第二章 五月その6
「腕で投げてる。もっと身体で投げるんだ」
チームとしての練習を重ねながらも、個人としての技量を上げるため僕は野山先輩の指導を受けていた。
今まではフォームを安定させようとしていたが、チームとして練習をしていくと、当然どこにストーンが止まるかが重要になる。
その結果、僕はストーンの行き先ばかりを気にしてフォームが崩れ、腕で細かな調整を行うようになってしまったのだった。
「ハックに着いたら必ず手順を確認するんだ」
僕はハックに左足を乗せ(左利きの僕は皆とは逆の左足を乗せる)両足を揃え、ブラシの持つ位置、ストーンを構える場所、それぞれ確認していく。
腰を浮かし、右足を半歩下げ、左手のストーン、右足、左足と一瞬の内に滑らせて行き…ストーンをリリース…した瞬間に転んでしまった。
「ストーンで体重を支えてるからだなー」
言われた事を僕は剣道に例えて置き換える。
「鶏卵を握るがごとし」
剣道の竹刀の握り方の基本。そんな言葉が頭をよぎる。
「週に二回じゃやっぱり回数が足りないか…」
先輩がぶつぶつ言っている。
「フォームの練習だけ徹底的にやるか…」
まだぶつぶつ言っている。
「わへい、お前さん日曜日は暇か?」
「…はい。大丈夫ですよ」
「なら決まりだな。10時からでいいか。一時間やるだけでも違うぞ」
「…はぁ」
「集合は9時30分に私の家の前だ。遅れるなよσ(゜Д゜*)」
「…はい?」
先輩と二人でカーリングとは言え待ち合わせて二人で練習?
「…先輩それは二人でですか?」
「一人じゃ練習にならないだろ?」
「それって…」
『デートじゃないですか?』
という言葉を僕は飲み込んだ。
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