第54話 1560年6月『茶室』(6)
そして大詰め、最後に外交と対織田信長及び武田晴信対策を練る事になる。
伊東義益
それで大筒というか、大砲ですね。大砲の開発ですが、軽量化はもちろん、分解組み立てを簡単に出来るようにしましょう。
今川氏真
難しい注文だな。軽くした上に分解と組み立てが出来るって事は壊れ易くなるんじゃないのか?
伊東義益
ナポレオンが大砲を有効に使えたのは特性を理解していた事や砲術手に計算の得意な者を配置した事もあるでしょう。でも他にも要因があります。大砲を分解して運び、山や丘の上で組み立ててそこから砲撃した事です。
日本の地形を考えたら分解して容易に持ち運べるようにして、山頂や森の中から砲撃出来る事が絶対に役立ちます。
最上義光
まあ、一理ある。開発はするけど無理かもしれないって事でいいですよね? 伊東さん。
伊東義益
それで構いません。ただ、有用性だけは理解して開発を進めてください。
『有用性は分かるし、そんな大砲なら俺も縦横に使いたい。だが、やけに『分解組み立て可能な軽量の大砲』にこだわるな。もしかして……対島津、野戦で使うつもりか。島津の突撃は火縄銃の一斉射撃では止められないが大砲なら止められるって事か』
竹中重治
そんな大砲なら私も欲しいです。是非、開発しましょう。
伊東義益
ありがとうございます。絶対に役立ちます。
北条氏規
戦では間違いなくアドバンテージになりますね。ただ、国外への流出だけは気を付けないとなりません。
今川氏真
大砲に囲まれて籠城なんてしたくないよな。
最上義光
了解。じゃあ、慎重に開発するって事で。次は外交かな? それと北条さんの嫁さん探し。
北条氏規
そうですね、外交と私の嫁さん探しです。皆さん、よろしくお願いします。
一条兼定
嫁さん探しにこだわるねー。そんなに嫌か、兄嫁がスライドしてくるの。
今川氏真
やっぱり嫌なんじゃね。義姉さんってだけじゃなく、実家は武田で嫡男の嫁さんだったんだし、絶対に上から目線になるよな。
最上義光
そりゃあ、嫌でしょう。自分に置き換えて考えたら気の毒になるレベルです。
伊東義益
まあ、これ以上続くと想像からもの凄い愚痴に発展しそうなので、そろそろ外交の話に入りましょうか。
竹中重治
そうですね。では私から。
前回お伝えしたように浅井家とは内々に不可侵を結びました。先程の話にもありましたが、今後は姉小路家に接触をするつもりです。
最上義光
そうなると、武田家との関係が悪化しそうですよ。
竹中重治
武田家との関係悪化は織り込み済みです。北条さんも武田家との縁が切れそうですし、協力出来ればと思っています。
北条氏規
当主の北条氏康がどう動くか分かりませんが、私としては兄嫁を実家の武田へ返して、どこか別のところから嫁さんをもらうつもりです。
公家とのパイプを持っている今川さんと一条さんには、氏康が黙るような血筋で、若くて平成風の美少女を是非とも探して頂きたい。よろしくお願いします。
『北条氏康は血筋だけで黙りそうだけど、北条さんが黙りそうにないな』
今川氏真
俺のは国内の安定と松平元康の配下だった武将の取り込みに集中する。信長への嫌がらせは協力するけど、武田家との関係は現状維持のつもりだから表立っては北条さんと竹中さんに協力できない。
ただ、北条さんの嫁さん探しは頑張るよ。もう、婆さんにお願いはしてある。問題は事前に容貌が分からない事なんだよな。
最上義光
似顔絵は……美化されるか。そうなると実際に会いに行くしかないよなあ。
一条兼定
似顔絵を向こうに用意させるんじゃなく、絵の上手い忍者を忍び込ませて似顔絵を描かせるとかはどう?
小早川繁平
お嬢様を隠し撮りならぬ隠し描きするために、公家のお屋敷に忍び込むんですか? 忍び込めますか?
一条兼定
金を握らせれば公家の屋敷なんて忍び込むのは簡単だよ。
北条氏規
それで行きましょう。
安東茂季
怖いのは間違って侍女とか別の女性を描いちゃうことかな?
北条氏規
間違ったら打ち首という事で言い含めましょう。
『北条さん、反応が早いな。これは間違ったりしたら、本気で打ち首にしそうだ』
一条兼定
了解。それじゃあ、竹中さん紹介の忍者がやってきたら初仕事は年頃の公家のお嬢様調査だな。
今川氏真
俺も婆さんの伝手のお嬢様を服部半蔵に調べさせるよ。
最上義光
北条さん、こっちはどうしますか? 最上の血縁でもお嬢様探しをしますか?
北条氏規
側室という事で、是非お願いします。最上さんのところとも姻戚関係になれば私の北条家での発言力も増すでしょう。
安東茂季
もう側室っ! 節操ないなー。
最上義光
まあ、まだ側室候補が見つかった訳じゃないから。安東さんも落ち着いてください。
北条氏規
話の腰を折ってしまい、申し訳ありませんでした。では、外交関係の話を再開しましょうか。
伊東義益
私の方は仮想敵国を島津として、既に相良家と肝付家へ、対島津での共闘を前提とした同盟の使者を出してあります。後顧の憂いを取り除きたいので、大友家へも不可侵の使者を出す予定です。
隣国の阿蘇家は相良家との次の共闘先と考えて関係強化はしません。
最上義光
やっぱり島津は強いですか?
伊東義益
戦った訳ではないので正確なところは分かりません。商人からの情報では、火縄銃もそれなりの数を揃えているようです。何よりも史実で語られる島津が異様に強いですから警戒しすぎる事は無いと思いっています。
竹中重治
そうですね、慎重になって損する事は無いでしょう。
小早川繁平
竹中さんは随分と大胆でしたけどね。
竹中重治
いえ、これでも慎重でしたよ。勝てる算段が出来たからこその稲葉山奇襲と北尾張の奪取です。
一条兼定
まあ、慎重さと大胆さを兼ね備えている、ってことでいいんじゃない。
俺の方は四国統一を最優先と考えている。既に長曾我部へ同盟の使者を出しているよ。当面は同盟だけど何れは長曾我部を配下に取り込みたい。
『なるほど、一条さん程の名門ならちょっと勢力を拡大させられれば、後は家の格と朝廷工作で周りの大名家を配下にすることも可能だ』
目先の仮想敵国として、長曾我部との間にある本山家、これが最初の敵だ。それが終わったら瀬戸内海へ向かう。河野家と西園寺家が次の敵だ。面倒なのはこの西園寺家かな。中央に泣きつかれて血縁をたどって文句が来る可能性がある。
北条氏規
河野家と西園寺家を討つのに成功すると毛利と領地を接しますね。早々に毛利と接触する事になりますが、それについてはどう考えていますか?
一条兼定
俺のところが毛利と事を構えるのは全員が歓迎しないと思っているよ。でもさ、さっきの話じゃないけど、小早川さんをそのままにも出来ないでしょ?
何とかしたいじゃない? そうなると一番近くにいる俺が頑張らないとね。
伊東義益
島津相手にビビっている立場ですが、瀬戸内の覇権確立に協力しますよ。
竹中重治
私も協力します。毛利に攻め込むのは難しいですがあれこれと工作する事は出来ます。
北条氏規
やるなら全員でやろう。秋になったら、米相場を操作して毛利を嵌めてやりましょう。
最上義光
謀略で有名な毛利元就相手に知恵の勝負か、燃えるね。
安東茂季
遠いから、たいした事は出来ないけど、小早川さんを助け出すために協力するよ。
今川氏真
毛利を陥れる朝廷工作とかもいいんじゃねぇの。
竹中重治
謀略で有名ですが、相場操作は概念すらないはずです。詐欺の知識や国力を落とす工作なんかも、出来るだけこの時代になかった、毛利元就の知らないもの利用するようにしましょう。
小早川繁平
皆さん、ありがとうございます。一条さん、ありがとうございます。凄く感動しました。嬉しいですっ!
一条兼定
いいって、小早川さん。それにまだ何にもやっていないよ。成功して俺のところに逃げて来られたら一緒に酒でも飲もうや。
小早川繁平
はいっ! そうですね、逃げるための準備を進めます。毛利の情報も出来るだけ集めるようにします。
竹中重治
いや、小早川さん、それはやめてください。ここで小早川さんが怪しまれたり、毛利から邪魔と思われたりするのが一番怖い。小早川さんを助け出せるようになるまでは出来るだけ目立たないようにお願いします。
伊東義益
そうですね、ここは日々ひっそりと暮らしてもらうのが良さそうです。
小早川繁平
はい、分かりました。無茶はしないようにします。
外交についてですが、私の方は特にありません。皆さんの言われるように大人しくしておきます。
北条氏規
竹中さんと今川さんはさっき話した通りでいいでしょうか? 何か補足があればお願いします。
今川氏真
ないよ。
竹中重治
特にはありません。北条さん、どうぞ。
北条氏規
武田家とは決別も視野に入れますが、こちらから攻撃を仕掛けるつもりはありません。とはいっても武田晴信と武田義信の親子関係が悪いようなので、こちらを徹底的に調べて利用できるようなら、皆さんと相談したいと思います。
自分の当面の敵は関東の諸勢力と長尾景虎になると思っています。出来れば、関東勢で幾つかの勢力と同盟をと考えて、風魔小太郎を調査に向かわせているところです。
出来れば最上さんのところと同盟を結んでおきたいのですが、当主の氏康次第です。
歯切れが悪くて申し訳ありませんが、次回の『茶室』までには氏康を説得するつもりです。もう少しお時間をください。
『当主でもなく、嫡男でもないから仕方がないが、北条さんが自由に動けないのは俺たち全員にとって大きな損失だよなあ』
最上義光
複雑な血縁関係に翻弄されているところだけど、大分整理できた。信用できるヤツ、役に立つヤツ、地味に取り込みを続けます。
勢力拡大というよりも、自分の周囲を安定させるのに、ちょっと時間を取られそうです。
北条さん、最上から北条氏康に正式に同盟を申し出るので、家中で動いてください。
北条氏規
分かりました、最上さん。よろしくお願いします。
最上義光
手土産に大量の馬を用意するよ。北条さんの騎馬隊の強化に役立ててもらえれば嬉しいね。
北条氏規
何から何まですみません。
最上義光
安東さん、最上から安東さんのところにも同盟の使者を出します。
さて、同盟の口実と手土産はどうしようかな。
北条氏規
安東さんのところで、養蚕を始めたと言っていましたよね、先程。 安東さん、急いで飛び
北条から最上さんへ渡るジャガイモとサツマイモを最上さんのところから安東さんのところへ伝えて下さい。養蚕と飛び
最上義光
ジャガイモとサツマイモを養蚕と飛び
安東茂季
それ、いいですね。やりましょう。
最上義光
北条さん、ありがとうございます。
北条氏規
いいえ、側室と馬、よろしくお願いします。
その後、開発関係と織田信長以外の有力大名家への嫌がらせをどうするなど、雑談にまた花が咲いた。
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