第53話 1560年6月『茶室』(5)

 その後、織田信長への様々な嫌がらせを語り合う事で気分を高揚させた俺たちは、そのまま農業生産や武器と道具の開発に付いて意見を交わす事とした。




 竹中重治

 その後、農業生産で何か問題はありしたか?

 私の方ですが、農業関係は開墾作業も含めて至って順調です。治水が予想以上にお金と時間が掛かっているくらいでしょうか?


 小早川繁平

 私も順調です。毛利配下の武将たちも、私がジャガイモやシイタケの栽培をしているのも、気付いていません。


 伊東義益

 順調です。ジャガイモが順調に育っていて、来月には収穫できそうです。育成の速さと荒地でももの凄い勢いで育っているので家臣も領民も驚いています。


 一条兼定

 俺のところもそうだよ。ジャガイモが一番早くに収穫出来る。この間、一番育っている奴をサンプルで収穫して食べたんだけど、家臣も領民もスゲー驚いててさ。

 気持ちいいねー、大した努力もせずに、あんなふうに尊敬と驚きの視線を向けられるっていうのはさ。


 竹中重治

 分かります。こちらも伊東さんに頂いたジャガイモが順調です。何だか二年がかりのシイタケ栽培がバカバカしくなってきました。


 北条氏規

 シイタケは育つのが遅いですよね。


 竹中重治

 今川さん、北条さん、今月末から来月で一度ジャガイモの収穫をするので忍者に種イモを持たせます。受け取りよろしくお願いします。


 北条氏規

 おお、それは助かります。ありがとうございます。


 今川氏真

 ジャガイモ、ようやく来たか。待っているよ、竹中さん。


 竹中重治

 最上さん、安東さん、忍者をそちらに紹介する際にジャガイモの種イモを持たせるようにします。

 念のため北条さんのところへ送る忍者に最上さんと安東さんの分のジャガイモの種イモを持たせるので、お手数ですが北条さん、転送をお願い致します。


 北条氏規

 承知しました。こちらこそありがとうございます。


 安東茂季

 竹中さんありがとうっ! それにしてもシイタケは退屈だ。


 最上義光

 竹中さん、ありがとうございます。安東さん、シイタケは高級品だからお金になるよ。楽しみに育てよう。


 伊東義益

 種イモで喜んでいる皆さんに朗報です。サツマイモの種イモも入手しました。結構な数があるので一気に安東さんのところまで拡散できそうです。

 

 小早川繁平

 サツマイモか、楽しみですね。話を聞いていたら焼き芋を食べたくなりました。


 一条兼定

 種イモを食べちゃダメだよ、小早川さん。


 小早川繁平

 食べませんよ、さすがに。


 今川氏真

 焼き芋もいいけどジャガイモの蒸したのとか、肉ジャガを食べたいよ。平成日本の食卓が恋しいっ。


 最上義光

 私、平成日本では、祖父が北海道の出身だったのもあってか、ジャガバターとかよく食べていました。


 竹中重治

 バター、恋しいですね。酪農を広めて牛乳やヨーグルト、バター、チーズなんかも作りたいですよね。

 あ、何だかワインも欲しくなってきた。


 安東茂季

 この戦国時代に平成日本の食卓を再現しようぜっ!


 北条氏規

 肉を食べたいなー。焼き鳥、ステーキ、すき焼き、豚しゃぶ。


 伊東義益

 基本は牛、豚、鶏ですね。南蛮貿易でこれらを大量に手に入れましょう。保存用に燻製くんせい作りも広めたいです。


 一条兼定

 輸出用の焼き物を大量生産出来るようにしないと、売る物が無くなっちゃうな。


 北条氏規

 それなら、漁船も改良して、地引網なども開発しましょう。鮎や鰻といった川魚系は豊かですが、海の幸が今一つ寂しいんですよね。マグロの刺身が食べたい。


 安東茂季

 食糧事情を豊かにして、胃袋外交で周辺の大名を傘下に収めるとかは難しいかな?

 

 今川氏真

 難しいってより、無理じゃね。現実見よーぜ。


 伊東義益

 技術が進んだ国があれば攻め滅ぼして、技術を吸収しようとするでしょう。食糧が豊かならやっぱり攻め滅ぼして、その食糧を自分のものにしようとするでしょう。


 最上義光

 安東さん、シイタケの大量栽培に成功して、シイタケやジャガイモをおすそ分けするから仲良くしよう、って言って、南部がシイタケやジャガイモで仲良くしてくれると思う?

 シイタケとジャガイモがあるのが分かったら、『そいつを全部よこせっ!』ってならないか?


 安東茂季

 そうだね、絶対に『全部よこせっ!』になるな。


 一条兼定

 基本、戦国大名は俺の物は俺の物、お前の物も俺の物でしょ。話し合いの通じない、たちの悪いヤクザくらいに考えないとダメだよ。


 今川氏真

 そもそも、この時代の外交に平和って概念あるのか? 利害と脅ししかないんじゃねーの。


 最上義光

 南部のところに盲目の武将がいるんだ。まあ、国人領主の息子なんだけど、眼疾患で跡継ぎとして不適格ってことで、廃嫡されたらしいんだ。で、実際に会ったんだ……

 あれ、眼疾患でも何でもないよ、多分。

 子どもの頃に目を潰されたんじゃないのかな? いや、眼の傷ついた感じから、そう思っただけで確証はない。無いけど……


 安東茂季

 怖っ!


