第66話 1560年7月『茶室』(2)

 竹中重治

 それで、朝廷工作の方はいいとして、武田晴信はどうしますか?

 長尾景虎迎撃に参加してもらうのか、背後から越後を狙ってもらうのか? 


 今川氏真

 迎撃には適当に参加してもらおう。三国同盟があるんだからそれくらいはやってもらわないと。

 その上で、来年の春には越後を狙うよう仕向けられればベストだな。


 一条兼定

 和睦は武田晴信が動いた後?


 伊東義益

 ベスト、と言うだけでしょう。何もかもが上手く行けばそうですが、武田晴信が越後の後背を突く、というのは計算に入れない方がいいでしょう。


 最上義光

 史実では長尾景虎が撤退した理由の一つは武田晴信が越後を狙うのを警戒して、という説もなかったかな?


 北条氏規

 説というか、理由のひとつかもしれませんが、我々がそそのかしては武田晴信も警戒するでしょう。


 竹中重治

 武田晴信の人となりは知りませんが歴史の人物像から考えると、あれこれと注文を付けたり、指図されたりするのは好まないでしょうね。


 小早川繁平

 三国同盟を盾に取った援軍程度が良さそうですね。


 今川氏真

 ある程度の援軍を出してもらえれば十分でしょう。北条さんと最上さん、そして今川家が周辺諸勢力の取り込みを今からやるんだ。相手が長尾景虎だって、好き勝手させやしないさ。


 安東茂季

 おお! 今川さんやる気だね。


 最上義光

 取り敢えず、三家で頑張りましょう。それでも足りなければ、安東さんと竹中さんに応援をお願いしましょう。


 安東茂季

 やっぱり、うちも? そんな気はしていたんだよなー。


 竹中重治

 もちろん、協力します。ただ、織田信長の動き次第のところはあります。近江の六角VS浅井は、最悪傍観を決め込んでも大丈夫ですが、織田信長だけは黙って見ていても滅びませんから。


『北畠家も尾張の切り取りに積極的じゃないから、やっぱり、俺がやるしかないよなー』


 北条氏規

 安東さんはともかく、竹中さんは織田信長優先でお願いします。兵力を割く必要のない工作に協力してくれれば十分です。


 今川氏真

 だね。竹中さんには何としても尾張を奪ってもらって、織田信長を三河に押し込めないとならないから。

 無理をしない程度に諸勢力の取り込みに協力してくれればOK。


 一条兼定

 竹中さん、上洛も計画していたよね?


 竹中重治

 ええ、十月か十一月の初めには上洛する予定です。


 一条兼定

 大丈夫なの?


 竹中重治

 一条さんには口利きをしてもらっていますし、顔を潰さないように何とか都合付けます。


 一条兼定

 いや、俺の顔なんて潰れてもいいから。無理してどこかにひずみが生じる方が怖いわ。


 竹中重治

 ひずみ……確かにそっちの方が危険ですよね。分かりました、お言葉に甘えて最悪は上洛を延期します。


 一条兼定

 十月の『茶室』の時点で上洛出来そうだったら、一緒に上洛しようよ。


 竹中重治

 それは助かります。そのときはよろしくお願い致します。


 伊東義益

 そうなると、西園寺を攻める一条さんも忙しくなりますね。上洛前に西園寺を片付けるのは難しいでしょうから、上洛後すぐに攻め込む感じですか?


 一条兼定

 そうなるかなあ。

 上洛前に、領内で平成風の美少女を見つけて側室にして、その後収穫&相場操作。それが終わったら竹中さんと上洛。帰ってきたら伊東さんと長宗我部に援軍もらって西園寺攻め。

 理想は冬の間に決着ってとこです。


『領民から側室をとるのをまだ諦めていなかったのか』


 北条氏規

 そうだっ! 私の美少女はどうなりましたか? 一条さん、最上さん。


 一条兼定

 上洛したときに一条の本家筋の娘を中心に九条家とか鷹司家とか手当たり次第に声を掛ける予定だよ。

 もちろん、似顔絵を書ける者を同行して、めぼしい姫の似顔絵を描かせる。絵は後で北条さんに送るから好みの姫を選んでくれればいい様にしておく。安心して。


 最上義光

 こちらは、領内で平成風美少女を探している最中です。お陰で、変な噂が立って困っています。 


 北条氏規

 おお! これは期待できそうですね。一条さん、似顔絵待っています。

 最上さんも似顔絵をお願いします。


 最上義光

 お、おおう。 似顔絵ね。了解です。


 一条兼定

 似顔絵は送るけどさ、結婚出来るのは長尾景虎が引き上げてからになるんじゃないの?


 北条氏規

 大丈夫です。近くまで連れてきてもらえたら、小田原城を北条氏康に任せてでも迎えに行きますよ。


『冗談なのか本気なのか今一つ判断しづらいな』


 伊東義益

 話を戻しましょう。

 一条さん、長宗我部元親は援軍を承諾したんですか?


 安東茂季

 そう、それ。

 いつの間に長宗我部元親と協力関係になったんですか?


 一条兼定

 元々、長宗我部家は一条家の配下みたいなものだからね。現当主の父親である長宗我部国親が我が家に恩があるから問題ないでしょう。


 竹中重治

 長宗我部元親の父親が一条さんの曾祖父の下に逃げ込んできたんでしたよね?


 一条兼定

 らしいね。詳しい事は知らないんだけど、長宗我部元親は恩を感じているようなんで二つ返事だったよ。


 最上義光

 なんて良好な人間関係なんだ。羨ましい。


 安東茂季

 最上さん、羨んでも何も変わらないよ。人間関係はいろいろと悩みの種だよね、お互いにさ。


 今川氏真

 東北の人間関係は魑魅魍魎ちみもうりょうって感じだからな。


 一条兼定

 人間関係というか、親類縁者だよね。


 北条氏規

 東北の苦労話は一先ず置いておくとして、西園寺を攻めるとなると血縁関係にある公家と問題になりませんか?


 竹中重治

 公家との関係悪化よりも、西園寺の領地を奪うと、瀬戸内海を挟んで毛利元就と領地を接しますよ。そっちは大丈夫なんですか?


 最上義光

 毛利元就と面と向かって敵対するのは少し早い気もするな。


 一条兼定

 公家との関係は問題ない。今のところ多額の献金で帝のおぼえがいいのが幸いしている。それに四国の西園寺は中央の公家からは嫌われているから、金蔓のうちの方に味方してくれるよ。


 安東茂季

 お金の力って偉大だよなー。


 一条兼定

 既に朝廷への献金で毛利元就には喧嘩を売っているので今更でしょう。領地を接するのは承知しているし覚悟の上だよ。

 小早川さんにいつ何があっても迅速に対応するには瀬戸内海に接する領地を持たないと難しいからね。


 竹中重治

 瀬戸内海を渡っての救出、ないしは脱出。それもかなり強硬なやつを想定しているんですね。


 北条氏規

 てっきり、京都経由で四国渡るのかと思っていました。


 安東茂季

 小早川さん、実のところどうなの? 一条さんが上洛した際に合流して京都経由で四国に逃げた方が楽だし確実じゃないの?


 竹中重治

 京都経由なら私も支援がし易いです。


 小早川繁平

 実はその事ですが、そろそろ脱出をしようと考えています。一条さん、竹中さん、改めてご協力、お願い出来ませんでしょうか。


 北条氏規

 おお! 小早川さん、いよいよ動くんですね。


 竹中重治

 協力を惜しむつもりはありませんが、何か具体的なプランがあるのでしょうか?


 一条兼定

 西園寺討伐を待ってくれれば、小早川領から直接瀬戸内海を渡っての救出もOK。

 

 最上義光

 脱出、賛成ですよ。今の小早川家に留まっていても未来はありませんからね。


 今川氏真

 いつ頃脱出を決行するつもり? 何かプランはあるの?


 伊東義益

 瀬戸内海を突破するプランだと、一条さんの西園寺攻略待ちになります。京都から四国へ渡るつもりなら、一条さんか竹中さんが上洛したタイミングが良さそうです。


 小早川繁平

 動くと言っても、今月や来月の話ではありません。本格的な準備もこれからですし、皆さんにご協力をお願いしないとなりません。


 竹中重治

 十月か十一月に上洛を予定しています。小早川さんさえ良ければその時に合わせて脱出してはどうでしょうか?

 京都まで来てもらう必要はありません。途中、どこかで合流できればそのまま美濃へ一緒に。どうでしょう?


 小早川繁平

 竹中さん、ありがとうございます。嬉しいお申し出です。

 ですが、竹中さんの上洛は不確定要素が大きいですよね?


 伊東義益

 確かに。織田信長や武田晴信の動き次第では、竹中さんの上洛は先送りする事になりかねませんね。


 小早川繁平

 その点、一条さんの西園寺討伐は不安要素はありますが、手堅く思えます。


 最上義光

 伊東さんと長宗我部元親が手を貸してくれるなら、織田信長や武田晴信の動きに左右されるよりもマシかもしれないな。


 竹中重治

 つまり、一条さんの西園寺討伐が終わったら脱出という事ですね?


 小早川繁平

 そうです。竹中さんには護衛として忍者を数人貸して頂きたいのです。


 竹中重治

 それくらいはお安い御用です。護衛だけでなく、数人なら明日にも出立させますよ。自由に使ってください。


 小早川繁平

 本当ですか? 凄く助かります。何しろ信用できる人が一人しかいないので(苦笑


 竹中重治

 明日、書状を持たせて五人出立させます。


『小早川さんが一条さんのところに逃げ込んだと知れたら、毛利元就、怒るだろうなあ』

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