第四章 七月その5

「…今日はどうしたの」


リューリがぐったりしている僕を気遣う。


「…ごめん。気持ちが乗らなかったかも」


僕は息を整えながらなんとか答える。


「…そういうことはあるわ。気にしないで」


彼女の額にも汗で髪が張り付いている。


上気した顔が綺麗だった。


「いや、でも早すぎたっていうか…上手く立てなかったし」


「及び腰だったわ。けど私もあなたを乗せられなかったわ。もっと時間をかけて、ゆっくりやっても良かったわね」


「運動量でカバーしようとしたけど焦ったかな」


「…最後は中でって言ったでしょう?」


「でも中にして万が一のことがあったら君に迷惑をかける」


「私達は運命共同体だわ。行動の責任はお互いで取るわ」


「中途半端になったかな。ごめん」


「そういうことは言わないの。私、シャワー浴びてこようかしら」


彼女が髪をかき上げて立ち上がる。


「すとーっっっぷ(`Δ´)!!!」


野山先輩が僕らの間に入り込んだ。


「あらハナ。来てたの?」


「来てたのじゃなーい!なんの話をしてるんだ!?」


「いや、さっきまでの練習を振り返ってたんですよ?今日はなんだか僕がイマイチで…ハウスの中にもストーン置けなくて」


「練習はいいけどその、会話の内容な?見てみろ!?周りがざわざわしてるだろ」


野山先輩に言われて周りを見ると確かにやけに注目されていた。


僕とリューリは練習が終わり、二階のラウンジで今日の練習を振り返っていた。


「なんのことか分からないわ」


「分かりませんね」


「もう、いい」


野山先輩が呆れる。


「行くぞ、黒崎」


「はいはい」


後ろに控えていた黒崎が野山先輩に続く。


野山先輩達もミックスダブルスの練習に来たのだろう。


『今度は練習に誘おうかな』


今回の練習はリューリとチームメイトとしての練習だから、二人で練習するのは仕方ないのだが。


なんだか知り合いを出し抜いたようで後ろめたくなった。


「飲み物買ってこようかしら。この後ミーティングしたいけど時間大丈夫?」


「まぁこのあとはうどん茹でるだけだからね」


下を見ると野山先輩と黒崎のチームが練習を始めていた。


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