 北条氏規

 何だか、ありそうな話で嫌ですね。


 一条兼定

 想像や憶測であれこれ言うのもどうかと思うけど……南部って酷いヤツだな。


 最上義光

 一緒に滅ぼしましょう。


 竹中重治

 小早川さん、確か史実では小早川さんも眼疾患の上に身体が弱く、当主が務まらないとして毛利元就から当主の座を追われたはずですが、大丈夫ですか?


 小早川繁平

 竹中さん、脅かさないでくださいよっ。変なフラグが立ったら恨みますよ。

 眼も普通に見えます。身体もそれほど弱くはないと思います。転生したばかりの頃は運動不足だったのかすぐに疲れていましたが、最近は健康的に生活しているせいで体調もいいです。


 北条氏規

 早死にしたのも暗殺の可能性あるかも知れませんから、気を付けてください。


 一条兼定

 いっそ、うちに亡命してこない? どうせ毛利とは事を構えるんだし、このままじゃいつ殺されるか分からないよ。


 今川氏真

 亡命はいいんじゃないの。毛利を攻撃する際に小早川家奪回を大義名分に出来る。


 安東茂季

 早死にって言えば、伊東さんと竹中さんもだよね?


 伊東義益

 そうです。せっかく若い嫁さんをもらったのに早死にはしたくありません。健康に気を使っています。


 竹中重治。

 同じく、平成美少女風の若い嫁さんをもらったので健康に気を使っています。何よりも周囲を清潔にして身体を鍛えています。次のミッションは薬学の発達です。


 北条氏規

 二人とも早死にすればいいと思うよ。私と小早川さんは未だ独身なんですから、言葉を選んでくださいね。


 安東茂季

 北条さんも小早川さんもまだ恵まれているよ。

 俺や最上さん、今川さん、一条さんは転生した時にはもう結婚して奥さんがいたんだよ。もうね、『誰だよ、お前』って感じ。


 最上義光

 いや、安東さん、さすがにそれはない。毎日一緒に過ごすうちに可愛らしく思えてます。嫁さん、十六歳だしねっ。


 今川氏真

 俺も早川殿が可愛くて、可愛くてさ。側室とかいらないわ。


 一条兼定

 俺も別にーって感じだな。今は平成日本風美少女の村娘に絶賛アプローチ中だし。その村娘、竹中さんのところの嫁さんと同じく十四歳なんだよねー


 安東茂季

 あれ? もしかして不幸なのは俺だけ?

 てかさ、皆、この時代の女性が早婚なのを利用していろいろとエスカレートしていない? 趣味とか欲望に走ってない?


 北条氏規

 いいんです。せっかく戦国時代に生まれたんだから楽しまないと。


 竹中重治

 正規の手続きで結婚しました。何の問題もありません。可愛い嫁さんも幸せそうな顔で納得しています。


 伊東義益

 そうそう、私もちゃんとした手続きを経て結婚しました。新婚ほやほやです。いやー、初々しくて可愛いですよ。


『その初々しい奥さんが、史実では側室を殺してその実家が裏切るきっかけを作るんだよな。そこから伊東家の凋落ちうょうらくが始まる。まあ、伊東さんもその辺りは知っていて側室とかいないようだから問題はないか』


 一条兼定

 郷に入っては郷に従えってことわざもあるでしょ。


 安東茂季

 伊東さんと竹中さんは、納得は出来ないが良しとしよう。百歩譲って北条さんも正式に結婚するなら許そう。だが、一条さんはダメでしょ。領主が嫌がる村娘をかどわかすとかこの時代でも犯罪でしょ。


 最上義光

 これが犯罪じゃないんだな。領主が村娘をさらっていくってのは、さすがに道徳的にどうかと思うし、領民からは恨まれ、家臣からは呆れられると思うけど犯罪にはならないんだ。

 領主って特権階級だって、つくづく思うよ。


 安東茂季

 そうなの? よしっ! 兄を殺して俺も領主としての実権を取り戻すぞ。


 竹中重治

 一歩間違ったら死にますよ。


 最上義光

 そうそう、安東さんはまだしばらくは大人しくしてな。


 一条兼定

 ところで、小早川さん亡命の話を再開していいかな?


『そうだ、すっかり忘れていた』


 小早川繁平

 亡命ですか、ありがたいお話しですが今回は見送らせてください。


 一条兼定

 どうして? うちが嫌なら伊東さんのところでも、竹中さんのところでもいいよ。このままじゃ本気で危険だよ。


 小早川繁平

 危険なのは承知しています。今、史実では死亡しているはずの小早川家の家臣、田坂頼賀たさかよりしげを見極める時間と考えています。もし彼が毛利と通じていたら逆に一条さんに迷惑を掛けてしまいます。

 田坂頼賀たさかよりしげが毛利と通じていないと分かるまで待ってください。通じていないと確信が持てたら、一条さん、お世話になります。


 一条兼定

 了解した。待ってるぜ。


『小早川さん、意外と肝が据わっているな。努力家だとは思っていたが、思慮深いし度胸もある。これはもしかしたら、一条さんは最高の人材を手に入れたのかもしれない』


 


 その後、農具や武器の開発についての進捗とこれから先、優先して開発する物についての話し合いが行われた。

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