人形使いの俺、お荷物と言われクビになったけど、自由に生きたいので魂を込めた魔巧少女の楽園を作ります。〜え?軍の人形兵器が暴走したって? そんなこと言われてももう戻りません。
第16話 援護(3)——side フェネル
第16話 援護(3)——side フェネル
ミシ……。
僅かな衝撃だけど、上から振動が伝わってくる。
ここは地下一階だ。地上で何か起きている。
「ロゼッタはここでみんなと待ってて」
私はそう声をかけ、階段を駆け上がる。
礼拝堂一階。そこには、数人の兵士がいて怪我人の手当をしていた。
地下は兵士以外と重傷者の治療、ここは軽傷の兵士を治療している。
クルトは先に上がっていたので、彼に状況を聞く。
「特に変わり無しだ。小さな窓しかないが、そこから除くと魔巧人形が集まってきている。それに、さっきから振動があって礼拝堂の外壁を壊そうとしているみたいだ」
やっぱり。一旦引いて再び集結しているというのだろうか?
私は小さな小窓から外を窺う。
確かに、魔巧人形と——。
「!!」
人間がいる。どこに隠れていたんだ?
私が目を見張ると、クルトが口を開く。
「フェネルちゃん、大丈夫だ。壊そうとしてもそう簡単にこの建物は崩れないよ」
「白地に黒の線が複数入っている服装の人間がいる」
「それがどうかしたのかい?」
私は、記憶領域からマスターの言葉を引き出した。
「マスターが話していた。『魔導大隊のものですね。ひょっとしたら……そいつらがいた付近を調べて下さい。恐らく魔方陣が描かれている地面があるはずです」
「……? つまり?」
「『爆発系であれば恐らく対象は城壁です。念入りに調べて下さい。穴を開けて軍隊を投入されるでしょう』」
「この街の城壁を破壊できるってことかい? それはなかなかすごいな」
「城壁じゃなくて、もし、この建物の壁に魔方陣を描いていたら?」
「そうか! そういうことか」
先ほどの振動は、敵が爆発系の魔方陣で破壊を試みていることの現れかもしれない。
「クルト、もしかして振動が大きくなっている?」
「最初は感じなかったのに、次第に大きくなっているような気がする」
マスターの言葉から敵の行動を先読みできる。
離れていても、マスターの言葉が私を導いてくれるのだ。
「戦えない人間は皆地下一階に下がって。今すぐ!」
「お前ら、私からの命令だ。急げ!」
「「「「「はっ!」」」」
手際よく撤収を始める兵士たち。
ドオォォォン……ズズズズ……。
大きな音がした。
内側からは確認出来ないけど、間違い無い、確実に礼拝堂の外壁が壊されつつある。
「フェネルちゃん! 治療が必要な者は全員地下に下がった。戦闘可能な兵士を集めてくる。君は地下で皆を守ってくれ」
私はマスターの言葉を思い出す。
『危なくなったら、アンベールさんやこの国の兵士に任せて退避して欲しい。自らの身を一番に考えるんだ』
マスターの声に従うなら、私は地下で待てばいい。
それが正しい答えだ。
わかった、と、そう言えばいいはずなのに。私はどういうわけか戸惑ってしまった。
その、次の瞬間、
ドーン……ドドドドドド。
大きな破壊音が響き、壁が吹き飛ぶ。
「フェネル! ぐあっ!」
クルトが私にタックルしてきた。
おかげで、吹き飛んできた瓦礫をかわすことができた。
見ると、クルトの左腕が曲がってはいけない方向に曲がり、ひしゃげている。これは……もう……。
「フェネルちゃん……急いで地下に!」
「確かにクルトのおかげで私は助かった……でも、その腕ではもう戦えないだろう。自分に任せろと言ったのに」
「ああ。申し訳ない」
ガラガラガラ……パラパラッ。
砂埃が舞い上がり、視界が悪くなる。
私はクルトを腕に抱え、祭壇に向かった。
「クソッ! すげー痛いけどフェネルちゃんに抱いて貰えるのならもう死んでもいいや」
「これぐらいでは人間は死なない」
祭壇の下の階段を登ってきた兵士にクルトを託す。
「フェネルちゃん、このまま地下へ」
「えっと……」
この兵士たちでは心許ない。先ほどの戦闘で多数の怪我人を出していた。
人間の中では強いというじじいでさえ、動けないほどの怪我を負っていた。
ここで私が下がればどうなる? 優しい言葉を私にかけてくれた兵士たちがどうなる?
私にしては珍しく数秒考え、答えを出した。
「全員下がって欲しい。私が戦う」
「どうして? 君は兵士ではない。ここは我々に任せて欲しい」
「どうせ人間は怪我をする。足手まといはいらない。降りたら、この祭壇の入り口を閉じて」
「そ、そんな……我々が戦わなくてどうする? 俺たちはこの国を守るために毎日訓練をしてきたんだ」
「私が戦う。足手まといだ。じじいより弱いなら出てくるな」
言っても聞かない様子に焦れて、私は祭壇を動かし階段を隠した。
そうしているうちに次第に粉塵が晴れてきた。視界が良くなってくると、大量の魔巧人形の姿が見える。
やつらが礼拝堂に侵入してきた。
私は敵集団の中に飛び込み、魔巧人形をなぎ倒し始める。
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