リストカッター

朝霧

リストカット

 シルバーの拳銃の銃口を盗賊のジェインに向ける。

 引き金を引き、容赦なく乱射。

 一発目は外れ、二発目で軽傷を負わせる。

 三発目も命中、そろそろトドメか、と思った直後に仲間少女が硝子の鎌でジェインの首を跳ね飛ばしていた。

 そしてジェインが立っていたその地には、その肉が転がっている。

 ――エリア制圧完了、クエストクリア。

 二回リセットしたが、まあいいだろう、途中で射撃の腕も上がったし。

 さてと、このジェインの肉をどうするかフィートはついてるから喰ってもいいけど……

 腹は満ちているし、呪い付きだと面倒だ。

 なんて迷っているうちに仲間少女がその肉を拾い上げて、喰らった。

「あ……」

 ……まあ、いいだろう。

 少女が肉を喰っている間に周辺を見渡し放置していたアイテムを拾う。

 薬草はとりあえず全部収穫、いざという時の保存食になるし。

 ついでにリンゴの木にタックルしまくってリンゴをゲット。

 怪しいものは捨ててそれ以外の全て食べたら食いすぎ状態になった。

 そんなことをしている合間に肉をペロリと平らげた仲間少女が自分の周りをウロウロとしている。

 紐で縛ってあるから遠くには行けないようになっているのだけど、あんまりうろちょろされるのも怖い。

 うろちょろしていた仲間少女が先ほど捨てたリンゴを拾い上げて口にする。

 あ!! おバカ!!

 そう思った時には既に遅く、仲間少女は胃の中のものを嘔吐していた。

「あーあ……」

 仲間少女が吐き出したものをそのままに、私は仲間少女を引き連れ街へと帰還したのだった。

 がちゃり、と玄関で物音がした、どうやらあいつが来たらしい。

 特に出迎えることもせずに画面に向き合い続けた。

 街へと帰還し、依頼主の元へやってきた私の足元に感謝の言葉とともに報酬が投げてよこされた。

 それを拾い上げる、報酬金と剣と指輪、後で鑑定しよう。

「……ミツキ」

 背後からの声に大体のことを察した。

「ごめんもうちょっと待って」

 それだけ返す、不服だろうがいきなりやってきたお前が悪い。

 街にある武器屋に向かう途中で、町民のシェーンが酔っ払った。

 よっしゃ、臨時収入臨時収入、っと。

 ちょん、と肩に手が置かれた。

 無視した。

 酔っ払ったシェーンに向かって私は歩く。

 酔っ払った人に対して“とある事”をすると、なんとびっくりその人の持っているお金を得られる事があるのだ。

 と言っても貰えないこともあるし、貰えても大した金額ではないこともある。

 それでも金欠気味の私は躊躇いなく酔っ払いシェーンに向かって、話しかける。

 そして“とある言葉”を囁こうとしたところで。

 放置していたマウスが勝手に動かされ、無情にも×印の上でクリックされた。

「ああ―――!!!」

 思わず叫ぶ、ひどい。

 街に戻った直後に自動セーブされたので、クエストクリアの記録は消えていないのはまあいいけど……

 それでもいきなり消された不快感はあるわけで。

 振り返って主犯を睨みつける。

 が、主犯はそんな視線を全く気にする様子もなく、仄暗い表情で私の手を取った。

「ミツキ」

「……はいはい、了解」

 強く握られ、引かれた手に素直に従った。

 ゲームはまた後で、また臨時収入イベントが起きるといいんだけど。

 手を引かれた先にはそんなに広くない浴室だ。

 それでもワンルームマンションである事を考慮するとそこまで狭くはないのだろう、トイレとも別だし、ちゃんと浴槽もあるし。

 このためにわざわざもう一つ追加で買った椅子をがららららー、と並べて互いに向き合って座った。

 わざわざ浴室に移動した理由は至極単純、事によっては少々汚れるからだ。

 その汚れを何かで拭いてゴミ箱にポイしてもいいのだが、ゴミを出した後、回収される時に誰かにそれに気付かれ、変な詮索をされるのも面倒だから。

 だけど浴室なら水でじゃーと流せばそれでオールオッケー、下水として流れてしまえば誰に見られる事も無い。

 これをする時は、いつも無言だ。

 基本的に声を発することはあっても、終わるまでは意味のある言葉はどちらも発する事はない。

 だから、いつもの様に何も言わずに無言で袖をまくった左腕を差し出した。

 薄い線が大量に引かれた左腕を。

 真っ直ぐ引かれた線は私の手首から一本ずつ細かいメモリのように引かれている。

 その数、計……数えた事無いから分からないけど、兎に角たくさん。

 線はとても細く、こちらから見て一番向こう側、つまりは掌側の線は、最初に強く刻み込まれた一本目を例外として、もう既に消えかかっている。

 引かれた線は腕側に向かって色濃くなっていき、グラデーションになっている。

 椎野は一番手首側の線から一本一本、最も色の濃い線まで、何本か飛ばしつつ順番に指先で軽くなぞっていく。

 ゆっくりとなぞるその指先は強い熱を持っている。

 その指先から目を放し、目線を上にあげると愛おしい物を見詰める様な表情が目に映る。

 お終いの線を名残惜しそうになぞった後、椎野は私の左手首を左手でがっちりと力強く掴んだ。

 完全に固定された左腕を無理に動かそうなどと言う抵抗は、随分前から止めてしまった。

 最初の何回かは直前になって恐怖に呑まれて抵抗しようとしたが、結局抵抗し切れた事なんて一回もなかったから。

 左腕を固定した椎野は、右手を、掌を下にして軽く上げる。

 その右の掌から、白銀の刃が伸びる。

 刃は音もなく伸び続け、10センチほど伸びた後に、同色の柄の部分が現れる。

 完全に伸びきったそれは、刃の方が若干長い小さなナイフの形になって、椎野の掌から落下する。

 落ちたそれを椎野は中空で難なく掴みとった。

 ――もう何度も見たので流石に慣れたが、最初はそのわけの分から無さに目を回したものだ。

 手品だと疑っていた時期もあったが、手品であろうがそうでなかろうが私にはあまり関係の無い事なので最近はあまり気にしないようにしている。

 椎野の手に握られたその刃物は片刃で、刃が非常に薄い。

 ナイフ、と言うには少々和風なデザインをしているので、おそらく小刀とか小柄(こづか)と呼ぶのが正しいのだろうけど、刃物について全く詳しくない私にとって、そんな事はどうでもいい。

 それは薄い割には丈夫で、鋼鉄でさえ切り裂くのだと言うのは本人談だ。

 実際にそうするところを目にした事は一切ないが、そのくらいの芸当は出来るだろうと思っている。

 椎名はその刃物の切っ先を最も濃い線の上側、私の左腕に当てる。

 そして優しく撫でるように、スッと横に引いた。

 その瞬間に痛みはほとんどない、ただ冷たさを感じるだけ。

 引かれた線から赤いものが溢れた頃に、遅れて痛みはやってくる。

「…………っ」

 毎度毎度のことだが、やはり慣れない。

 自分の引きつった声と、微かな笑い声が浴室に響く。

 みると口が裂けそうなほど歪んだ笑みを浮かべていた。

 溢れた赤は玉になり、今にもコロコロと転がりそうだ。

 それが転がり落ちる直前に、椎野は私の左手首を、ゆっくりと壊れものを扱うように持ち上げる。

 そしてその唇を寄せ、そっと押し付けた。

 痛みと、唇の生ぬるさに肌がぞくりと震え上がった。

 ぬるり、と生ぬるく湿ったものが、薄く細く露出した中をまさぐって、痛みに上げた呻き声が反響した。

 小さく湿った音はしばらく続いた。

 ここまで粘着質なのは珍しい、普段は指先でなぞるだけで満足することも多いというのに。

 ……音声だけなら致しているようにも聞こえるかもしれない、と痛みから逃れるために思考を回す。

 しかし現実はもっと不謹慎で、異常で、ある意味倒錯的だ。

 傷口に舌を這わせる椎野の表情は陶酔し切っていて、今にもドロドロと蕩け落ちそうなほどトリップしている。

 こくり、と小さく椎野の喉がなった。

 それから数秒、動きが止まる。

 そして名残惜しそうに舌先で傷口をひと舐めした後、椎野は顔を上げた。

「……痛かった?」

 無言でうなずくと、椎野はごめんね、と濡れた唇で囁いて、私の左手を名残惜しそうな顔で手放した。


 どうしてこんな事をするようになったのか。

 そのきっかけは半年前。

 私の妹が自殺した。

 もともと私の妹は所謂『メンヘラ』と呼ばれる類のものだった。

 感情がぐらっぐらで常に不安定、小さな理由で不自然なほど落ち込み、よく泣き、よく手首を切るような……そういう子だった。

 そんな妹に私は正面からぶつかり、手首を切った妹に怒り狂い、時には鉄拳制裁をし、時に目から汁を流しながら説教をした。

 妹が暴走した時に止めるのは私の役目であった、両親が何か言うよりも何故か、私の言葉の方が妹には響いたらしい。

 もし私がいなければ死んでいたかもしれない、そんな言葉が日常的に使われるような時期もあった。

 それでも今から二年と8ヶ月、わたしは大学に入学するために家を出ざるを得なくなった。

 正直言って、家を出てまでこの大学を受験する意味はあるのか、と悩んだ。

 それでも幼少期から憧れていたこの大学への夢を捨てきれるほど私は大人ではなかった。

 悩みに悩んで悩み抜いて、両親からもそれとなく地元の大学を勧められ始めた時、妹は言ったのだ。

 睦美は大丈夫だから、と。

 信用なんてできるわけがなかった。

 それでも大丈夫だから受験の為に勉強しろとせっつかれて、私は受験勉強に本腰を入れることとなった。

 その間、妹は時折ぐずったり、手首を切ったりする事もあったが、その回数は大幅に減った。

 情緒不安定になることも少なく、妹は劇的と言っていいほど変わった。

 そして絶対に「行かないで」とだけは口にしなかった。

 勉強の甲斐があって、私は見事大学に合格して、家を出た。

 私が家を出た後、妹は一度も泣かなかったし、手首を切ることも無かったのだという。


 今年のゴールデンウィークに帰省して、こちらに戻る直前に、お姉ちゃんパワーをチャージしたから睦美はまた頑張れるのだ~、とか笑顔で言っていたくらいだ。

 それなのに。

 妹はその一ヶ月後に、手首を切り刻んで死んでしまった。

 リストカット、なんて甘っちょろい物ではなかったらしい。

 左の手首がカッターによってぐちょぐちょに抉り切られていて、ところどころ骨が露出していたり。

 出血した大量の血液が、床を真っ赤に染め上げていたり。

 朝、リビングに来ない妹を不審に思って部屋の扉を開けた母親が、ショックで卒倒するような、そんな惨状だったという。

 どうして妹がそんな行動をとったのかは分からなかったらしい。

