第三章 六月その11

六月のある練習日。


今日は私立学園のメンバーとの合同練習をしていた。


うちのカーリング部では顧問の先生にカーリング経験がなく、たまに私立学園のメンバーにコーチをしてもらっているのだった。


そして僕達はテイクアウトの練習をしていた。


「頭の中でイメージを作るんだ」


「イメージ…」


「どれくらいの強さで当たってどれくらい相手のストーンをずらすか。事前に頭の中でイメージを作るんだ」


「イメージと言われましても…」


悩む僕。


「わへい、こうするんだ!」


旭先輩が無駄に叫ぶ。


最近だいぶ暑苦しいな、この先輩。


そして旭先輩は目を閉じた。


「ええい…一番熱量の高いストーンだ!……あったれぇぇぇ!!」


無駄に叫びながらストーンをリリース。


これが見事に相手のストーンをテイクアウトさせる。


「っやったぁ!」


両拳を合わせる。旭先輩。


「…旭が敵のストーンを阻止してくれた。あれが強化人間の仕事だっ…て何を言わせる」


旭先輩のノリに野山先輩も付き合う。


そんな様子を私立学園のメンバーも笑いながら見ていた。


「今のは極端だけど、ハナの言葉も一理あるわ」


目を細めてくくくっと笑いながらリューリがやってくる。


「スーッとリリースして、ククッと曲がりながら、カーン、ドーンってイメージね」


「うん、いや、なるほど分からん。なんだよ最後のドーンは」


「弾けるイメージだわ」


「うん、よし分かった。黙ろうか」


僕もだいぶ私立学園のメンバーと打ち解けてきたと思う。


「なんだ、しばらく見ない内にずいぶん仲がよろしいようで(`ω´)」


野山先輩がスーッと僕の後ろに回り込む。


「そんなことはないと思いますけど?」


「憎まれ口を叩き合うだけの仲だわ」


「ふーーっん?」


ジト目で野山先輩が睨む。


注目ちゅーもく!」


手をパンパンと叩きながら部長が言う。


「今度学園のメンバーとミックスダブルスのチームを組みます!」


ざわざわと皆が騒ぐ。


「チームは私達である程度決めるけど希望があったら聞きます」


より一層ざわざわと騒がしくなる。


リューリが何故か僕を見る。


「…ミックスダブルスって…なんですか??」


僕の言葉にリューリ、野山先輩が溜め息をつく。

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