初めてのお産
帆高亜希
第1話
私、
ここは地元の産婦人科待ち合い室、ピンク色を基調とした優しい空間の中、女性たちが診察を待っている。
私と同じ妊婦さんはどれくらいいるのかな?
正直自分が結婚して妊娠できるとは思っていなかった、長年婦人科の病に悩まされ比較的若いうちに不妊宣告をされたから…。
待ち合い室にいる誰もが望まれた妊娠をしているとは限らない、かつての自分のように憂鬱な気持ちを抱えながら治療のために待っている人もいるかもしれない…あるいはもっとつらい状況の人もいるかもしれない…そう思うとむやみやたらに周りを見渡すことができず、ひたすら院内に置いてあった雑誌に目を通すことしかできなかった。
「ちょっと!
どこかで聞いたことのあるような声に旧姓で呼ばれ、思わず目を向けた。
声の主は自分と同世代くらいの女性で、ややつり目の、まばらな茶髪に濃いめのメイクで派手な服装だった。
一瞬誰だっけ?と思い出している間に女性は間髪入れずに、
「やだなぁ、アタシのこと忘れちゃった?アタシよアタシ、
名乗ったのと同時に思い出した、高校時代の同級生で卒業と同時に妊娠し出産した人だった。
相変わらず派手だなぁ…。
「やだっ、もしかして今ごろ出産?アンタって相変わらずドンくさ〜!アタシなんて二人目の孫が産まれるんだよー!」
遠慮のないマシンガントークも相変わらず、すかさず隣に座っていたお腹の大きな若い女性が、
「母がすみません…ママ、失礼でしょ!」
たしなめる、目元が
お互い軽く挨拶をするも、
「いやいや〜、昔っから
遮るかのようにイタいお言葉。
「もうママってば!自分は高校卒業と同時にデキ婚しちゃって即別れちゃったでしょう?この方はママと違ってきっと慎重なのよ」
娘さんからの思わぬ……これって助け舟??
「なによ、アンタだってデキ婚で人のこと言えないでしょう?」
言い返す。
私はどうしたらいいかわからず、タジタジ…。
それにしても42歳で二人目の孫か、早いよなぁ…とボンヤリ考えていたら、そもそも普通の人より早くにおばあちゃんになるのに、なぜ自慢げにされこちらがディスられなきゃならないのか、よくわからなかった。
「予定日はいつですか?」
娘さんが話しかけてくるので、
「再来月くらいの予定です」
普通にこたえる。
「あらあっ、ウチと同じくらいじゃん、ママ友になってもらったら?」
またも
はっきり言って冗談じゃないって思った、そもそも彼女とは高校3年間同じクラスだった腐れ縁なだけで、特別仲良かったわけじゃなかったから。
けれども、
「うわあっ、自分の母親と同級生だった人のお子さんとウチの子供が同級生って、なんか運命感じちゃいますねー!ご迷惑でなければ色々情報交換しませんか?」
くったくのない笑顔を向けられ、悪い気がしない。
初めてのママ友はかつての級友の娘さん…こういう縁も悪くはない。
初めてのお産 帆高亜希 @Azul-spring
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