 彼女が手首を抉ったその日、学校でも何も無く、家庭内でも何も無く、それ以外にも何かが起こった様子もなく。

 ただ、まるで堰き止めていたダムがもう限界だと決壊したかのように、唐突にそうなったのではないか、としか推測のしようがない。

 妹の部屋の床に転がっていたスマホは、未送信のメール画面が表示されたままだったという。

 宛先は私、メール本文の内容は、助けてお姉ちゃん、だった。

 その話を聞いた時と、その後の事は、よく覚えていない。

 葬式に出た事は覚えている、とてもよく晴れていた事も。

 だけど葬式でのことは途切れ途切れでよく覚えていない。

 よく覚えてはいないのだけど、後で聞いた話、私の状態はいたって普通、だったらしい。

 妹が死んだ事で涙を流す事すらせず、受け答えもいつも通りに行っていたらしい。

 あまりにもその受け答えが普通すぎて、逆に心配した両親にしばらく実家に残るように言われたらしいのだが……その事も実はよく覚えていない。

 葬式が終わった後、気が付いたらこのワンルームマンションに戻ってきていた。

 本当にそんな感じだった。

 記憶が途切れすぎているせいで、この時の記憶は白昼夢でも見ていたかのように曖昧で、現実味が無くて。

 だからこの部屋に戻ってきて、ぼんやりと部屋の中心で座り込んだ時、実は妹が死んでその葬式に出た事は、何か悪い夢であるのではないか、そんな風に思った。

 そして自分はまだ夢を見ている最中で、目が覚めれば全て元通りになるのだ、と。

 そして私はふらりと立ち上がって、机の上に置いてあるペンケースから、カッターナイフを取り出した。

 これが夢なら、切っても痛みは無いし、痛覚があるとするなら、その痛みで目が覚めるだろう。

 そう思って、カッターの刃をかちり、かちり、と押し出して、左の手首に押し付けて。

「何、しているの?」

 声が聞こえてきた。

 振り返ると椎野が無表情で自分の真後ろに立っていた。

「手首を切ろうと思って」

 椎野がここにいた事に関しては何の違和感もなかった。

 その時はまだ夢だと思っていたし、現実だったとしても合鍵を渡しているからいてもおかしくは無い。

 だからそんな事を滔々と言って、椎野の存在を無視して、カッターの刃を左手首に押し付けて。

 切り裂こうとしたところで、カッターが静かに私の手から抜き取られた。

「……なに?」

 振り返って椎野の顔を見ると、暗い色の眼球が、こちらを見詰めていた。

「……そんなに、切りたいなら」

 椎野は私の左手を乱暴に掴んで、自分の手元に引き寄せた。

「“僕”が切ってあげるよ……!!」

 その歯ぎしりに近い言葉の直後、信じがたい事が起こった。

 椎野の右手から、白銀の刃が伸びて、小さな刃物が現れたのだ。

 しかし、それを見た私の反応は酷く薄かった。

 その時点でもまだ、これが夢だと思っていたからだ。

 ぼんやりと椎野の顔を見上げると、血走った目が、私の左手首を穴が開くほど注視していた。

 そして椎野は自分の右手から現れた小さな刃物を、私の左手首にあてがい、強く押し付けて、ゆっくりと力強く横に引いた。

 ギリギリと、刻み込むかのように、消えない証を刻むかのように。

 数センチほど線を引いたところで、赤く汚れた白銀の刃がカランと床に落ちた。

 刻み込まれた線から、真っ赤な血がドロドロと恐ろしいほど湧き上がって、床にボタボタと落ちた。

 溢れる赤を見詰める椎野の荒い息を、その時はぼんやりと聞いていた。

 その時私は、痛みを感じてはいたのだが、それでもまだ夢の中の出来事であるかのように曖昧だった。

 その状態でぼーっと椎野の顔を見ていたら、椎野は我慢が効かない、と言った様子で私の手首に引かれた線に唇を押し付け、舌を這わせた。

 その舌が、線そのものをなぞり、その内側を、こじ開ける様にまさぐって。

 その時、強烈な痛覚が、私の意識を揺さぶった。

「痛い……!!」

 そこで、私の意識は気付け薬を嗅がされたかのように、明瞭なものへと変化して。

 夢から覚めたかのように、完全に覚醒して。

 そこで、やっと妹の死を実感して。

 本当に死んでしまった事を、やっと理解して。

 そこで、やっと私は涙を流した。


 特殊な家系なのだ、と椎野は私の左手首に包帯を巻きながらそう説明した。

 椎野の遠い先祖に、自身の身体から太刀を作り出す特殊な体質を持つ人間がいた。

 その家系はその体質を引き継ぎながら今も続いており、椎野はその家系の遠い親戚であるのだと言う。

 椎野は本来、この力を使えないくらいその血が薄いのだが、先祖返りなのか何故かこのような体質になってしまったらしい。

 と言っても血が薄い為作り出せる刃の大きさはナイフサイズが限界であるらしい。

 この体質を持つ人間は、身のうちに刃を抱えていることが影響しているのか、無意識に血を求める性質を持っているのだと言う。

 血、と言うよりも、自らの刃で肉体を切り裂きたい、と言う衝動が。

 ちなみに血を舐めたのは、別に吸血鬼の様に吸血衝動がある、と言うわけではなく、あくまで刃物として血を求める衝動が行き過ぎてしまったものであるらしい。

 包帯を巻きながら、椎野は私に謝って来た。

 ずっとずっと、一目見た時から、君の事を斬りたかったのだと。

 だから私に近付いてきて、恋人になったのだと言う。

 ごめんなさい、そう何度も言う椎野に、私は別にいい、と答えた。

 それ以来、椎野は私の手首を斬るようになった。

 私もそれを拒否せずに、ただ受動的に切り付けられ続けている。

 どうして拒絶しなかったのか、その理由は今になっても分からない。

 ただ、あんまりにも苦しそうだったから、というのは多分理由の一つになるのだろう。

 そんな風に何とも言えない奇妙な関係だが、それ以外は実はとても健全な付き合いをしている。

 私はまだ椎野とそういった関係にはなっていないし、今後そう言う関係になる事も見込めない。

 というのも……顔や首筋はまだ自制が効くが……それ以外は、奴の理性が焼き切れるからだった。

 実は一回だけやばい時があった。

 あれは暑い夏の日だった。

 暑さに負けた私は日中から水浴びをして、軽く体を拭いたあと、肩にタオルをかけただけの格好で脱衣所から出て、キッチンへ。

 冷蔵庫にあったアイスキャンディを咥えて部屋に戻った。

 そこで響いたがちゃりという音、アイスクリームが詰まった半透明のビニール袋が、がさりと床に落下した。

 一瞬、互いの姿に呆けていた。

 まごうことなきラッキースケベだった。

 椎野の目が、大きく見開かれたところまでは視認出来た。

 だが、その後何が起こったのか、当時は良く分からなかったし、何度良く思い出してみても、何がどうなってああなったのか、その仕組みが良く分からない。

 気が付いたら私の身体は仰向けに倒れていて、椎野に馬乗りにされていた。

 その右手には、当然の様に白銀の刃物が収まっていた。

 倒れた時に思い切りぶつけたらしき後頭部の痛みによって、私は何が起こったのかやっと悟ったくらい、椎野の動きが分からなかった。

 馬乗りになった椎野のギラギラと理性の無い獣の様に輝く瞳、その視線の先は私の胸の中心、やや左寄り。

 その視線に性的なものは一切感じられず、ただそこに白銀の刃を突き立て、引き裂きたいという凶暴な欲望のみが存在していた。

 その時、咄嗟にアイスキャンディを椎野の口に突っ込んでいなかったら多分私は死んでいた。

 と言うか殺されていた。

 アイスを口に突っ込まれた事で椎野は正気に戻り、件の事をポツリポツリと説明したのだった。

 肌を見ると衝動的に斬りそうになるから、あまりそういう格好はしないでほしい、と。

 と、言うわけで、私達の関係は一部を除いてびっくりするくらい健全だ。

 着衣プレイ? ……そんな意味不明な単語は知らないなあ……?

 いつも通り簡単な治療を椎名にしてもらった後、私は再びゲームをすべくPCに向かっていた。

 手持無沙汰となった椎野は、どうやら私の後ろで私のゲームを観戦する事にしたらしい。

「ミツキ」

「……何」

 PCに向けた顔を逸らさずに聞き返す。

「いつか、君を殺させてね」

 再開したゲームの画面を見ながら答えを返す。

 町民のシェーンは酔わなかった。

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リストカッター 朝霧 @asagiri

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