第十回 東京に百戯を陳べ、北海に三山を起こす
※
この頃、異国の者たちは隋朝に朝貢しようとそれぞれの酋長たちを遣わしており、
煬帝はそれを喜び、彼らに中国の富貴を示そうと城内や近隣の
さらに、
▼端門は洛陽の宮城の南門にあたり、大赦の際などはここで宣言がなされました。また、その南には端門街という大街路がありました。
異国の使者たちはそれを見ると、「中国の繁華は聞き及ぶに勝る」とみな
煬帝みずからは端門に据えられた楼閣の上にあり、その様子を聞き知って得意満面、密かに人を遣わして異国の者たちに問わせました。
「そなたたちのお国にはこのような繁華な街はございますかな?」
異国に聡明な者がいないわけもなく、そのような者は街路樹に張られた綾錦を指さして申します。
「我らの国にはこのような繁華はございませんが、決して衣食に乏しいわけではなく、中国のように着るに困るような貧者はおりません。このように樹々に着せるくらいであれば、貧者に着せてやる方がよほどましでしょう」
そう言い捨てると
「異国の者どもが大隋を
さすがの百官もこれを諫めないわけにはまいりません。
「遠路を越えて朝貢に訪れた者を
煬帝も異国と戈を交わすつもりはなく、怒りを収めて使者たちの帰国を許したのでございました。
※
異国の者たちの朝貢を受けて煬帝の心はいよいよ驕り、ほどなく
「
「朕が皇后を忘れることがあろうか。東京まで遠路の不便を思って呼ばなかったのだ」
「それでしたら、妾は東京を目にすることなく終わるのでございますか?」
蕭皇后の恨みがましい言葉を聞いて煬帝は申します。
「そう
蕭皇后は喜び、煬帝のために酒宴を
※
翌日、煬帝は
「卿の才でなくてはこの任に堪えられまい」
そう言うと、煬帝はついに遊園の造営を虞世基に命じました。
洛陽に赴任した虞世基はまず遊園となる二百里四方の地の民百姓を追い出し、数万の民が家族を携え家財を引き、泣きながら立ち去っていきます。
その姿はさながら洪水大火に遭ったようでございました。
虞世基はそれを
ついで、堤の上には百歩ごとに
五池の北には
宮殿はそれだけに止まらず、十六もの宮殿が北海と五湖を結ぶ堀の傍らにも建てられ、その四方を守るように楼閣が連なっております
建物はいずれも
最後に、五湖と北海には皇帝が乗る
それのみならず、虞世基は珍しい草花と禽獣をことごとく洛陽に送るよう天下の郡縣に命じ、日ならず陸路水路より名花異草のみならず
※
いよいよ遊園は完成し、虞世基はその旨を長安にある煬帝に報じ、煬帝はすぐさま蕭皇后とともに洛陽に行幸いたします。
遊園に踏み入れば三山五湖が眼前に広がり、そちこちの美麗なる宮殿と楼閣が林間に見え隠れしておりました。
煬帝はその壮観を大いに喜び、顕仁宮の西にあたることから遊園を
第一を
第二を
第三を
第四を
第五を
第六を
第七を
第八を
第九を
第十を
第十一を
第十二を
第十三を
第十四を
第十五を
第十六を
の号を賜りました。
また、五湖も東を
さらに、昨年は
天下より選び抜かれた美女たちはいずれも桃を欺き
それに次ぐ三百二十人の美女には歌舞を習わせて美人とし、二十人ずつを十六の宮殿に分けて遊宴に備えさせ、龍舟、鳳舸、楼閣などにも十人、二十人の美女が配されてそれぞれの任を与えられ、監督にあたる
※
顕仁宮から西苑までは二、三里ほど、その間にはいささかの高低差があり、煬帝が不満に思っていると虞世基が申します。
「西苑までの
それより虞世基は工匠を集めて御道を整え、その幅は六、七丈もあって黄土の上に石灰を敷き、そこに龍鳳の紋を彫り込んだ白石の石畳を重ねます。
道の左右には青石で
御道の周囲には侍衛の者たちが暮らす営舎が置かれて
虞世基より完成を告げられると、煬帝はすぐさま西苑より御道を通り抜け、これらの造作に感心すること頻りでございました。
「卿の高才は一々朕の意に叶う。必ずや美官を授けて卿の功労に報いよう」
煬帝は大いに喜んで約すると虞世基を
▼翰林院は唐の玄宗が置いたため、隋代には存在しません。
隋朝の
虞世基は
命を受けた郡縣の官吏たちは罪に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます