第100話 1560年8月『茶室』(6)
最上義光
実働で協力って、まさか……
一条兼定
今川氏真
軍神ちゃんは討ち取れないだろ。
伊東義益
いきなりハードルが上がっていますね。
北条氏規
真面目な話を続けますね(ニッコリ
調略阻止は表立った外交での調略阻止と裏工作です。実働は関東の諸勢力を威圧するために、ある程度の兵を動かして頂きたいのです。
もちろん、現時点では私の構想だけです。実際には皆さんからご提案頂いた案を踏まえて、最終的にどうするか誰が何をするかの役割分担までを今夜中に落とし込みたいと考えています。
最上義光
北条さんの構想を先に聞いた方が良さそうですね。
伊東義益
それでいいと思います。北条さんの構想を軸に足したり引いたりしましょう。
北条氏規
では、先に表立った調略阻止案から。
長尾景虎と
今川さんと竹中さん、最上さんにはこれらの諸勢力に対して北条へ味方するよう書状を出してもらいたいのです。
最上義光
書状で圧力をかけるんですね。書状くらいで効果あるかな?
北条氏規
最上さんや竹中さんが手紙を出すというのは、後ろに控えている兵力をチラつかせる事になりますから、十分に有効だと考えています。
安東茂季
俺みたいに遠すぎると鼻で笑われそうだけど、最上さんや竹中さんはそれ程離れていないから、受け取った方も慎重になるでしょ。
伊東義益
それ以上に慎重にならざるを得ないのが北条氏康と武田信玄、そして今川さんですね。
北条氏規
今川さん、竹中さん、最上さん、だけでなく
北条家は
一条兼定
関東管領の上杉憲政を大義名分にした長尾景虎 対 古河公方の足利義氏を大義名分にした北条家に三国同盟である今川家と武田家が味方して、これに竹中さんと最上さんが加わるのか。
小早川繁平
古河公方と関東管領って何が違うんですか? どっちも関東のまとめ役のイメージなんですけど。
伊東義益
古河公方が名で関東管領が実でしょうか。竹中さん、間違っていますか?
竹中重治
実は私も詳しくは知らないんですよ。室町の後半あたりから古河公方の前身である鎌倉公方と関東管領が争っていたような。
最上義光
古河公方が関東管領を任命するんじゃなかったっけ?
今川氏真
難しく考えるのはやめよう。どっちも似たようなものだよ。平たく言うと、俺たちから見ればどちらも口実だ。
一条兼定
平たすぎる(笑
小早川繁平
何となく理解しました。そうすると、並んだ名前だけ見たら北条さんに味方しそうですけどね。
今川氏真
ところが、名前だけの古河公方と違って、関東管領の役職は伊達じゃないんだな。影響力はかなりのものだぜ。
何しろ今川の旧家臣団の中にも『関東管領に弓を引くのは』、なんて言い出す奴がいるくらいだからな。
安東茂季
古河公方も影響力ありそうに思えるけど、そうでもない?
竹中重治
史実ではあまり影響力が無かったように記憶しています。手紙を出しまくったけど結局は長尾景虎に味方されちゃった、みたいな感じだったと思います。
一条兼定
手紙の上での権威よりも、眼前に迫った兵力だよな、やっぱり。
北条氏規
最上さんには
芦名を味方に引き込めれば、最上さんが将来太平洋に出るために、相馬氏や大崎氏と戦うときも助けになると思います。
最上義光
北条さんの言う事も一理ある。それ以上に長尾景虎に一泡吹かせてやりたい。全面的に協力します。
北条氏規
最上さん、ありがとうございます。
竹中さんには関東の小勢力への手紙と念のため
竹中重治
分かりました。小勢力についての詳細は時間が許せば後でまとめましょう。途中で茶室が終わる様なら、忍者を使って連絡を取り合うという事で。
北条氏規
助かります。
では続いて、裏工作です。こちらは非常にシンプルです。こちらになびかなかった勢力に対して忍者を送り込んで嫌がらせをする、です。
どんな嫌がらせをするかはノープランなのでお任せ致します。
竹中重治
最上さんのところだと、
最上義光
揚北衆って?
竹中重治
越後と最上さんの領地の境辺りにいる豪族ですよ。一部は長尾景虎に取り込まれていますが、まだ独立心旺盛な者たちが残っているかもしれません。好条件を持ち掛ければきっと働いてくれるはずです。
安東茂季
竹中さん、何だか生き生きしてきたね。
最上義光
竹中さんがアップを始めました。
一条兼定
竹中さん、得意そうだよね、こういうのさ。
小早川繁平
私も真っ先に竹中さんの名前が浮かびました。
伊東義益
何と言っても実績がありますからね。
北条氏規
期待しています、竹中さん。
竹中重治
いやいや、待ってください。過剰な期待はしないでくださいね。裏工作とか滅茶苦茶苦手ですから、私。
最上義光
信頼と実績の竹中印の裏工作。
今川氏真
北条氏規
そうですね、私も
竹中重治
裏工作は皆でよく話し合いましょう。
一条兼定
裏工作は竹中さんを中心に案を出すって事で、話を先に進めようか。
北条氏規
次は実働です。
基本的にここでは北条家と今川家が兵力を担います。竹中さんには武田信玄が出してくれる援軍に竹中さんの軍勢を同行させて欲しいのです。
形だけで十分です。軍勢は少数で構いません。
ただ、出来れば、武田の動向監視が出来る人間を指揮官に据えてください。
竹中重治
援軍、了解です。季節的に雨が多くなりますから火縄銃は少なくして編成します。
武田軍の動向監視ということは、裏切る可能性があると考えているという事でしょうか?
