一撃必殺

秋月蓮華

一撃必殺

【一撃必殺】


私が剣を学んだのは才能があったから以前に何となくだった。

その編にあったからぐらいの理由だ。それがそこそこに才能があって、

良い師匠について学べたからそれなりの腕前になって、


「お前は何を考えている」


「とりとめの無いこと」


ドラゴンライダーの彼が話しかけてくる。現在、私はドラゴンに乗って空の上だ。

私が作ったギルドに所属している者たちが、依頼をしに行ったら別のギルドと鉢合わせをして、

そのギルドがとんでもないことをしたので救援依頼が来たのだ。

とんでもないこと、それは、


「……地中亀か」


「わぁ……でかいねぇ……」


拠点としている町からドラゴンに乗ってくればすぐだ。速いよねドラゴンとなりながら、

私たちが見たのは巨大な亀だった。

小島がそのまま亀になったような生き物が、四匹、暴れている。

報告に寄れば彼等はずっとそこで寝ていたのだが、別のギルドに起こされて、

とてもとても不機嫌になって暴れているようだ。


「いけるか?」


彼が聴いてくる。


「多分?」


「……いけるな」


「いけるよ」


ため息を彼がついてくる。謙遜するなとかそう言ったため息だ。

私はそんなに強くは無い。

亀は大暴れをしている。

そう言えばかつて生きていた世界で、でかい亀の映画があったっけ。

見たことがないけれども。存在は聴いたことがある。

それに似ている黒い生き物は知っている。テレビでやっていた。

かつて住んでいた世界にそれが現れて、人間達で一生懸命追い払って、電車をぶつけたりしていたっけ。


「速くしろ」


はいはい、となりながら私は右手を一度握って開いた。

そこから淡い光が溢れて、一本の両手剣が現れる。私の身長と同じぐらいのやや太めの刀身だ。

冒険に出て、入った遺跡で運良く手に入れた剣で、私の相棒でもある。


「光あれ」


今回は光にしておく。

言ってみた台詞は神様の言葉だったか。短くて便利だから、

起動合図はコレにしている。剣は光に包まれた。


「行ってこい」


「行ってきます」


私はドラゴンの背から飛び上がる。

着ている機械鎧がアシストをしてくれるため、短時間なら飛べた。

メカメカしい外見をしているのだけれども、見た目よりは軽い。

これにダメージ軽減機能とか空を飛ぶ機能とかついているあたり、かつて滅んだ文明は、とても凄かったみたいだ。

今も遺跡や遺産には世話になっている。

そのまま私は飛んでいって、亀たちの頭上へとやってきて、


「許可は出てるんだよね」


ドラゴンライダーの彼がある程度破壊しても構わないと許可を取ってくれたので、私は心置きなく、剣を振るえる。

みんな上手く逃げてくれているだろうなとなりながら、


「ざくっといくよー」


両手で剣をにぎって私は剣を勢いよく横薙ぎで振りかざし、亀を切った。




「ギルド長ってやっぱりすごいですよね」


「たまたまだよ」


「……お前」


救援を終わらせてから、私は最近は行ってきたばかりの彼と合流した。

他のギルドメンバーも無事だ。たまたまと話したらドラゴンライダーの彼が睨んできた。

安全圏に彼等は避難してくれていた。


「そのたまたまで地中亀四匹、一撃で屠るか」


「条件が揃っていたのもある」


「黄金でとても綺麗でした。光!!」


私が使う剣は精霊剣だ。光の他にもいくつかの精霊の力を借りて、力を使える魔法剣。

カテゴリー的には魔法剣士に分類される私は、魔法自体はとても大ざっぱなので

精霊剣の援助とかいくつも必要ではあるが魔法が使える。魔術だっけどっちでもいいや。

ギルドメンバーが取れそうなものを取ってきてくれている。


「それにここも戻さないと駄目だろう。住民の迷惑だ」


「変なものを起こしてくれたな」


「寝ていたら良かったんでしょうけど、たたき起こしたら不機嫌になりますよね」


うっかり叩き越してしまったようだが、結果がこれだ。亀が大暴れ。

