チョコ三昧 atバレンタインデー
ピロピロピロリン
カゴを一つ手に取り、持ち手を腕に通す。
「んっと。」
いつもは夕方に寄るから、朝だと変な感じがする。
うぅん・・・・・・二人は何を買うのだろう。
そもそも、友チョコってどういうのを買うのがいいんだろう。
わ、今日がバレンタインデーだからなのかな。チョコ菓子の種類がかなりあるような・・・・・・。
あ、これいいな。紅茶にも合いそうだし・・・・・・って、4個入りかぁ。
二人で分けるなら丁度いいけど、三人だと分けられないなぁ。
ビターチョコ・・・・・・うぅん。チョコって元々苦い物だったし、今日みたいな日には苦いやつに挑戦してみるというのも・・・・・・。
最初、チョコは薬として飲まれていて、食べるものじゃなくて飲むものだったんだっけ。味はカカオ豆をただすり潰したものだったからとにかく苦かったらしい。
それからスペイン人のヴァン・ホーテンって人が美味しくできないかと考えた末にできたのが、カカオ豆からココアバターを絞ってできたのがココアで、そのきっかけからイギリス人のジョセフ・フライという人がカカオ豆をすり潰して、砂糖、ココアを加えて作られたのが、今の食べるチョコレートだとか。
ちなみに、どうしてバレンタインデーにチョコを送り合うようになったかというと、昭和33年にチョコレート業者の人が「バレンタインセール」としてチョコを売り始めたのがきっかけらしい。
うぅん・・・・・・。
ずっと見てるけど決まらない。
二人とも、もう買っててラインで何か来てないかな。
スマホスマホ・・・・・・う、まずい。早く決めないと遅刻しちゃいそう。
でも、被っちゃったら・・・・・・。
あっ。これなら大丈夫かな。
よし、これにしよう。
「お、お邪魔するッス。先輩。」
「待ってたしさくさく!こっちこっち!」
佐久間さんがおどおど、といった様子で教室に入ってきた。
「つかさくさくいいの?昼休みここに来ちゃってさ。」
「えっ?と、特に用事とかは無かったので大丈夫ッスけど・・・・・・。」
「いやさ?ほら、好きな人にチョコ渡したりとかしなくていいの?」
「す、好きな人はその。まだい、居なくて。」
佐久間さん、顔が赤くなってる。
「えー?そうなん?」
「そ、そうなんッス。」
と、急ぐようにして傍にあった椅子を引き寄せてそこへ座った。
「そ、それよりお昼食べちゃいましょ!」
ドン、と大きなお弁当箱が彼女の前に置かれた。
大きい・・・・・・私のお弁当より面積と高さが2倍くらい大きい。
「んだねー。チャチャっと食べてチョコ食べよっか。」
渡辺さんはというと、鞄から購買で買ってきたらしい焼きそばパンを取り出した。
「ん、分かった。」
お弁当お弁当・・・・・・彼女のお弁当の前だと、いつもよりも小さく見えちゃうな。
「「「いただきます。」」」
箸は・・・・・・あれ、無い?
忘れちゃったかな。
「上原っち。これ使う?」
と、彼女が割りばしをくれた。
「購買行ったときさ、何かに使えるかもと思っていつも貰ってるんだし!」
「あ、ありがとう。」
何かに使えるかもって・・・・・・パンなら使わないと思うんだけどなぁ。
「美味しそうなオカズがあったら一個ちょーだいとかできるっしょ?」
な、なるほど・・・・・・。
貰った割りばしを割り、お弁当の中身を食べ始める。
「んむ。」
ん・・・・・・美味しい。
使用人さん。朝から時間を割いて作ってくれてありがとうございます。
「ところで上原っちは誰かにチョコを上げるとかないのー?」
「えっ、だ、誰かって?」
「好きな人とかによ!居ないのー?」
す、好きな人・・・・・・好きな人かぁ。
・・・・・・・・・・・・え、っと。
「もしかして・・・・・・英語のあの先生とか?モテるみたいだねーあの先生。」
「え?あ、えっと・・・・・・あ、あの人モテるんだ。」
「先輩、もしかして・・・・・・そうなんスか?」
「ちっ、違うよ!好きな人はいないよ?ホントに!」
そういえばあの先生、廊下でチョコ貰ってたっけ。
全然知らなかったな。
「そっ、そういう渡辺さんは好きな人いるの?」
「あたしは居ないなー。」
即答。
渡辺さん、私があんなに顔を熱くしてたのが恥ずかしくなるくらい、さらっと言ったなぁ。
「つか、好きになるとかまだイマイチ分かんないんだよねー。あ、人の話聞いたりとかは好きー!」
「そ、そうなんだ。」
「おっし。んじゃ、チョコのお披露目といくー?」
と言うなり、渡辺さんが鞄に手を突っ込み、中から大きな黒い袋を取り出した。
「どうよこれ。一口サイズのやつが沢山入ってるやつ!色んな味が入ってるんだし!」
「あ、私はこれにしたッス。」
今度は渡辺さんが鞄から何やら取り出した。
「お、ドーナツ?美味しそうだし!その発想は無かったわー!」
「あ、えっと。どうせならお腹に溜まるものがいいかな、と思って。」
「なんかさくさくっぽいチョイスだし!」
「あ、私はえっと・・・・・・。」
んっと・・・・・・あ、あったあった。
「これにしたよ。」
「お、イチゴショコラかぁー。」
「お茶に合いそうッスね、そのお菓子。」
あ、言われてみればそうかも。
「ハッピーバレンタイン!略してハバタ!」
は、はばた?
「その・・・・・・先輩。それならハピバの方が・・・・・・。」
「えー?そう?ハバタかハバンかで迷ってたんだけど、ハピバかー。」
「ど、どっちもその、うん。響きがちょっと・・・・・・ちょっとダサいかも。」
「ま・・・・・・マ?」
「マ、ッス。」
「マ、かな。」
暫く彼女が硬直したかと思うと、
「ま・・・・・・まぁ、食べよっか!チョコ!」
「う、うん。そうだね。」
「は、はいッス。」
そして各々の買ったチョコのパッケージを開いた。
ん・・・・・・チョコの甘い匂いがする。
「んじゃあたし、上原っちのショコラいこうかなー。」
「あ、じゃあ私は先輩・・・・・・渡辺先輩の一つ貰いますね。」
「じゃあ佐久間さんの貰うね。」
半分がチョコになっているドーナツを一つ取った。
美味しそう・・・・・・だけど、入るかな。
お昼食べた後だから、少し不安になってしまう。
あ、でもいい匂い。
よし、いこう。
「んむ。」
ん・・・・・・。
「んむ、んむ。」
美味しい。
「あ、これアーモンド入ってるんスね。」
「そーなの?お得感でジャケ買いしちゃったから知らんかったし。あ、これ美味しいよ、さくさく。」
「あ、じゃあ一つ貰うッスね、上原先輩。」
「うん。一つじゃなくて何個でもいいよ。」
「そーいえばさくさく、ドーナツって一人一個?2個ってアリ?」
「あ、はい。でもこのドーナツは残して置いてくれると・・・・・・。」
「りょ!んじゃこれとこれ貰うねー。」
チョコってこんなに美味しかったっけ。
二人も、いつもより美味しそうに食べてる気がする。
そういえば、いつもは一つの長椅子に並んで座ってるから、正面からの顔ってあんまり見てなかったかもしれない。
二人とも、こういう顔をしてるんだ。
ふふ。
そうして、昼休みが過ぎていった。
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