7
結論から言えば、戦いにすらならなかった。
こちらの攻撃はかすりもせず、落石鳥はといえば、巨大な翼を使った羽ばたきだけで私を完全に無力化していた。
いかな
暴風域ならぬ、防風域――
しかも、防風によって飛来する木片や、石つぶてを一方的に食らってしまう。いくら私がゴーレムで頑丈とはいえ、ダメージにも限界がある。
(なるほど。石の雨を降らせる、故に落石鳥――言い得て妙だ)
そんな致死的な風の中、アルは――私が吹き飛ばしたときに気絶したようだが――ちゃっかり
(だがアルの魔力とて無限じゃない! このままでは――!)
「ふん。要は、あの風さえどうにかすりゃあいいんだろぉ――」
「え……その声は……!?」
「ブッ飛ばせ、
その瞬間、風の向きが変わった。落石鳥を中心に吹き荒れていた風が一転、落石鳥を包みこむように渦を巻く! それだけではない! 凄まじい風圧によって生じた真空波が、落石鳥の体を引き裂いた!
「キュエエエエエアアアアッ!!」
「ったくよぅ。できもしねぇクエストを受注するからこうなるんだ。命知らずがぁ」
「ギ……ギルドマスター!?」
「俺だけじゃないぜぇ。手当たり次第、声をかけてある」
その言葉に応じるように、森の奥からぞろぞろと、ギルドメンバー達が現れる。昨日ギルドで見かけた顔も、いくつかあった。
「ど――どうして!? 私たちを助ける理由などないはず!」
「けっ。あんだけデカい声で
と、ギルドマスターは呆れた表情で、メンバー達を指刺した。
「こんの馬鹿どもが、ど~~~してもあのお嬢ちゃんを助けてぇっていうから、仕方なく来たんだ!! そんだけだぁ!!」
「って、アニキは言ってるけどな。あのお嬢ちゃんの言葉に一番感動してたのはアニキだぜ」
「うるせぇ余計なこと言うな馬鹿タレがぁ!! ……ま、そういうわけだ。今回くらい、大人しく助けられろ」
「ギルドマスター……」
そうか。一見、無謀にしか思えなかったアルの行動が、勇気が、優しさが。この人たちの心を動かしたのか。
(まったく……アルには叶わないよ)
こんな展開を彼女が想定していたとは思えないけれど、結局のところ、アルは無計画でこの窮地を乗り切ってしまったのだ。
Sランクの害獣を倒すなんていう、無理難題を。
「なに勝手に終わったつもりになってんだぁ! 落石鳥の首を落とすまで油断すんじゃねぇ!」
「ああ……!!」
そうだ。いくら優勢とはいえ、まだ決着はついていない。相手はSランクの害獣だ。
今後に及んで油断なんて、決して――
「本当ですよ。何を勝手に終わった気になっているんですか?」
「え――」
その瞬間。
まるでその場の空気がすべて凍り付いたかのように――何もかもが止まった。静止した。
(いや、違う。これは――)
「
ゆっくりと起き上がったアルは、にこり、と。
いつも通り、柔らかな微笑みを浮かべているのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます