第67話 1560年7月『茶室』(3)

 伊東義益

 さて、関東に続いて瀬戸内も荒れそうですね。


 一条兼定

 島津が動き出す前に瀬戸内をしずめたいねー。


 北条氏規

 島津も動く気配があるんですか?


 伊東義益

 あります。と言っても今すぐにどうこうという訳ではありませんが、史実から考えてももう準備を進めておかないと。


 安東茂季

 準備? 瀬戸内を鎮めて一条さんと共闘出来る状態を作る事ですか?


 伊東義益

 もちろんそれも重要ですが、相良家をはじめとした周辺諸勢力と同盟関係を結びます。幾ら自国の国力と兵力を増強しても限界はありますから。


 竹中重治

 一番厄介なのは周辺諸勢力が島津側に取り込まれる事でしょう。


 最上義光

 放置しておいて敵側に付かれたら目も当てられないか。


 今川氏真

 小早川さんを救出するとなると、毛利元就は完全に敵対するぞ。九州は島津貴久、瀬戸内は毛利元就。厄介な勢力に挟まれるな。


 一条兼定

 なあに、長尾景虎と関東の諸勢力を向こうに回して長尾景虎に一杯食わせようっていう、北条さん程厳しい状況じゃないさ。


 北条氏規

 いやー、織田信長から尾張を切り取りつつ武田晴信を牽制。口八丁で六角義賢ろっかくよしかたを欺き、さらに、朝倉義景あさくらよしかげ三好長慶みよしながよし松永久秀まつながひさひで、将軍家を敵に回そうっていう竹中さん程、活躍はしなくて済みそうですよ。


 伊東義益

 確かに竹中さん程、大回転の忙しさはありませんね。

 九州は相良さがら肝付きもつきをはじめとした諸勢力の取り込みも始めています。

 四国は長宗我部国親の取り込みにしか成功していませんが、問題の三好は竹中さんが何とかしてくれるでしょうから、後は大友義鎮おおともよししげ尼子晴久あまごはるひさを何とかすればそれなりに形になりそうです。


『他人から改めて言われると、俺って大変だな。恒殿といちゃつく時間あるのか?』


 竹中重治

 上洛した際、一条さんとご一緒できたら本願寺とも会っておきたいと思ったんですが、やめようかなあ。


 最上義光

 竹中さん、少し仕事減らした方がいいんじゃない?


 安東茂季

 代わってあげられるなら代わってあげたいよ


 北条氏規

 いや、最上さんは目の前にある周辺勢力の取り込みをお願いしますね。


 一条兼定

 もう、本願寺対策に乗り出す? それとも軽く面識を得る程度?


 竹中重治

 後者で考えています。寺から座の権利を取り上げたり、権力をはく奪したりしたので軽くお詫びしておこうかと。


 一条兼定

 そういう話なら、弟君の嫁さん、一条に連なる姫じゃなく、三条の傍流の姫を探し出そうか?


 伊東義益

 なるほど。少しでも本願寺顕如ほんがんじけんにょと繋がりを持たせる訳ですね。


 小早川繁平

 どういう事ですか?


 一条兼定

 本願寺顕如ほんがんじけんにょの奥さんは三条家の姫なんだよ。


 小早川繁平

 坊さんなのに結婚しているんですね。


 最上義光

 まあ、何でもありだよな。


 今川氏真

 武田晴信の側室も三条家の姫じゃなかったけ?


 一条兼定

 本願寺顕如ほんがんじけんにょの奥さんの姉だか妹だったと思うよ。


 小早川繁平

 人間関係複雑ですね。武田晴信と本願寺顕如ほんがんじけんにょが手を組んだりしませんか?


 北条氏規

 手を組むとは考えにくいですが、警戒だけはしておきましょうか。


 安東茂季

 姉妹の仲が悪かったり、煽って仲を悪くしたり出来れば対立させたりと利用できないかな?


 最上義光

 武田晴信かあ。少しでもイラつかせられれば面白いかな?


『いや、やめてくれ。武田晴信の機嫌を損ねるとか、俺が困る』


 竹中重治

 可能性はありますから、準備だけ進めるようにしましょうか。中途半端な準備で下手な事をすると、しっぺ返しを食らいかねないので利用するときは慎重に行きましょう。


 一条兼定

 話が逸れたけど、弟君の嫁さんはどうする?


 竹中重治

 三条家の傍流でお願いします。弟の嫁なので見た目は気にしません。年齢も家臣の反対にあわない程度であれば十分です。


 一条兼定

 OK! 利用できそうな姫を探し出すから期待してて。


 小早川繁平

 酷い会話を聞いた気がする。


 伊東義益

 戦国時代なんてそんなものですよ。もっと酷いと、縁もゆかりもない娘を養子にして『自分の娘』として嫁に出すくらいですからね。


 北条氏規

 そうそう、北条家も血も涙もないことを平気でしようとします。兄が死んだからって、その嫁を何の罪もない弟に押し付けようとするんですから。


 安東茂季

 三国同盟を考えれば、まっとうな判断のような気もするんだけど……


 最上義光

 正室と言っても形式上の話ですし、他に側室をもらえばすむ訳ですからそれ程深刻に考えてなくてもいいのでは?


『言っちゃいけないかもしれないが、その通りだよな。特に俺が言うと余計に角が立ちそうだから言えないけど』


 北条氏規

 いえ、それは違いますよ、安東さん、最上さん。

 絶対に好きになれない相手と結婚するって、お互いにとってこれ以上ないくらいの不幸だと思うんですよ。


『絶対とか、酷いな』


 小早川繁平

 北条氏政の正室って黄梅院こうばいいんですよね? そんなにひどい女性ですか?


 一条兼定

 武田晴信と三条の方の娘さんか。あんまり邪険にすると一向宗が暴れそうだな(笑


『確か、武田晴信が可愛がっていたはずだよな。邪険にしたら、本願寺よりも武田晴信の方が怒るだろう。腰入れの行列とか盛大だったと何かで読んだ覚えがある』


 北条氏規

 冗談はさておき、別に姉上に対して含むところはありません。単に兄嫁がそのままシフトしてくるという事実と年齢が受け入れられないだけです。


 伊東義益

 黄梅院こうばいいんさん、十七歳じゃ?

 

 北条氏規

 結婚っていうのは、やはりお互いに愛し合える、尊重し合える相手としてこそ、でしょう。


『顔と年齢だけで選ぼうとしているよね、北条さん。しかも、一方的に。年端もいかない少女を顔と年齢だけで選んで、『お互いに』ってのはどうかと思うのは俺だけか? いや、あんまり人の事言えないから言わないけどさ』


 小早川繁平

 結婚出来るだけで十分幸せに思えますよ、私には。


 一条兼定

 お互いに?

 

 安東茂季

 お互いに?


 最上義光

 お互いに?


 伊東義益

 尊重?


『俺だけじゃないようだ』


 今川氏真

 ところでさ。医療関係を充実させる計画だけど、国内で着手する前に海外から輸入できる薬や道具、技術はそろそろ本格的に手に入れるよう動いた方がいいと思うんだけど、どうだろう?


 竹中重治

 賛成です。医療関係と食料、野菜や穀物はどんどん輸入しましょう。後、タイヤを作りたいのでゴムの木も欲しいですね。


 北条氏規

 輸入するだけでなく、どこか拠点を決めて研究を進めるとか、分担して研究をする準備もしましょう。


 最上義光

 拠点かあ。やっぱり港が近い方がいいですよね?


 安東茂季

 俺と最上さんは蚊帳の外かな?


 伊東義益

 一生懸命にならないといけないのは私と竹中さん、それと小早川さんの早死にトリオでしょうね。


 竹中重治

 早死にトリオ。嫌な言葉だ。


 一条兼定

 港があって、伊東さんと竹中さん、小早川さんの近くってなるとうちかな? 四国を拠点に医療関係の充実を図る?


 竹中重治

 立地的にはいいかも知れませんね。


 小早川繁平

 勝手なイメージで長崎辺りを考えていました(苦笑


 今川氏真

 あー、蘭学か。


 北条氏規

 研究を分担するといっても何から着手していいやら、とんと見当も付きません。


 竹中重治

 同じく。ここは宣教師とコンタクト図って、外国から医学者を呼び寄せましょうか?


 安東茂季

 国内の医学者じゃだめかな?


 最上義光

 安東さん。悲しいけどこの時代の国内の医学なんて、民間療法に毛が生えた程度のもので、研究開発なんて夢物語だよ。


 安東茂季

 無理かーっ! 国内生産のペニシリンとかロマンを感じるんだけどなー。


 小早川繁平

 頑張れば、国内でペニシリンの開発、出来るかもしれませんよ。


 安東茂季

 え?


 小早川繁平

 私、平成日本では内科医だったんですよ。大学に籍も置いて研究もしていました。簡単に開発って訳には行きませんが、試行錯誤すれば出来そうな気がします。


 竹中重治

 え?


 伊東義益

 え?


 一条兼定

 僥倖っ!


 北条氏規

 え?


 安東茂季

 見えるっ! 兄上が病死する未来が!


 最上義光

 細菌兵器……


 今川氏真

 バイオハザード

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