第三章 六月その3

僕らの試合が終わった後でも、女子の試合は続いていた。


野山先輩のチームとリューリさんのチームの試合。


…だが、やはり野山先輩達の分が悪いようだった。


僕の素人目で見てもリューリさんチームのショットの精度は圧倒的だった。


それでも、実力差があっても野山先輩達は諦めない。


ふと、野山先輩と目が合う。


キャスケットと眼鏡の下の目は笑っているように見えた。


自分の両目に指差しし、そのまま僕に指差しをする。


『たぶん見てろよってことなんでしょうけど、そのジェスチャーは監視してるぞ、というジェスチャーですよ…』




黒崎が僕の横に立つ。


「ハナさんは、いつも負ける側なんだ」


ぽそりと呟く。


「華やかになれない、花を持たせる側。でもまぁ多少卑屈でも諦めはしないんだな」


野山先輩がスイープする。


その試合はスマートには見えない。


泥臭くてバタバタしていた。


でも、見ていて元気の出る試合だった。


最後に相手チームと握手をして、先輩達も完膚なきまでに負けたのだった。

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