「アルッ!」


 イトラエンジンを起動させ、ゴーレムの力を取り戻した私は、まず全力でアルを突き飛ばすことだった――まずは彼女の安全が第一。私と違って、彼女の代わりなどいないのだから。


 そして、アルを突き飛ばした反対の腕に、エネルギーを送る。限界ギリギリまで送る。鉄腕の噴出口から漏れ出した蒸気が、今か今かと爆発の瞬間を急き立てる。


 落石鳥の眼が、こちらを捉えるのと同時に――私は、その懐に潜りこんでいた。

 ――今だッ!


「スチーーーームインパクトォォォ!!!」


 バシュンという音と共に、肘にある巨大な押し子が起動する――同時に、腕に圧縮された蒸気が一斉に押し出される!


「おおおおおおおおっ!」


 そんな凄まじい空気の力を乗せて、私は拳を振るった! 当たれば問答無用で一撃必殺! 金剛石すら木っ端微塵にする、万壊の拳!


(Sランクの害獣だろうと、ただでは済むまいよ――!)


 どうか、この一撃で終わってくれ。

 そんな一縷の望みをかけた拳は、しかし虚しく空を切った。


(な――まさか、あの距離で回避できるのか!?)


 落石鳥は、紙一重で私の拳を回避していた。飛び散った七色の羽根が、頬の横を通りすぎる。


 落石鳥の瞳は、呆気に取られる私をじっと見ていた。


「キュエエエエエアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!」


 そして――いた。森中を揺らすほどの強烈な振動。もはや音撃といって差し支えないほどの、強烈な咆哮。思わず足が竦んでしまう!


(恐怖なんて感情は、とっくに捨てたと思ったんだがな――)


 しかし、そうは言っていられない。

 こうなった以上は――戦う他ない。


「来い、鳥風情が! ロストテクノロジーの意地を見せてやる!」


 かくして、Sランク害獣との死闘の火ぶたが切って落とされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る