の目を真っ直ぐ見る。


「同年代同志で付き合えばお互い経験がないから、お互いに意見が合わなくてぶつかり合うし、ケンカもする」


『お説教になる、止めておけ』


僕の中の僕が止めようとする。


「でもその中でお互い相手に合わせて変わっていくのが、自然なんじゃないか?相手が歳上なら、そりゃあ甘やかしてくれるからケンカなんか起こる訳がない。相手は…」


『止めておけ』


もう一度僕が止める。


「相手からしたら、若い恋人は繋いでおきたいから、我が儘放題させてでも手元に残しておくよ。男なんて…」


『関わるな』


「男なんて、君とヤりたいだけだ」


言って僕は目を反らす。


そして、激しく後悔した。

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