キャラメリッチサンド atテスト勉強

 「あれ・・・・・・?」


 んと、あそこの角を右だっけ。


 ・・・・・・違った。


 雪が降っているせいなのか、普段の道が別の様に見えちゃうな。


 「えっと。」


 じゃあ、戻って・・・・・・あ、こっちか。


 ・・・・・・あれ?


 「学校の近くだから、えっと。」


 確か、GPSじーぴーえすってのがスマホで使えるんだっけ。


 えっと・・・・・・あれ。


 でもアプリにGPS三文字のやつって無いし、新しくアプリを入れなきゃなのかな。


 でも、時間掛かっちゃいそうだなぁ。


 ピコン


 あ、ライン。


 んっと・・・・・・。


 『着いたし!外で待ってる!』


 という文字と、カピパラが走りつかれて汗を掻いているスタンプを送信してきた。


 えっ、もう着いたの?


 あ、また。


 『あ、さくさくも一緒だし!』


 『先輩、今どこですか?』


 わ、わ。マズイ。待たせちゃってる。


 えっと、えっと。


 『図書館ってどこだっけ。』


 『ん?駅を出てすぐだし。』


 え、そうなの?


 あれ・・・・・・?私、学校前まで来ちゃってたんだ。


 100mくらい先に学校が見える。


 ど、どど、どうしよう。


 『私、電話しましょうか?』


 『ごめん。ありがとう。』


 助かったぁ・・・・・・。


 「先輩、今どこですか?」


 「んっと、学校の傍かな?」


 「えっ!学校前ッスか!?」


 「ご、ごめん!すぐ行くから。」


 「い、いえ。また道を間違えてしまうと大変なんで、歩いて来てくださいッス。」


 「う、うん。」 



 「ふわぁ・・・・・・。」


 おっきい欠伸あくび・・・・・・。


 「ちょっと静かすぎない?図書館って。」


 ちょ、声大きいって・・・・・・。


 「そ、そう?こんなものだと思うけど。」


 パラパラというページを捲る音とカリカリと紙にシャーペンを走らせる音と、コツコツとたまに足音。


 学校と比べたら確かに静かかもしれないけれど。


 「あー、逆に集中できないし。」


 と、彼女がテーブルにぐでっと上半身を乗せた。


 「あの、先輩。ここの問題って・・・・・・。」


 と、反対側に座っている佐久間さんが教科書を見せてきた。


 んっと、ここは確か・・・・・・。


 「ここの公式を使って・・・・・・あ、こっちの式の方が楽かな。」


 「解いてみるッス。」


 と、カリカリとシャーペンを走らせた。


 「さくさくも上原っちも、よく集中できんね・・・・・・。」


 「う、うん。家で勉強するときはこのくらい静かだしね。」


 「私も、慣れているッス。」


 「あー、なるほどだし。あたしいっつも音楽聴きながらだしなー。」


 と、耳を触っている。


 「でも、このままだったら補習になっちゃうんじゃない?」


 今回のテストでは40点分くらいが、丁度彼女が開いているページから出るとの話だから、猶更だ。


 所謂赤点は60点を取れなきゃだから、ここを落とすと大変な事になってしまうかもしれない。


 「いや、そうなんだけどさ。」


 ようやく体勢を元に戻し、シャーペンを持ち・・・・・・今度は溜息。


 あ、壁に掛かってる時計見てる。


 「あのさ、先にコンビニ行かない?帰りじゃなくてさ。ほら!気分転換!」


 「ま、まだ来て1時間だよ?流石に・・・・・・。」


 「あ、あの!私も頑張るッスから、先輩も!」


 「う・・・・・・なんかまぶしーし、その顔。」


 「あ、じゃあ勉強する科目を変えてみたらどう?」


 「なるほど・・・・・・やっぱ上原っち冴えてるし。」


 そう言ったかと思うと、ジジ、とバッグの口を開け、中から国語の教科書を取り出し、


 「あれ、国語ってどこだっけ範囲。」


 

 ピロピロピロリン


 「あー、あったかー。」


 「手袋、欲しいッスね。」


 「んだねー。」


 傍にあったカゴを一つ取り、腕に通す。


 「今日は私の番だね。」


 「ゴチになるしー。」


 「お世話になるッス。」


 さて、と。


 今日の気分はなんなんだろう。


 外を見ると、雑誌コーナー越しに綿みたいな雪がしんしんと降っている。


 マフラーをしてきて良かった。


 って、そうじゃなくて。


 駅の中は暖かいだろうけど・・・・・・できれば暖かい何かが食べたい。


 あ、でも。


 暖かいってなると、温めて貰えるお弁当とかになるけど、流石にそれは入らないしなぁ。


 飲み物も・・・・・・うぅん。高い。


 飲み物にお菓子となると、どうしても・・・・・・。


 うーん、難しいかな。


 ・・・・・・ん?お菓子?