この世界はファンタジーなのでモンスターとか居るんだよ。


「おや、やはり貴方でしたか」


みんなで合流して帰ろうかとした矢先、私の苦手な声がした。

剣はすでにしまっている状態。相手の方は気さくなんだけれども、その気さくさが私はそこまで得意ではない。


「君か。メガネ」


「メガネですけどね」


「狂剣士さんですよ。ギルド長」


「そうとも言われていますが、私はそう名乗った覚えはないです」


あったら怖いよ。

自分自身で狂剣士とか名乗っていたら嫌だ。新人の彼が言うように彼は狂剣士と

言われている。もう一人、彼クラスの厄介な相手も居るが今日は居ないようだ。

居ない方が良い。

身長は百八十センチを超えていて、優男みたいでメガネで外見は二十代ぐらいで

着ているのは黒い鎧で戦斧を持っている。剣も使うが斧も使うというか、

斧で相手を叩きつぶすの楽しいんですよとか昔に話していた。


「お前も仕事か」


「帰り際です。変な武器や能力を持った相手を消してきたというか」


「またか」


「たまにいるんですよ。妙なことを言う強い武器や能力を持った者が」


またか、とドラゴンライダーの彼が言うのは狂剣士が好んでソレを狩るからだ。


「どんなことを話していたんですか?」


「せっかくトリップして神から力を貰ったのにとか、ハーレム作りたかったのにとか」


「よくわからんことばかりいうやつがいるな」


「依頼があったので剣でそぎ切……地道に倒しましたけど」


「君は依頼は守るヒトだなぁ」


私は以前の世界で死んで、この世界に赤ん坊として生まれてやってきたタイプだが、

ごくたまに……とはいえ狂剣士が定期的に屠るぐらいには……別の世界から人もやってくる。

狂剣士が好んでいるのは大抵は謎の力を持っていたり武器を持っていたりするが、

そう言う相手が力量差が分からなくて死んでいくのが楽しいからで、

同じぐらいに力を持っていたら、殺し合いが楽しいですけど途中で脱落してばかりなんですよ、とか

話していたりした。前に。


「町に帰ったら奢りますよ。せっかくですし」


「考えておくよ。……神殿の報告とかよろしくね」


「毎度のことだが分かった」


皆の様子を見てくると私はその場から離れることにした。新人の彼を手招きしておく。

ドラゴンライダーの彼に事務処理を任せておいた。





「ひゃっはーしたくなるんですかね。そう言う人達って」


「みたいだね」


「力とか振るったら危ないじゃないですか。ちゃんと使えるようにならないと」


彼も実は別の世界からコチラにやってきた者だったする。伏せておけとは話しているが、

そして私が別の世界で死んでコチラに転生したことは誰にも言っていない。


「私も狂剣士にあってその手の人が居ると聞いたぐらいだからなぁ」


「あの人とどんな風に出会ったんですか。慕ってるみたいでしたけど」


「……たいしたことはないよ? 向こうがどことなく気に掛けているだけで」


私も彼も、ひゃっはーしたい気持ちは分からない。その差はどこにあるのだろうかとなったが、

運かも知れない。後はやる気。


「ギルド長の剣の光、とても綺麗でした。ハイパーペンライトって感じで」


「ペンライト……」


「もしかしてこの世界、遺産でペンライトとかないのかな……」


「君が良いのなら良いのだろう」


曖昧な回答をしておいた。

ペンライトは知っている。ペンと言うよりも太い警棒みたいなアレだ。家にあった。

ライトとして使うにはとても便利で姉さんの知り合いがくれたんだよな……。

剣の光をハイパーペンライト扱いされて、ドラゴンライダーの彼が意味が分かっていたら、

怒りそうだが私の方は笑ってしまった。

ハイパーペンライト。

いわれとかいくつもあっても、私の剣は、それで、いい。



【Fin】

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