第三章 六月その12

「まぁ知らなくても無理ないかな」


部長が僕達カーリング初心者にミックスダブルスについて教えてくれた。


ミックスダブルスとはオリンピックでも正式な種目になった競技で男女一人ずつ二人で一チームを作る。


得点方法は四人で行うカーリングと同じだが、ミックスダブルスのストーンは一チーム五投。


最初の一投と最後の一投は同じ人が投げる。


また最初からストーンが配置されているのも特徴だった。


その他細かなところが違ってくるが概ねそのような競技だった。


「…で、何故学園のメンバーとミックスダブルスを組むんですか?」


部長に聞いてみる。


「目的としては、個人の技量の上達、目標は去年から町内で行われるようになったミックスダブルス大会への出場。理由としては学園だけではメンバー、特に男子が足りないから。みたいよ?」


個人の技量によっては学園のメンバーとは全く釣り合わないだろう。…良いのだろうか?


そしてチーム分けについてだが。


さっきからリューリの視線が気になる。


何故僕を見るのだろうか?


「…」


つかつかつかとリューリが近付く。


「あなたに決めたわ」


僕を見て言うので僕は後ろを振り返る。


「後ろには誰もいないわよ。こっち見なさいよ」


「いやいやいや、人格的にはともかく、どう考えてもカーリングの実力が釣り合わないだろ?」


「人格的にってなによ?」


「もっと真面目にカーリングした方がいいぞ?」


「私は真面目にやってるわ」


「君、パートナー見る目なさすぎだろ…そんなだから…痛っ」


リューリからローキックが飛んできた。


「カーリングは協調性のスポーツなのよ?実力だけじゃないわ」


「僕と君のどこに協調性があるんだよ」


「あなたは私に意見出来るでしょう?私もあなたに遠慮はしない。一方的な関係は嫌なのよ」


「えーっと、痴話喧嘩はそれくらいにしてくれない?」


部長が遠慮気味に声をかける。


「…いつからそんなに親しくなった…」


野山先輩が引き続きジト目で言う。


「まぁリューリちゃんがいいなら、わへい君をお願いしたいけどいいの?リューリちゃんに得るものはないよ?」


「…部長、さすがにそれは酷いです」


僕は抗議するが聞き入れてもらえないようだ。


「構わないわ」


リューリが髪をかきあげながら言う。


「私達、相性良いんです」


ざわっとなる皆。


これは絶対誤解されただろう。

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