第9話 泉川女子高校3年C組 汐田かおりの証言
小川町警察署4階の相談室で泉川女子高校3年C組、
汐田は濃紺のブレザーに首元にややゆとりのあるえんじのネクタイの制服姿。短いスカートから伸びた、椅子にもて余すほどの長い脚と170センチ近い長身は現代っ子然としていて、警察署はいかにも場違いだった。
宮田朱里の境遇を把握するためのあくまでも任意での事情聴取だったが、汐田に怯えの色が窺えるのは、単に不慣れな場所だからではなく逮捕を危惧しているからだった。
汐田はやや鼻にかかった甘ったるい声で話した。やはりこの場に似つかわしくないが、作っているのではなく地声のようだ。
「いじめ、ですか・・・。いじめが原因で自殺したってことですか・・・。いじめ・・・。そういうのは、それに近いのはあったかもしれません。でも、そんなに酷い、自殺とかするようなのじゃないです、本当に。お金とったとか、教科書めちゃくちゃにしたとか、制服汚したとか、そうゆうドラマとかである感じじゃなくて・・・。彼女は学校休んだこともないし、クラスで問題になったこととかもなくて。それがいきなりそんなことになるんですか?3年生だからもうすぐ卒業だし、彼女はアイドルやっててもうすぐCDデビューで、それで自殺するんですか?遺書もなかったんですよね?いじめみたいなことをしていたのは悪かったと思いますし反省しています。みんな悪かったって本当に思ってます。でも、それが原因ってことは・・・。そう思いたいのもあるかもしれないけど。
でも、本当にそれが原因なんですか?いじめたかもしれないけど、応援もしてたんです。デビュー曲聴くの楽しみにしてたしCDだって買おうと思ってたし。
すいません。まだ心の整理がついてないし、なんか現実として受け止められなくて。彼女が亡くなったこともまだ信じられなくて。でも本当に彼女が可哀想で。なんでこんなことになっちゃったのか分かんないんです。本当にいじめが原因での自殺ではないと思います。信じてください」
汐田は長く垂れた髪で顔を覆い隠してすすり泣いた。
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