2
マギデウス。
それが私の与えられた名前だ。
いつ、どうして、誰が与えたのかは覚えていない。数千年も前の出来事だから、忘れてしまった。
覚えているのは、私が
有体に言えばゴーレム――見た目こそ少女の姿を模しているけど、両腕は熊の胴体より太い鉄腕だし、一皮剥けば、血管ならぬ油圧ホースが張り巡らされている。
血の通わない鉄の機械。人のように喋る人形。
それが私、マギデウス。
つい最近まで眠っていたから――使命を果たして眠っていたから、私自身、自分がなんなのかよく覚えていない。
たまたま、本当に偶然。
アルが見つけてくれたから、ここにいる。
その恩義に報いるため、私は彼女と行動を共にしていた――のだが、このアルという少女との旅は、驚きの連続だった。
大仰な肩書も、世間知らずもそうだが、とにかく人が良すぎるのだ。
イトラ教関係者というだけで人に恨まれる立場であるというのは、私だって分かることなのに。
あの子はそれを全く考慮しない。
人の悪意すら、笑顔で受け止めてしまう。
(まぁ、そうでなきゃ教皇になんて祭り上げられないか――)
人々の行く先を照らす、暖かな光を体現するような人格者でなければ、教皇なんて務まらないだろう。いつの時代もそうだ――人々がどう思っているかは知らないが。
世界にはいま、文字通り暗雲が立ち込めていた。
天候が荒れ、凶作の年が増え、原因不明の疫病が蔓延している。人々はこの正体不明の現象を、あろうことかイトラ教会になすりつけたのだ。
曰く、世界を護る義務を果たしていない――とか。
曰く、税金を無駄遣いするだけの悪徳集団だ――とか。
(馬鹿馬鹿しい……全部、お前たちが招いた結果だってのに)
魔族を封印している光の塔の封印は、人々の信仰を動力として動いているにも関わらず――長い平穏は、人々から信仰を奪い去ってしまった。
(数百年前はもっとマシだったんだけどな)
本当に恐ろしいのは魔族ではなく、平穏の意味を考えずに過ごすことかもしれない――なんてことを考えながら、私は隣のアルを見た。
(この子にできるんだろうか? 人々に信仰を取り戻すことが……)
極論、それがこの旅の目的だ。信仰心さえあれば光の塔は本来の機能を取り戻す。そうなれば、再び魔族は封印される。
(だから教皇自ら
本当に、そんなことができるのだろうか?
十五歳なんてまだまだ幼い、この少女に。
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