北条氏規
可能性は極めて低いです。あくまで警戒の延長です。
本当の目的は別にあります。
武田信玄には出来れば嫡男の武田義信を援軍に出して欲しいと打診をします。もし武田義信が援軍に来るようなら、武田義信と
安東茂季
そうなら、竹中さん本人が援軍に出た方がいいのかな? 危険じゃない?
一条兼定
竹中さんには上洛をしてもらわないとならないから、北条さんの援軍には代役を立ててもらわないと。
北条氏規
大丈夫です、一条さん。竹中さん本人に参戦してもらうつもりはありません。安東さんのいうようにリスクが大きすぎます。名代を立ててください。
竹中重治
そう言う事であれば、名代には実弟の
北条氏規
ありがとうございます、竹中さん。
最上義光
実弟と叔父なら武田からも文句は出ないでしょう。
伊東義益
そうなると、伊東家と一条さんのところは水軍を出せばいいのかな?
北条氏規
伊東さん、その通りです。
大部隊は必要ありません。少数で構いませんから伊豆と房総半島の海賊衆と一緒に海側から威圧をしてください。
一条兼定
欲しいのは熟練の操船技術を持った少数の海賊。そして一条家と伊東家の旗か。承知した、北条さん!
伊東義益
うちも了解です。
北条氏規
時期は西園寺攻めの後で構いません。少数でいいので出来れば上洛の間も引き上げずに駐留して頂ける軍勢をお願いします。
伊東義益。
上洛に間に合わせて半数を引き上げる、でもいいでしょうか?
北条氏規
はい、それで十分です。よろしくお願いいたします。
一条兼定
了解。半数を残す準備をしておくよ。
安東茂季
すっかり蚊帳の外だな
小早川繁平
安東さん、仲間ですね(笑
安東茂季
小早川さんの気持ちが少しだけ分かった気がする。何とも悲しいよねー、蚊帳の外ってさ。いやね、楽出来ているのに文句言うな、ってのも分かるけどさ。それでもつまらない。
最上義光
安東さん、いつでも替わるよ(笑
今川氏真
日本海を南下して越後を急襲してもらってもいいんだぜ、安東さん。
竹中重治
そうですねー、忍者を派遣しての裏工作くらいなら距離があっても参加できない事はなさそうです。
安東茂季
ごめんなさい。反省しています。空気になるのでそっとしておいてください。
北条氏規
話を戻しますね。もう少しで終わるのでお付き合い、お願い致します。
安東茂季
はい。
北条氏規
返事が返ってくるとは思わなかった(笑
一条さん、先程の表立っての書状と裏工作に関係しますが、一条さんからは朝廷工作をお願いいたします。
一条兼定
何となくそんな気がしてた。それで、具体的には何をしたらいい?
北条氏規
目的は長尾景虎と上杉憲政に越後にかえってもらう事です。
そのための一案ですが。
向こう二年間は古河公方を足利義氏に据え置くが、二年後には
今川氏真
足利藤氏って、長尾景虎が関東に乗り込んで来る表向きの要因だよな。
北条氏規
はい、まさに表向きの最大の大義名分です。
長尾景虎は里見義堯の救援要請を受けて、
竹中重治
その辺りの大義名分もあって最終的に十万とも言われる軍勢に膨れ上がりましたからね、長尾景虎軍。
北条氏規
その大義名分を消すと同時に二年間の時間を手に入れます。
小早川繁平
大義名分の消失と時間稼ぎですか。考えましたね。
伊東義益
思い切りましたね。
竹中重治
ですが、それで北条氏康と当の足利義氏は納得しますか? もちろん、長尾景虎と上杉憲政も納得するでしょうか? まあ、足利藤氏は納得しそうですけど。
一条兼定
ここで危惧しても仕方がないよ。先ずはやってみよう。
伊東義益
長尾景虎は納得するというよりも、引き下がらなければならない状況に追い込まれるんじゃないでしょうか?
一条兼定
そうなるようにシナリオを組み立てよう。丁度いい機会じゃないか。足利将軍家を飛び越えて公方家に指図できるだけの力を帝が持ったと、全国に知らしめようか!
最上義光
北条氏康と長尾景虎が型式だけでも、帝の頼みを聞き入れたら十分に権威を知らしめられるな。逆に足利将軍家の権威失墜は……今さらか。
竹中重治
史実にはなかった、帝による古河公方家への介入ですか。
今川氏真
いいねー、何だか歴史を裏から作っているみたいでワクワクしてきたぜ。
北条氏規
何だか話が大きくなっていきそうで怖いですね(苦笑
我々にとって最も大切なのは、北条家が早期に自由に動けるようになることです。
小早川繁平
怖いのは二年後ですよ。二年後には長尾景虎に大義名分を与える事になりますよ。
北条氏規
賭けの要素はありますが、分が悪いとは思っていません。北条氏康と足利義氏の説得はこれからですが、何としてでも説得をします。
二年後なら皆で、この八人で力を合わせれば、古河公方も関東管領も何の意味も持たないものに出来る。過去の称号、過去の役職に出来ると信じています。
(賭けの要素は決して小さくない。それが分からない北条さんじゃないはずだ)
一条兼定
了解した、北条さん! 結果を約束はできないが、出来るだけの事はやる! それは約束する!
北条氏規
ありがとうございます、一条さん。
一条兼定
お菓子で釣られるような年頃の姫を集めてお茶会を開くよりもずっと面白そうじゃないか!
北条氏規
それはそれで、もの凄く魅力的なんですけどね(笑
では最後に裏工作の案やその他、作戦を根本から変えるような案があればお願いします。
その後、抜本的に作戦案を見直すようなことはなく、話が何度も横道にそれはしたが何とか裏工作の案がまとまった。
何というか、皆、裏工作とか好きだよな。
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