 そっか、私って今日はお菓子の気分なんだ。


 そうだよ。スイーツコーナーも捨てがたいけど、あそこは棚から取り立てだと冷たいもんね。


 暖かい場所で食べる冷たいの、というのも贅沢でいいけどやっぱり・・・・・・。


 うん。お菓子の気分だ。


 と、なると・・・・・・。


 「ねぇ上原っち。あとでラインであそこ聞いてもいい?」


 「あ、うん。10時には寝るからそれまでなら返信できるよ。」


 「えっ、10時?早くない?明日学校無いじゃん。」


 「え?そう?」


 「あたしなんて1時までは起きてるし。あ、さくさくは?」


 「あ、えっと・・・・・・さ、三時ッス。」


 「おぉう・・・・・・休みを満喫してるし。」


 お。


 これだ、今日の私が求めているものは。


 棚から一つ取る。


 「お、なんかオシャレじゃん。」


 「ッスね。」


 キャラメリッチサンド、という・・・・・・ビスケットかな?


 キャラメルといえば・・・・・・日本で最初は「煙草代用」というキャッチコピーで売られていたのだとか。

 当時のキャラメルは300~500円とお菓子の中でも高く、その事から買う人は大人の人がほとんどだったとか。

 それから新聞が「煙草代用」というキャッチコビーを打ち出したんだっけ。

 

 パッケージには、ビスケットとそれに挟まれたキャラメルが、餅の様に伸びている様が載っている。


 ・・・・・・大人のお菓子かぁ。


 「二人とも、これでいい?」


 「おっけーだし。」


 「ッス。」


 そしてカゴに3つ入れ、レジへと向かった。


 「「「いただきます。」」」


 ピリ、と開けると・・・・・・おっ、高級感あるかも。


 中から4つの袋が出てきた。


 んっと・・・・・・一枚ずつ入ってるのかな。


 だとしたら、結構厚いなぁ。


 ビスケット2枚分くらいの厚さがありそう。


 ピリ、と袋の口を開けると・・・・・・わっ、間のキャラメルが飴細工みたいに光ってる。


 それと・・・・・・ビスケットの表面に砂糖、かな?


 どうしよう。このまま一枚取り出して食べちゃおうかな。はしたないかな。

 あ、でも。ビスケットの欠片が零れるかも。


 でも、あと3つもあるんだし、どっちにしろ零れちゃうかな。


 それに、袋から取り出した方が美味しそう。


 へへ。


 ・・・・・・よし。


 それじゃあ、いこうかな。


 「んむ。」


 あ、ビスケット結構しっとりしてる。


 そして、キャラメルのツルツルとした舌ざわり。


 あっ、口の中でビスケットとキャラメルがくっつく!


 そっか。だからしっとりしてるのかな。


 「んむ。」


 こうして舌で転がしても・・・・・・お、キャラメルの味が広がってきた。


 キャラメルとビスケットが同時に、口の中でトロトロと溶けていってしまう。


 ・・・・・・よし、2枚目は、と。


 う。ちょっとだけビスケットの端が欠けてる。ショック。


 まあいいや。先にそれ食べちゃえばいっか。


 しっとりしているから、欠片が零れる心配もないしね。


 「んむ。」


 ん。小麦の味はするけれど・・・・・・やっぱりキャラメルが無いから寂しい。


 「んむ。」


 ふふ。キャラメルと混じった。


 美味しい。


 「そーいえば、さくさく。」


 「あ、はい。」


 「3時までって何をしてんの?」


 「あ、えっと・・・・・・その、ど、動画をですね。」


 「あー、さくさくパソコン上手いもんね。」


 「で、でも。それでも時間が掛かるときありまして・・・・・・。」


 「マ?あんなに上手くてもそんなに時間掛かるもんなんだ・・・・・・。」


 そうして、最後の・・・・・・一枚を口に入れ、指についたキラキラな粒を舐めた。


 「「「ごちそうさま。」」」


 その時、いつもの・・・・・・よりは若干早い時間の列車の到着を告げるアナウンスが流れた。


 「それじゃあ帰ろっか、二人とも。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る